井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

東アジアにおける現代音楽事情

2010-10-30 23:28:54 | アート・文化

第5回東アジア国際現代音楽祭が大分で開催され、今日から明日まで開かれる。

その一環で国際シンポジウム「東アジアにおける現代音楽事情とその展望」が開かれ、聞きに行った。

日本、韓国、中国のパネラーによるもの、このご時勢で中国の皆さんは入国するのが大変だったそうだが、何とか開催にこぎ着けたのはご同慶の至りである。

限られた時間で「その展望」にまでは話が至らなかったのだが、興味深い各国の事情はある程度うかがえた。

ただただ羨ましかったのは韓国である。韓国では21世紀は文化の世紀と位置付け、文化振興を国をあげて行っているらしい。なんでもメンバーが4人以上いれば団体として登録することができ、様々な助成を受ける仕組みがあるとのこと。

他の日本人作曲家が韓国を訪れた時、韓国人作曲家が皆げっそりしているので、どうしてだろうと思ったら、皆さんオペラの新作を抱えていたとのことだったとか。

シンポジウムでもテグ市では年に十回くらい現代音楽祭が開かれているというし、オペラもそのように新作初演が日常的に行われているということになる。

一方、中国は資本主義ではないので、必要なお金に困ることはないようだ。

韓国も中国も「一番じゃなきゃダメです」というのが当たり前。この状況で、隣国とお付き合いするのは実に大変。一日も早くわが国の状況が好転することを。


スケーターの音楽センス

2010-10-27 21:18:21 | スポーツ

こんこん様
大変興味深いコメントをありがとうございました。
「曲を聴いたときに思わず体が動くほど気にいった」というのは重要ですね。誰でも、そのような曲で演技すべきだと思うのです。本人が決めたということは、やはりスケーター自身のセンスも問われるのだということが、はっきりしました。

たったこれだけ書いて、約70件のアクセスがあったので、やはりスケート愛好者は裾野が広いですね。
せっかく訪れて下さった方のために少し補則してきます。最初はコメントとして書き始めましたが、段々長くなってきたので、記事の方に変更しました。(あくまで音楽屋さんの立場でものを言いますが、感動を追究するという意味では、フィギュア・スケートとの共通点は結構あって、このような話題は面白いかもしれません。)

感動の正体は感情刺激の積み重ねだと思います。積み重ねは波状に刺激がくることで積み重なり、そのタイミングと量で感動の深さが決まると思います。

フィギュア・スケートの場合、例えばジャンプが決まれば一つ感動を呼び起こす訳ですね。つまり観ている側がジャンプの前に徐々に期待を募らせ、跳んで着氷する瞬間が刺激のピーク、それから次の滑りに無事つながっていくと高揚感が鎮静に向かうというプロセスだと思います。この繰り返しで感動が大きくなっていくことになります。

このような高揚感と鎮静の繰り返し、クラシック音楽にもとても多く現れます。ユヅル君の使った「ツィゴイネルワイゼン」もその一つ。だとするとピッタリ、かと思いきや、大抵はミスマッチになります。それは、音楽の高揚する場所とスケートの見せ場を一致させることがまずできないからです。今回も案の定、音楽が休符に入った(つまり無音状態の)瞬間にジャンプが入ったりして、全くチグハグでした。

では、スケートの高揚感や鎮静度に合わせてオリジナルの音楽を作ればピッタリか、というと、そうでもないのです。劇の伴奏音楽や映画音楽の世界でミッキーマウス何とか、という名前がついているそうですが、実は一歩間違うと滑稽なものになる危険性があります。トムとジェリーを思い出してもらえばわかると思いますが、あのようにピッタリというのは「笑い」を誘う可能性大です。

笑いも感動の一種、スケートで笑わすことができたら、それはそれですごいかもしれませんが、少なくともユヅル君はお笑いを目指しているとは思えないので、とりあえず敬遠しましょう。

じゃあ、何が良いのか。

高橋選手のピアソラはタンゴの親戚(これがタンゴかどうかは何十年も論争が続いた歴史があるので、ここでは深く追求しないでください)、マオー選手が昔選んだ「仮面舞踏会」はワルツ形式のバレエ音楽、というようにいずれもダンス曲でした。ダンス曲は元々躍動感を含んでいるものなので、一番問題が起きにくいでしょう。その線でいくと、本ブログでなぜか人気の「エスタンシア」(ヒナステラ作曲)などは良いかもしれません。

でも、高橋選手がオリンピックで使用した「道」(ジェルソミーナ)はダンスとは言い難いです。しかし大成功でした。なぜでしょうか。

どんな音楽でも、高揚に向かっていく箇所と鎮静に向かっていく箇所があります。これを感じ分けることさえできれば、問題はほぼ生じないと言えるでしょう。

スケートのジャンプの前、滑りとしては単純になりますが、いわゆるジャンプのための準備をしている箇所になります。ここでは絶対、高揚していく音楽でなければなりません。観客は無意識に音楽を聴いています。音楽で徐々に観客の心が高揚していって「ジャンプ」、これは確実に感動します。選手が美しく見えます。

逆に鎮静方向に向かう音楽の中でジャンプしたら・・・スケートとしての評価に変りはありませんが、観客の心をつかむ度合いがかなり減り、美しいと感じる人も減る、ということになるでしょう。選手としても自らを鼓舞するのに、余計なエネルギーを使うことになっているはず。このケース、実は結構多いのです・・・。

高揚か鎮静か、このほんのわずかな曲調の変化に気を配るだけで、ずっとメダルが近づく、私はそう信じています。日本のスケーター達が、早く音楽に敏感になりますように・・・。


祝!NHK杯金メダル

2010-10-25 19:40:30 | スポーツ

バンクーバー・オリンピックと同じことを書くのは気がひけるけれど、相変わらず変っていない事態に、やや物申したい気分なので・・・。

高橋大輔選手の演技は、相変わらず感動的だった。ジャンプを失敗しても素敵だった。ここが重要な点である。その要因に音楽との一体感を挙げたい。

バンクーバーでもそうだったけれど、高橋選手の選曲が良いのだ。それが高橋選手のセンスなのか、ブレーンのセンスなのかは存じ上げないのだが、とにかく良い。聴いて心地よいところに美しい演技なのだから、感動するのである。

一方ユヅルくん、弦を結ぶなどという名前だから、弦楽器奏者にとっては気になって仕方がない存在だ。それで、という訳ではないだろうが、選ばれた曲は「ツィゴイネルワイゼン」。ここで音楽屋さんとしては「アウト」である。ヴァイオリンが名人芸を見せるタイミングとスケートのジャンプ等のタイミングが合う訳がないので、どうやってもチグハグになる。

世界のフィギュア・スケートが「美しいものへ」と、時流が方向転換しているのに、相変わらずジャンプがどうこう言っているテレビ局も問題を感じる。このままだと高橋選手の後を継ぐことはかなり難しいのではないか。

私は日本人の「美しい」スケートを観たいのである。美しいスケートには美しい音楽が不可欠だ、という認識をユヅル君のチームには一日も早く持ってもらいたいものだ。がんばれ、日本!


アンサンブル井財野

2010-10-21 22:16:09 | 音楽

月に一回弱、鹿児島に赴いて、指導・演奏しているアンサンブルがあります。先日まで名無しだったのですが、練習会場を借りる際、どうしても名前をつける必要があり、担当者が即興で思いついた名前が「アンサンブル井財野」。という訳で、こんな名前のアマチュア弦楽合奏団が鹿児島にできてしまいました。

と申しましても、人数がようやく十名いるかいないか、年代も小学生から40代くらいまでと幅広い上に、毎回誰かが欠席するので、チェロが全くいないとか、セカンド・ヴァイオリンが一人だったなどということもありました。

このブログは鹿児島の方があまりご覧になっていないので、どの程度宣伝できるかわかりませんが、ご興味のある方、ぜひご連絡ください。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、いずれも歓迎です。ただし、練習場所が鹿児島市内か加治木あたりなので、メキシコやフィンランドからの参加は無理かもしれません。

お問い合わせは是枝(これえだ)まで。(メールアドレスが間違っていました。ごめんなさい。訂正しました。)


古典交響曲とサッカー小僧

2010-10-19 00:21:45 | オーケストラ

4年ぶりに、プロコフィエフの古典交響曲を演奏する機会があった。

この曲について語り始めたら止まらないほど好きなのだが、もう一つ、切っても切れない関係にある映画があって、それとの結びつきも私にとっては重要。

それが「サッカー小僧」なのだが、どういう訳だか私の周りの人間は誰もそれを知らない。実は私もストーリーを忘れてしまった・・・。

調べると、6才のサッカー小僧が大人顔負けのプレーをして、ついにはスウェーデンチームに混じってワールドカップに出てしまう、という内容だそうだ。(それでも思い出さないから、完全に忘れている・・・)

ワールドカップでも大活躍で、サインを求められる大スター。ところが学校に行っていないからサインができない! という訳で、学校に戻って普通の生活をおくる云々、のようだ。

インターネットは便利、たちどころにここまでは調べがつく。音楽はセルゲイ・プロコフィエフ、なんて書いてあった。ここで「古典交響曲による」とか何とか書いてあれば立派な解説と言えるのだが、残念ながらそこまでは言及されていない。

これ、本当に映画にフィットしていたのですよ。サッカー関連で得意満面のところは3楽章、試合は4楽章、学校に戻ると2楽章。特にエンド・タイトルは2楽章で、普通の少年が学校の授業は眠いなぁ、と思っている表情とぴったり。1楽章は出てこなかったと思う。

監督が「短くも美しく燃え」(モーツァルトのピアノ協奏曲第21番を使用)と同じ人(ボー・ウィデルベルイ)で、クラシック音楽の使い方のセンスは抜群に冴えている。(例えばソナタ形式の第1楽章は映画には不向きだから使われていない。)

当時のサッカー少年は結構観に行ったと聞いている。なのに、なぜ皆さん知らないの?当時「週刊FM」という雑誌で紹介されたから、サッカー少年ではなかった中学生の私も、「古典」が使われているということでわざわざ観に行ったのだ。別にガラガラの入りだった印象はないんだけどな・・・。

当時ワールドカップを知っている日本人はほとんどいなかったし、Jリーグも無かったから、あっという間に忘れ去られたのかもしれない。かくいう私も筋を忘れている訳だし。でも、それはもったいない。かなりかわいいスウェーデン少年のようですよ・・・。

機会があったら観てみてください。

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