井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

ロシア語講座にフェドセーエフ登場

2019-12-22 20:35:36 | オーケストラ
3か月目の入門編で、既に知らない単語、覚えねばならない活用のオンパレードなのだが、一応応用編も目耳を通している。
関心の強い芸術家のインタビューを教材にしているからだ。

10~11月は、元バレリーナのウリヤーナ・ロパートキナ。そして12~1月は指揮者のウラジミール・フェドセーエフだ。



正直、じい様である。テキストを見ながら聞いても、全く聞き取れないこともしばしば。

しかし、この講座の(和訳の)おかげで、長年抱いた感覚が解決して、非常にありがたかった。

もう30年以上前だが、フェドセーエフが《春の祭典》の録音を出した。とても評価が高い感じだったので、私もCDを買った。そして、

とてもがっかりした。

なんだ、このパンチの弱いぼやけたハルサイは!

以来、私はフェドセーエフが嫌いになった。

しかし、音楽家として興味はあるから、この講座は楽しみにしていた。

そこでわかったことは、フェドセーエフは当初バヤンというアコーディオンのような音がする民族楽器の奏者として出発したことだ。

なるほど!

そう!
フェドセーエフのサウンドはロシアの民族楽器アンサンブルのような音だ!

そう思って聴くと、全てが氷解する。

パンチを求めること自体が、間違い、に近い。

まあ、私の好みではないけど、それなりの良さを感じ始めたところである。

セミ・プロオーケストラは日本で可能か

2019-07-11 08:01:28 | オーケストラ
モンタナのオーケストラの話を聞いて、日本各地にあるアマチュア・オーケストラはセミ・プロ化に踏み切った方が良いのではないか、と思わずにはいられなかった。

一つには、
①既にアマチュア・オーケストラのレベルはかなり上がっていて、実質その地域の文化の担い手になっているのが現状であること。

そして、
②オーケストラ曲は基本的にプロが演奏するように作られていて、少なくともコンサートマスターはプロの技術を持たないと務まらないこと。

それで
③既にセミ・プロなのに「アマチュア」と自他共に認識しているオーケストラがあること。

日本にはアマチュアでも法人組織になっているオーケストラがいくつかある。

筆者が知っているのは公益財団法人の浜松交響楽団、一般社団法人の岐阜県交響楽団と鹿児島交響楽団。

鹿児島交響楽団の話を聞いたことがある。既に「平日の」依頼演奏が時々あるそうだ。
その時は、いわゆる普通のお仕事をされている方は出演できないから、結局、音楽大学を出たような団員さんだけが小オーケストラを編成して、演奏をする。その方々には演奏料が払われる。

これは立派にプロオーケストラである。

と、アカの他人は平気で「セミプロになればいいのに」と言える。何て勝手なご意見でしょう!

ただ、モンタナの例を聞くと、そのような情熱を持った人物が核にいれば、可能なのだな、と思わずにはいられなかったのである。

写真はモンタナの話を聞く九州・沖縄作曲家協会のメンバー。


USAモンタナのオーケストラ事情

2019-07-09 18:50:00 | オーケストラ
その昔から、USAにはオーケストラのランキングがあって、上はトップとかメジャーとか何とか。下は……と聞いてはいたのだが、下の方の事情を知る機会はなかなかなかった。

ところがバンクーバーに行ったおかげで、USAのモンタナにあるオーケストラの事情を知ることができた。断っておくが、このオーケストラが下の方かどうかはわからない。ただ、上ではないことは確か。

というのも「セミ・プロ」のオーケストラだからだ。

例えば半世紀前だと、九州交響楽団はセミ・プロオーケストラだった。
しかし現在、そのような存在が身近になく、どうもピンとはこない。



写真は、私も参加したミーティングのものだが、その一番奥に座っている人物が、バンクーバー・インターカルチュラル・オーケストラのゲストコンダクターで、モンタナの音楽監督、その方から話を聞けた。

人口10万人のその街でオーケストラを立ち上げ、最初の頃の年間予算が1万ドル。それを20数年で100万ドルにまで成長させたそうだ。

そしてその町で一番大きな企業が、団員5~60名のこのオーケストラだと言う。

と聞くと「大したものだ」と思うが、日本のプロオーケストラの予算は、一番少ないところでも、もう一桁多い額だ。

そこが「セミ・プロ」なのであろう。

さらに聞くと、メンバーは普段は医師や先生をしながら、演奏会の時にミュージシャンになるのだそうだ。

そうか。でも、それは日本のアマ・オケにそっくりだ。

しかし、決定的に違うのは、メンバー全員、演奏料を受けとることである。なるほど。

バンクーバー交響楽団名誉コンサートマスターの引退

2019-06-26 08:13:00 | オーケストラ
バンクーバー滞在中に、たまたまバンクーバー交響楽団の演奏会に行く機会に恵まれた。
今年は創立100周年だそうである。
本拠地ホールOrpheumの壁面には、今年のラインナップの写真が……。



パールマンなどが含まれているところが、やはりアメリカ大陸なのだな、と実感する。

開演前は、舞台上でオーケストラがウォーミングアップするアメリカ方式。ここまでならば、我が国でも日本フィルなどがやっている。
違うのはお客さんが盛んにおしゃべりしていること。



写真ではちょっとわかりにくいが、実はオーケストラのチェロ奏者とお客さんがお話している。これは日本ではご法度である。

プログラムは、シューベルト《ロザムンデ》序曲、現代作品でヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲、そしてR.シュトラウス《ツァラトゥストラ》。

私がわざわざ出かけたのは、名誉コンサートマスターの長井明さんの引退公演だと聞いたからだ。

私が学生時代、読売日本交響楽団でエキストラ奏者の仕事をしていたのだが、その頃ちょうど長井さんが読響のコンサートマスターをされていた。バンクーバーの方を1年お休みしてのお務めだったそうだ。

そして一昨年、私が初めてバンクーバーで演奏した時も、聴きに来てくださった。

なので、一も二もなく駆けつけた次第である。

休憩後、長井さんの引退セレモニーがあった。その日は第1ヴァイオリンパートの、日本式表現では5プルト裏で弾かれていたが、指揮者に紹介され、短いスピーチがあった。



その後は花束贈呈でスタンディングオーベーション、会場がとても暖かい雰囲気に包まれた時間であった。

とにかく40数年、異国の地で弾き続けたのだから頭が下がる。私より20年も先輩なのだが、そうは見えない若々しさをお持ちだ。その姿に接すると、私もまだまだ頑張らなければ、と思うのである。

終演後、バンクーバー在住の日本人Sさんに案内されて舞台袖に伺った。

エルガー:威風堂々第1番

2019-02-13 23:52:00 | オーケストラ
NHKFMの「気楽にクラシック」で威風堂々の第2~4番を取りあげていたのだが、予想より多くの方が1番以外を支持していて、正直驚いた。

それでも、一番の名曲は第1番だと司会者も一言触れていた。

それはそうでしょう、当然、と思うけど、一応「なぜ当然か」筆者の見解を整理してみよう。

まず冒頭のトランペットがキャッチー。
オクターブのユニゾンはベルリオーズのハンガリー行進曲等、前例はいろいろあるが、大抵「属音」(ハ長調ならばソ音)。
ところが、この第1番は主音の半音上!(属音の三全音上下、か?)

ニ長調の曲なのに変ホ長調のように始まり、すぐト短調、変ロ長調と転調を繰り返して行き場がなくなったら半音階で、半ば強引にニ長調の主題に滑りこむ。

しかも、アウフタクトがタイで1拍目と結ばれた音型がずっと続くものだから、どこが1拍目だかわからない。

調子も拍子も、聴き手をだます仕掛けに満ちあふれたイントロダクション。

そう、まだ序奏なのに、この複雑さ。

続く主題のジグザグぶりがまたすごい。和声的には、主和音基調であまり動かないのに、ヴァイオリンで奏でられる旋律はかなり非弦楽器的。かといって金管にも向かない。かなり野趣あふれる弦楽器特有のザクザク感(結局弦楽器的か?)。

それが終わって、いわゆるヴァイオリン的な動きがあったかと思いきや、今度は半音階の上で何調だかわからない世界に突入。

行進曲で、このように調子がわからない、拍がわからないなどという曲は、多分それまでなかっただろう。

とにかく独創的なのである。

このような独創性は2番以降には見られない。

ついでに題名の邦訳も独創的とは、昔から語られている。よくぞ威風堂々と訳した。

オーケストレーションも威風堂々たるもの。
大体は少し省略して演奏するが、楽譜の指定によればハープにオルガン、打楽器には8人必要となる。

なので、音楽鑑賞教室のオーケストラには、たまに「残念な声」が届くそうだ。曰く「ビデオと違う!」

8人の打楽器奏者は、単に四分音符をシャンシャン、じゃんじゃん、ドンドンと刻んでいるだけなのだが、8人の奏者が一斉に立ちあがり、鈴やタンブリンを振りかざして、とくれば、否が応でも盛り上がる。それにオルガンがジャーッと鳴れば宗教儀式のようなトランスが生じる。

熱心な学校は、そのような録画を見せる予習をしてから、本番を鑑賞するそうだ。
オーケストラ側からすれば「そこを期待されてもなあ」なのだが……。

まあ、そこを取りあげても、ユニークであることは確かだ。

繰り返すが、以上の特徴は第2番以降には無い。
なので、断然他を圧しての名曲と考える次第である。