井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

ちゃんと教えるとは?

2012-08-31 23:40:16 | ヴァイオリン

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の第1主題、オーケストラに受け渡す直前に、減7の和音をオクターヴでかけあがるところがある。

そこはオーケストラが休みのところだ。この曲に限らず、オーケストラが休みのところはソロが比較的自由なテンポ設定ができるのだが、ここではそれをやってほしくない。オーケストラが今か今かと待ち構えるところで、その受け渡す流れをソロに作ってほしいところだからだ。気持ちよくインテンポで渡してほしいものである。

名手の演奏もほぼ例外なく、インテンポで受け渡していると思う(全部確かめた訳ではないが)。

ところが、あまり上手でない子供たちの演奏には、そこをインテンポとせず、妙に時間をかけて弾く、というものが結構ある。昔からあった。

「それはないだろう」、と思う。たまたまそれを別のヴァイオリニストと聴いたことがあったのだが、その人も同意見で、やれやれと胸をなでおろした次第。

お互いに、同じようなことを言い合った後で、「何だか、ちゃんと教えていない人が多いよね。」とそのヴァイオリニストはのたまわった。

「そうだねぇ」と、一応同意したものの、やや不安になった私。ちゃんと教えるって何を?

同じような状況で、時々耳にする言葉、「基礎ができていない」というのもある。さて、基礎とは?

かくいう私が、ひょっとしたら「ちゃんと教えていない」可能性もあるのだ。

いろいろとできていないことが見つかると、どうしても技術的なところから正す習慣がある。技術不足で、まともな表現ができていないかも、と思うからだ。

そこに時間をかけていると、音楽表現的な視点のアドバイスは何もなく、いつの間にか「ちゃんと教えていない先生」へ仲間入りしてしまうことも、無いとはいえない。

「ちゃんと教える」とは想像以上にかくも難しいのである。そのヴァイオリニストも、ちゃんと教えているという自信はあるのだろうか、と思わずにはいられない。

いみじくも、そのヴァイオリニストは言っていた。「自分で考えられるようにしなくてはね。」

そう、先生はちゃんと教えてくれないかもしれないから。これで、一応留飲が下がるのだが、その次には、こんな気持ちが待っている。「自分でちゃんと考えることが、子供にできるだろうか?」

嗚呼、どうどうめぐり!




変拍子の練習と京浜東北線

2012-08-18 23:19:54 | 指揮

指揮を勉強している方(ほとんどは学校の先生)から「変拍子が振れるようになりたい」けれど、どうすれば良いか、というお尋ねが時々ある。

「そんなもの、練習すれば良いだけのことでしょう」と言いたいが、多分どう練習しても、できた実感がないのだろうな、と想像する。

「三度のメシよりも変拍子が好き」と述べられたのは、作曲家の矢代秋雄。そこまでではないにせよ、私も結構好きな方で、特に「ペトルーシュカ」「春の祭典」は高校生時代ステレオに合わせて棒を振りまくって遊んだ覚えがある。この変拍子に合わせて体を動かす快感は、鰻の蒲焼に匹敵する。なので、三度のメシより、ということはないが、それに近いところまでは感じる。

なので、鰻が嫌いな人がいるのと同様、変拍子が嫌いな人もいるだろう。お気の毒に。

では済まされないから、前述のような問い合わせがある訳で、鰻が嫌いな人にも食べさせるにはどうしたものか、を考えなければならない。

まず、意外と食わず嫌いかもしれないから、「ハルサイ」を食わせてみるのが一つの手。ストラヴィンスキーのスコアを片手に拍子をとってみる、ここで面白さを感じたらめでたしめでたし。コープランドの「エル・サロン・メヒコ」も良いですよ。

しかし、これで解決する人は少数派だろう。困っている人は2拍子と3拍子が交替するだけで面食らうのだと想像する。

ここで思い出すのは、大学に入りたての頃、「京浜東北線の駅名を使う変拍子の練習」がはやっていたこと。私はすでにペトルーシュカで練習していた後だったので、その程度では・・・と思っていたけれど、前述の皆さんにはちょうどいいのかもしれない。

それは、

おおみや・よの・きたうらわ・うらわ・みなみうらわ

というもの。山手線ではダメなのだ。「しながわ・おおさき・ごたんだ・・・」

余談だが、山手線で練習する新世界のヴィオラ・パートというのもある。

3楽章の最後が6連・5連・4連・3連の音符になっているので、それを「たかたのばば・いけぶくろ・おおつか・すがも」と唱えるというもの。しかしこれはあまり役に立たない。

問題は、関東地方の人間以外には馴染みがなくて、ちょっと親しみにくいこと。それに、いつの間にか「さいたま新都心」とかいう駅ができていて、調子が狂ってしまった。ならばその土地土地で探そうではないか。

という訳で、我が家の近辺で鹿児島本線バージョンができた。

やはた・くろさき・じんのはる・おりお・みずまき・おんががわ・えびつ・きょういくだいまえ・あかま・とうごう・ひがしふくま・ふくま

最初、3・4・5を二回繰り返すあたり、実に音楽的なプロポーションが良く、しかも毎回拍数が違う。これは次の指揮法講座で使ってみよう。

調子に乗って・・・

これには突然1拍子が出てくる、というのが無い。一文字の駅名と言えば、三重県の「津」だ。

では紀勢本線でいけるか?

かめやま・しもじょう・いっしんだ・つ・あこぎ・・・

これは、あまりうまくいかない。知らない土地には手を出すなということか?

変拍子が不得意な方、こうやって様々な駅名をあてはめているうちに、いつの間にか変拍子的感覚が身につくのでは、と思うのだが、いかが? (鉄ちゃん発想でしょうか?)