井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

イタリア音からドイツ音へ

2016-09-29 07:41:00 | ヴァイオリン

「私も音が勝手に減衰する楽器をやってみたかった」とあるヴァイオリン弾きが言っていたそうだ。
これは、(うがった見方かもしれないが) その人が右手でかなり苦労していることを物語っている。

弦楽器の弓は、普通に擦れば、音はだんだん大きくなる。バロック時代は、それを標準の音として考えて訳だ。

「そうでない音を作り易い弓がほしい」とViottiは思ったのだろう。途切れないデタッシェが可能な弓が登場する。

Viottiはモーツァルトと3歳違いだが、Viottiデザインの弓がスタンダードになるのは、大体ベートーヴェンくらいからだ。
そしてその頃から「減衰する音」が標準音の一つになると言えるだろう。

そう言えば、ピアノという楽器が普及し始めるのもそのあたりになる。
逆に、ピアノの普及を目の当たりにしたViottiが、ピアノと合奏しやすいような弓が必要だと思ったのかもしれない。

さらに興味深いのは、音楽の中心がイタリアからドイツ=オーストリアに移っていく時期とも重なっていることだ。

チェンバロのアタックは鋭いがヴァイオリンの響きと合わせると、程よい「子音」の役割を果たす。
一方ピアノは、チェンバロに比べると残る響きが随分と豊かである。

それぞれ前者がイタリア語、後者がドイツ語と相似形だ、と言ったら言い過ぎだろうか。

それはともかく、独墺系の音楽が主流としての力を持ち、ピアノ音楽がやはり主流になるにつれ、弦楽器もドイツ的だったりピアノ的だったりする音の出し方が要求されるようになったと言えるだろう。

そして、弦楽器はバロック時代にはなかった音の出し方「アタックの後、減衰する音」をマスターする必要が生じた訳だ。
大変だけど、嫌な人はピアノをやって下さい、ということかな。
ヴァイオリンの皆さん、がんばりましょう。


オーケストラの音色作り④「血液型との関係」

2016-09-27 07:15:00 | オーケストラ
オーケストラ等に所属している人に対し、特定の団体に所属せず、演奏活動をする人をフリーランス演奏家、略してフリーという。

このフリーの人達を集めてオーケストラを作ることは、昔から結構ある。

私もその仕事を割とやっていたのだが、ある時気づいた。
フリー奏者には血液型「B型」が多く「A型」が少ないことを。
そしてオーケストラに所属する人達は、それが逆転して、言ってみれば「普通」になる。
ちなみにO型はどちらにも多く、AB型はもともと少ないので特徴を捉えるほどではない。

さて、B型が多いオーケストラはどうなるか。
録音録画をして驚いたのだが、実に自主的な響きがするのである。ベルリンフィルとはいかないまでも、どこかのドイツのオーケストラみたいな音だった。(ドイツはA型が結構いますが…)

言ってみれば、A型の多いオーケストラは「合わせなきゃ」という意識が強く、ベタっとした感じがするのに対し、B型が多いオーケストラはザクっとした印象、だろうか。

そこへ「行けーっ」とO型が加わって、オーケストラが先に進む…。

なので、いわゆる日本のオーケストラの典型的な音色は「A型」の音、のような気がするのである。

オーケストラの音色作り③

2016-09-25 07:19:00 | オーケストラ
①②と述べてきたが、どちらも1980年代の話である。

現在のN響の響きは全く異なっている。それは、私の感覚ではデュトワ時代に大きく変わった感じがした。
デュトワが常任指揮者になってしばらくの頃、N響のある団員に、そう思わないか尋ねてみた。

彼は「わからない」と言った。
変化は感じるけれど、それがデュトワのせいなのか、あるいは団員の世代交代の結果なのか。

確かに、両方あるような気がする。

そして、他のオーケストラもメンバーが徐々に入れ替わり、現在のレベルまで向上を続けるのだが…

一方で、溶け合うとか合わないとか、あまり気にしていないオーケストラもある。(次で最後の予定。)

オーケストラの音色作り②

2016-09-23 07:45:00 | オーケストラ
オーケストラの後ろの方で弾くとき、
「いいオーケストラは後ろから鳴ってくるんだ」と、亡き田中千香士先生がおっしゃっていたのが、頭の中で絶えず鳴り響いている自分がいる。

オーケストラのエキストラ奏者は「後ろ」に座っている訳だから、私達がバンバン音を出してこそ、その使命を果たしているのではなかろうか、と思う訳だ。

しかし、溶け合わないのはまずい。

その頃、読売日本交響楽団は(ハープ以外)男性奏者しか入団できなかった。それで、ある一時期、エキストラの男共がゾロゾロとたくさん集まった頃があったのだが、私の耳でも明らかに、ヴァイオリンセクションの音が、ガサついて聞こえた。
おかげで、ヴァイオリンの雰囲気が悪くなり、ヴァイオリンのおじさんたちから怒られる回数が増えたのであった。

これが「溶け合わない状態」ということになるのだろう。これならば、音量減らして、の方がマシだ。

だから「溶け合う音」で大きな音、これが理想ということになるだろう。

オーケストラの音色作り①

2016-09-18 08:41:00 | オーケストラ
オーケストラの音色は指揮者が作るのか、楽器演奏者が作るのか、という大テーマを述べるつもりではない。(が、その答は「両者で」となるだろう。)

近年、昔のN響の演奏を聴く機会が増え、昔と今では考え方が変わったなあ、と感慨深く思うことが多い。

筆者がその昔、N響のエキストラ奏者の仕事をしていた時(1982年頃)、後ろの方に座っているヴァイオリン奏者は、ものの見事に音量をあまり出さなかった。

正確には、隣のSさんのみ、本物のフォルテで演奏していた。SさんはN響をやめられたばかりの団友さん。

どうしてこうもフォルテの箇所をフォルテで弾かないのか先輩に尋ねたところ「みんながフォルテで弾くと音が溶け合わずに汚くなるから」という答が返ってきた。

本当にそうかなあ、と、なかなか納得がいかなかった。
(こう考える人には仕事の話は来ない)