井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

みんなでヴィエニアフスキ

2016-06-24 18:49:00 | ヴァイオリン

左指を鍛える方法の王道は、やはり音階とアルペジオ、重音練習ということになるだろう。

私などは高校生の時にシェフチークの作品1-1、その23番から26番をやらされたのだが、目に見えて左指が強くなる実感を持った。なので、私が指導する場合は全員にこれを課している。

面白いように弾けるようになった経験を持つ故なのだが、どうもそうならない人が多い。

いつまでもフニャフニャした指のまま、ちっともしっかりしないので、昨年意を決して「みんなでやる基礎練習」を大学で始めてみた。みんなでワイワイやれば、単調な基礎訓練も多少はがんばれるのでは、とおもったからだ。運動部がみんなでランニングするようなイメージだ。

「みんな」と言っても学生は3人。そこに私が加わるのがミソである。私の練習時間にもなるので、私にも有益な時間になる。

それならば、ということで、まずドゥニスDounisのエチュードop.12をやってみた。

初めて見た奇天烈な譜面に目をグルグルさせていたが、刺激にはなったかな……。

しかし、完成度は低く、達成感が弱いのはやはり意気が上がらない。

それで、7,8年前に復刊した、シェフチーク編纂のエチュードを引っ張り出すことにした。

以前このブログでも採り上げたことのあるもので「これ1冊練習すれば協奏曲が弾けます」シリーズである。

このエチュード、3,4冊買ったのだが、使ってみると数々の難点があり、このまま生徒さんに薦められるものではないことを悟り、しばらくお蔵入りさせていたものだ。

難点の一つは、フィンガリングが「古い」のである。指使いにも進歩というものがあり、現在ではこう弾く人は少ない、というものが記載されている。

そのあたりを修正しながら進めれば、逆に面白いエチュードだ。何せ、全く弾けないと思っていたパッセージが、練習後には弾けてしまうのだから。

この「ご褒美」効果は大きく、春休み返上?でがんばった人達は、着実に指の力が強くなっていた。

現在は「みんなでチャイコフスキー」に取り組んでいる。

こちらは、事前の準備がさらに大変。いっそのこと井財野版を出版しようか、と考えなくもない今日この頃である。


指の関節を鍛える

2016-06-18 11:01:00 | ヴァイオリン

指の関節は手のひら側から第一、第二と数えるのが正式だと聞いていた。

この際、調べてみたらそれは俗称なので両方の数え方があり、混乱を避ける為に医学的には手のひらに近い方が「近位指節間関節」、指先側が「遠位指節間関節」と言うとのこと。

しかしワープロでは「関節」以外、全く変換してくれなかった文字の羅列、医学界もお困り(?)なのか、専ら英語の略記「PIP関節」(近位)、「DIP関節」(遠位)と呼ぶことが多いようだ。

それで本題であるが、ヴァイオリンを弾く時、左手をちょっと広げるとPIP関節がまっすぐになって力が入らない人が多い。(これを指して「まむし指」という、と中学生の頃、クラスメメイトが言っていたので、ずっとそうだと思っていたが、これが間違いだったのが今わかった。まむし指とは別の状態である。)

例えば10度の音程をとる時、PIP関節がまっすぐになってしまうのは、子供の場合は当たり前だろう。

しかし、そのままでは指に力が伝わらない。それを徐々に鍛えて、PIP関節を曲げないで弾ける状態にする必要があると思う。

それで、スケール、アルペジオ、シェフチークの重音練習を生徒・学生さん達にやってもらい、それを通して指を鍛えることができるだろう、と思っていたのだが…。

彼らの指がいっこうに強くならないのである。注視したら、ほぼ全員PIP関節がまっすぐのまま。

この指では、結局まともな音はしない。

それで、最近は「左指を鍛える」ことをメンデルスゾーンを弾くよりも優先的に考えるようになった。

どうやって、はまた次の記事で。


メンデルスゾーンは易しく難しい

2016-06-14 23:49:28 | ヴァイオリン
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、技術的にはとても弾きやすい。
これは近年、この曲の初版?が発表されてはっきりした。

この弾きやすさは、メンデルスゾーンの畏友フェルディナント・ダーフィトの助言と、それを素直に受け入れたメンデルスゾーンのおかげだと思う。
ダーフィトはライプツィヒ・ゲバントハウスのコンサートマスターだが作曲家でもあり、そのトロンボーン協奏曲はトロンボーン吹き全員が必ず吹く曲。井財野の目標の一人でもある(この辺りは以前も書いた。)

この協力関係が無ければ、この協奏曲の地位は多分サンサーンス並みになるだろう。
(ヴァイオリン弾きにとっては大差ないのだが、一般的な知名度は激しく違う。ごめんなさい、サンサーンス先生。)
とにかく、二人のコラボレーションに感謝感謝である。

一方、音楽的には、結構学習要素が多い。

◆古典的なバール形式が含まれるが、ロマン派の歌い方が必要。

◆つまりフレーズが連結している。その切れ目を意識してつなげる演奏法が必要ということ。

◆テーマの3小節目はIVの和音でサブドミナント。ここに変わる瞬間、サブドミナントの拡大感を感じて表現する必要がある。

◆フレーズ毎に歌ったり語ったりの交代が連続する。

◆冒頭のモチーフが何回か登場するが、性格の描き分けが必要。

最初の1ページでざっとこれだけ学習がいる。そして、それらをあくまでもさりげなく演奏しなければならない。
(文章にすると実際以上に難しく見えるが)

これを体に染み込ませるのは大変有益だから、難しかろうがとにかくやるべきと信じて、20年くらい指導にあたってきた。

しかし、近年、それはもう少しあとでも良いかも、と思い始めてきた(続く…)。

ナバラと山口

2016-06-07 20:58:00 | テレビ番組
世界とつながる山口には、まだ続きがある。

スペインのナバラ州、そこで一番有名な日本の地名は、なんと山口!

町中には鉄板焼のレストラン山口、ホテル山口、日本庭園の山口公園、そしてヤマグチ図書館まである!

なぜならば、かの有名な宣教師、フランシスコ・ザビエルが一番愛した土地が山口で、ナバラはザビエルの出身地なのである。

サビエルとも言う。

正直言って、私はこの人が好きではない。もちろん会った訳ではないけれど。
なぜかというと、この人と共に鉄砲も伝来している訳で、どうしてもきな臭さがつきまとうからだ。

一方、日本に残る足跡は大したものだ。ザビエル、サビエルの名を冠する教会が鹿児島、平戸、山口にあり、山口の山陽小野田市にはサビエル高等学校というのもある。

そして、鹿児島の人間も平戸の人も自分たちの地が南蛮文化の玄関だったつもりでいるから、山口にもサビエル教会があるのを見て一様に驚く(と思う)。

さらにナバラでは山口が一番有名などと聞くと、鹿児島県民はショックかもしれない。

明治維新を成し遂げた薩長土肥。と言うけれど、薩摩は世界に何を貢献しているだろうか。

そして「世界につながる~」というキャッチフレーズ。例えば「世界につながる熊本」という番組があったら、熊本の視聴率は50%超えるかもしれない。
もう番組名だけで嬉しくなってしまう県民が半数を超えるだろうから。

しかし如何せん、材料に事欠くような気がする。材料があれば、とっくにやっているだろう。
鹿児島・熊本だけではない。他の県も同様だ。(それとも取材力の差だろうか?)

このような番組が成立すること自体、九州人は憧憬のまなざしで見ざるを得ないのではなかろうか。

「日本の中心は山口県」という説があるけれど、だてに首相を生んでいる訳ではないことを実感したのであった。