井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

《ウェストサイド物語》のプロローグ

2019-07-29 20:14:00 | 音楽
年に1コマのミュージカル講義で取りあげるのは、

《マイ・フェア・レディ》から〈スペインの雨〉~〈踊り明かそう〉

《サウンド・オブ・ミュージック》から〈ドレミの歌〉
誰でも知っている歌だが、正確に知っている人は少ない。日本の歌だと思っていた学生も結構いる。

そして《ウェストサイド物語》の〈プロローグ〉(序曲とも言う)

このプロローグには、音楽だけでも実に様々な要素が入っている。

全曲を支配する核音【G】【C】【Fis】の提示、20世紀和声とも言うべき「9の和音ninth chord」の多用、違う調の和音を同時に鳴らす「dur-mollの和音」、ポリコード、パート毎に拍子が違うポリリズム、これらをドラムセットやラテン打楽器を鳴らしながらやるのだから、【ザ・20世紀音楽】とでもいうような傑作なのである。

それをそれと気づかせずにやるところが素晴らしい。
その多様な要素に最初から気づく必要はなく、単に「すごい」と感じてもらえば良い。

と思いながら、学生さんに映画を見せる。「どうだ、すごいだろう」と思いながら……。

案の定、その通りの反応があって、私も大満足、だったのだが、ある感想で目が覚めた。

「ミュージカルなのに歌がないので驚きました」

あちゃー!

そうだ、冒頭しか見せないと「歌がない」というウタがいない事実を突きつけられてしまった。

次回からどうするか、また考えよう……。

私の好きなミュージカルは

2019-07-21 09:04:00 | 音楽
某大学で、年に1コマだけ「ミュージカル」の講義をしている。正直言って、ミュージカルの専門家ではないのだが、音楽面から見たミュージカルということで、レクチャーしている次第。

その視点で見てしまうからかもしれないが、私が音楽として絶賛できるミュージカルは3つしかない。

《マイ・フェア・レディ》
《サウンド・オブ・ミュージック》
《ウェストサイド物語》

これに、好きなミュージカルとして《屋根の上のバイオリン弾き》が加わる。
これらの作品は、私の価値観ではドニゼッティやベルリーニのオペラの遥か上をいく。

で、90分の講義では上記3作品のごく一部を紹介しかできないが、それでも《ライオンキング》や《レ・ミゼラブル》しか知らない若者に一矢報いる効果はあるだろう。

そして3作品とも映画化されているのがありがたい。

さらに、サウンド・オブ・ミュージックのジュリー・アンドリュース以外は吹き替え歌手が歌っている。
個人的にはアンドリュースのマイ・フェア・レディも観てみたい(オリジナルキャストはアンドリュースなので)が、映画ではよくぞヘップバーンを起用したと思う。

この映画を学生に見せると確実に何人かは「オードリー・ヘップバーンがかわいい」「きれい」と感想を寄せる。
これだけ繰り返し鑑賞するのだから、役者も最高であってほしいと思うけど、本当にオードリー・ヘップバーンは永遠のスターだと言わずにはいられない。時代を超えて魅了するとは、実に凄い。

がお手伝いします

2019-07-18 20:12:00 | 旅行記
北京首都空港という所を初めて利用した。

トランジットのみの利用なのに、目的の場所にたどり着くまで2時間もかかった。

最近、日本の空港も様々な所で最新設備が導入され、指紋を撮ったりスタンプが廃止されたりと、自分が何をしているのかわからないことしばしば。
ましてや、外国においては当然……。

かもしれないが、この表示の分かりにくさには辟易した。
さらに、空港のスタッフに尋ねると、言うことが微妙に違う。
後でわかるのだが、どこかのステップが省略された説明だったり、逆に第1段階のみの説明だったりするから、こちらは混乱するしかない。

それを解決してくれそうな兄ちゃん姉ちゃんが、青いTシャツを着てあちこちに立っている。

背中に「我幇ニン」(だったかな?)
「I help you」
とか何とか10カ国語くらいで書いてある。
その中の日本語が

「がお手伝いします」(がお助けします、だったかもしれない)

主語がない、変な日本語が書いてあった。
そして、助けてくれるかと思いきや、例によって、よくわからない説明なのである。

パッと横を見ると「一帯一路」と書いたゲートがあり、がら空きであった。

なるほどね。あの政策に従うと、こういうところで差がつくってことか。

で、こちらは自分自身が何をしているのかわからない状態で、ようやくゲートをくぐり抜け、どっと疲れてトランジット完了。

北京をあとにして、ちょっと考えた。

あの変な日本語は、最下段に書いてあった。韓国語よりもアラビア語よりも下である。
アルファベット順などという気のきいたものではない。上からシナ語、英語、フランス語だったから。

つまりシナ政府が重視している順、なのだろう。一帯一路政策の軍門に下ったイタリア語が真ん中辺りにあったから。

それを考えたら結構気分が悪くなった。日本中に普及したシナ語表記を、全部消してトルコ語にでもしたら面白かろう。

セミ・プロオーケストラは日本で可能か

2019-07-11 08:01:28 | オーケストラ
モンタナのオーケストラの話を聞いて、日本各地にあるアマチュア・オーケストラはセミ・プロ化に踏み切った方が良いのではないか、と思わずにはいられなかった。

一つには、
①既にアマチュア・オーケストラのレベルはかなり上がっていて、実質その地域の文化の担い手になっているのが現状であること。

そして、
②オーケストラ曲は基本的にプロが演奏するように作られていて、少なくともコンサートマスターはプロの技術を持たないと務まらないこと。

それで
③既にセミ・プロなのに「アマチュア」と自他共に認識しているオーケストラがあること。

日本にはアマチュアでも法人組織になっているオーケストラがいくつかある。

筆者が知っているのは公益財団法人の浜松交響楽団、一般社団法人の岐阜県交響楽団と鹿児島交響楽団。

鹿児島交響楽団の話を聞いたことがある。既に「平日の」依頼演奏が時々あるそうだ。
その時は、いわゆる普通のお仕事をされている方は出演できないから、結局、音楽大学を出たような団員さんだけが小オーケストラを編成して、演奏をする。その方々には演奏料が払われる。

これは立派にプロオーケストラである。

と、アカの他人は平気で「セミプロになればいいのに」と言える。何て勝手なご意見でしょう!

ただ、モンタナの例を聞くと、そのような情熱を持った人物が核にいれば、可能なのだな、と思わずにはいられなかったのである。

写真はモンタナの話を聞く九州・沖縄作曲家協会のメンバー。


USAモンタナのオーケストラ事情

2019-07-09 18:50:00 | オーケストラ
その昔から、USAにはオーケストラのランキングがあって、上はトップとかメジャーとか何とか。下は……と聞いてはいたのだが、下の方の事情を知る機会はなかなかなかった。

ところがバンクーバーに行ったおかげで、USAのモンタナにあるオーケストラの事情を知ることができた。断っておくが、このオーケストラが下の方かどうかはわからない。ただ、上ではないことは確か。

というのも「セミ・プロ」のオーケストラだからだ。

例えば半世紀前だと、九州交響楽団はセミ・プロオーケストラだった。
しかし現在、そのような存在が身近になく、どうもピンとはこない。



写真は、私も参加したミーティングのものだが、その一番奥に座っている人物が、バンクーバー・インターカルチュラル・オーケストラのゲストコンダクターで、モンタナの音楽監督、その方から話を聞けた。

人口10万人のその街でオーケストラを立ち上げ、最初の頃の年間予算が1万ドル。それを20数年で100万ドルにまで成長させたそうだ。

そしてその町で一番大きな企業が、団員5~60名のこのオーケストラだと言う。

と聞くと「大したものだ」と思うが、日本のプロオーケストラの予算は、一番少ないところでも、もう一桁多い額だ。

そこが「セミ・プロ」なのであろう。

さらに聞くと、メンバーは普段は医師や先生をしながら、演奏会の時にミュージシャンになるのだそうだ。

そうか。でも、それは日本のアマ・オケにそっくりだ。

しかし、決定的に違うのは、メンバー全員、演奏料を受けとることである。なるほど。