井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

アジアフレンドリーコンサート

2006-09-30 18:02:33 | 音楽

昨夜は,久しぶりに九州交響楽団の演奏会を聞きに行った。韓国の友人,コ・ユンジュというチェリストがEメールで誘ってくれたからである。九響を核にアジア各地のオケから何人か招いて合同演奏をする恒例の会であった。
アクロス福岡シンフォニーホール3階の一番端の目もくらむ席に初めて座った。音が良いという専らの評判の席である。
いやはや前半のソリスト,福井敬さんのすばらしいこと。生で聴いたのは初めてだが,圧倒されっぱなしだった。私の大好きな「微笑みの国」を歌ってくれたのも嬉しかった。これに関してはドミンゴのはるか上をいっていた。レハールやプッチーニのように多声部に分かれて伴奏する弦楽器の書かれ方は,当夜のオケにぴったりだった。望むらくは,伴奏ではないところは第2ヴァイオリンのまん中あたりの方に,もっと音を出していただきたかったが。
さらに指揮者,李シンツァオ氏がすばらしい。全曲暗譜である。アリアだけでなく,休憩前のアンコール「カタリ・カタリ」も暗譜だった。編曲物は一回しか演奏しないのが多いから,毎回覚え直しのはずである。
暗譜は両刃の剣で,それだけで良いとは限らない。ただ拍子をとるのに専念されては,次のラフマニノフは絶対にうまくいかない。ところが,である。後半のラフマニノフ交響曲第2番では適格なサインがきちんと出ていて,漏れがなかった。
実は私はこの曲があまり好きではなかった。長すぎる,と思っていた。その上,ヴァイオリンはとても技術的に難しいところがある。本番で「やっと弾けたぜ」という曲は数曲しかないが,そのうちの一つである。技術のことを言い出すと,この曲は不思議な曲で,そういう難所と,アマチュアでも名演が期待できるパッセージとが同居している曲なのだ。それが魅力なのかもしれないが,チャイコフスキーに比べて,どうしても優柔不断なメロディーに聞こえるのが,いやだった。
しかし,当夜はずっと演奏に引き込まれて聴いてしまった。これはやはり指揮者の力量であろう。にも関わらず反応しないヴァイオリニストが一部いたのが不可解であった。どうも韓国の客人のようであったが・・・。我が盟友,山本和彦氏などはビンビン反応していたのだが。
アンコールがエルガーのニムロード。これは「はやり」なのか?(実は私これをただ今勉強中で,この「はやり」の裏には「ハリー・ポッター」が潜んでいる,とにらんでいる。その訳は秘密,エニグマ。)李氏は涙なくしては振れないそうで,本番でやはり泣いていた。さすがにあの複雑怪奇なスコアを全て振るということはなかったが,大いに勉強させてもらった。
終わってからレセプションがあり,何となく参加してしまった。韓国語とドイツ語ができる不思議な集団が形成されていた。聞くところによると,リハーサルはかなりきつかったらしい。それで嫌気がさしてしまった人も多かったのかもしれない。でもそれがあっての本番だったと思う。通訳の方が,昨年は,さらっと流される感じ,今年は盛り上がっていく感じがした,とおっしゃっていた。
それより残念なのは,これほどの名演でも聴衆が少ない(800人くらい?)こと。文化庁の助成もあって,入場料は4000円から2000円。私の席も2000円。いい演奏だから聴衆が増える,ということには必ずしもならないということだ。財務省は「いい加減,税金の垂れ流しはやめろ」と文化庁に言っている,と一昨日きいたばかりである。うーん,皆さん,垂れ流されたものを積極的に受け取りましょう!