日本の新聞には必ずスポーツ欄がある。スポーツ新聞もある。 ウィーンの新聞には音楽欄がある。音楽新聞もある。さすがは音楽の都!
日本の新聞で音楽が一面を占めることは滅多にないが、昨日、毎日新聞では二面も使って、学生音楽コンクール全国大会の様子を報じていた。音楽が大きく扱われることはなかなかない。その意味で、大歓迎である。
ヴァイオリン部門の小中学生は審査員のH先生から全員絶賛だった。多分その通りなのだろう。審査員の点数表を見ると、H先生の生徒さんもかなり含まれていることがわかる。なかなかコメントが難しかったことだろう。
ここでH先生の「コンクール必勝法」を思い出した。 要点は以下の通り。
・速く正確に弾く。
・勝ち進むにつれ、うまくなっていく。
あまりにも身もふたもない表現で、ロンティボーの審査委員長がこんなこと言っていいの、という気もしたが、その心配をよそに、この発言は、あっという間に関係者に伝わった。
言われるまで気付かなかったことではある。でも確かにその通りであることがわかる。
で、これが実現できないのは、やはり速く弾くのは難しいからだろう。具体的には指の力だ。子供の手はフニャフニャしているから、重音でかなり苦労することがある。これが高校生だと何の苦もないことがしばしば。
というのは私の体験であって、この新聞に載る人達には当て嵌まらないのだろう。(正直言って、力がなくても弾けるのか、力がとても強く鍛えられて弾けるのかわからない。)
私の気にかかるのは、この記事を読んで悲観してしまう人々である。これが全てだと誤解してしまう人達である。
多分、現在ソリストは余っている。そこで社会的に動くべき方向は、聴衆を増やすこと。SMAP並に動員できれば問題は起きない。
個人的に目を向けるべきは室内楽とオーケストラ。どちらもソリスト級の腕が必要だ。だからと言って、子供の時から入賞くらいしなければ、などということは全くない。(そう言えばH先生御自身、日本を代表する室内楽奏者だ。)
室内楽は日本人の資質にとても合っていると思うのだが、現在優秀な室内楽奏者は不足気味。私としては、一人でも多くの室内楽奏者が誕生することを願っている。
そのような次第で、今、思うように伸びなくても、新聞に載らなくても、諦めないで続けて下さい、と申し上げたい。