西洋発祥の音楽は「発展(development,展開)」する方向で発達してきたものが多い。特に芸術音楽に分類されているものは。
しかし、先日「発展しない」ことを特徴にしている作曲家もいる、という説明の後に聴いたのが、ボッケリーニ作曲の《弦楽五重奏曲「鳥小屋」》。
ボッケリーニの弦楽五重奏曲はチェロを2本使うのが特徴で、しかもどの曲もチェロが高音域を使用するため大変技術的に難しいと聞いている。
腕の良いチェリストを一人頼むだけで大変なのに、二人お願いするなんて、夢のまた夢。自分の企画では無論、他人の企画でも演奏されたのを聞いたことがない。
という訳で、生まれて初めてボッケリーニの弦楽五重奏曲を生で聴いたことになる。
演奏したのは福岡の演奏者グループ「コンセール・エクラタン」と客演の皆さん。
「鳥小屋」というだけあって、鳥の鳴き真似が随所にある。ハイドンやベートーベンの「描写している箇所がある」というレベルではなく、始終続くのである。
しかも、ビオラが最低音を演奏して、チェロ2台が高音域で鳴き真似、みたいな箇所もあり、ずっと飽きずに聴いてしまった。
名手が演奏すると、実に面白い曲だった。
アンコールは、期待通り「ボッケリーニのメヌエット」。
これも、このオリジナルである五重奏版の楽譜を手に入れたいと何度か試みたが、何故か手にできず、初めて生演奏を聴いたことになる。
毎年、ヴァイオリンを教える教材に使っているから、否応なしに弾いたり聞いたりするのだが、その度に「属七から全く動かないフレーズがあったりして変な曲だな」と思っていた。
が、「発展しない」というキーワードのおかげで、とても楽しめる結果になってしまったのは素直に演奏者に感謝したい。