「風が吹けば桶屋がもうかる」という話がある。それを思い出すことがあった。
サラサーテの小品と言えば「チゴイネルワイゼン」が有名だが、サラサーテの作品群の中では、やや異端児的存在だ。
サラサーテの作品の中核を占めるのは、やはりスペイン的なものなのである。
サラサーテは手が小さかったとのことで、パガニーニの作品は弾けなかったらしい。でもパガニーニと同等以上の作曲能力があり、手が小さくても弾ける技巧的な作品を多く残している。
なので、ヴァイオリンを弾く人で手の大きくない人は、積極的にサラサーテを弾いた方が良いと思う。
そのような考えもあり、ある学生にサラサーテの「マラゲーニャ」を弾かせた。
が、何ともマラゲーニャらしくならない。
あの~、マラゲーニャ、知らない?
カルメンにもあったと思うけれど・・・(どれだったっけ・・・思い出さない)
じゃ、レクオーナの「マラゲーニャ」、聞いたことあるでしょ?
あ、レクオーナと言ってもわからないか・・・
レクオーナはキューバのガーシュウィンと呼ばれる作曲家、などということはほとんどの人が知らなくても、レクオーナの曲は誰でも耳にしたことがある・・・はず。いや、自分が子供の頃はそうだった。みんな「マラゲーニャ」のタイトルは知らなくても、聞けば「ああ、あれか」と思ったはずだ。
しかし、なぜみんな知っていたのだろう?
昔は「ラテン音楽」というジャンルがあった。それくらい親しまれていた、ということもあるだろう。
レクオーナでさらに有名なのは「そよ風と私(アンダルシア)」。
これがちょっと訳がわからない。クラシック音楽風の3拍子バージョンとビギン風の4拍子バージョンがある。
世間で有名なのは後者だと思う。
しかし、便利な世の中、ちょっと調べたらたちどころに訳がわかってきた。
カテリーナ・ヴァレンテCaterina Valenteという歌手がいて、彼女のためにレクオーナが自作を改作したものを2曲提供したようだ。比較していただきたいが、かなり大胆な改作だと思うが、これが大ヒット。
でも日本で有名なのは恐らくこのヴァレンテのカバーと思われる。ヴァレンテのカバーを一手にやっていたのが「ザ・ピーナッツ」だったそうだ。
「ザ・ピーナッツ」で我々は育ったので、なるほど当時の日本人はみんな知っていた訳だ。
「ザ・ピーナッツ」には「恋のフーガ」という教育的な歌もあったな。「追いかけーて、追いかけーて・・・」というのは「フーガ」の本質をついている。フーガの訳語は「追走曲」「遁走曲」であり、「追いかける曲」がフーガなのである。当時の日本人は、みんなフーガの本質を知っていた。AKBもこのくらいのことをやってくれれば、多少は見直すのにな・・・。
ということで、伊藤エミさんのご冥福を祈ると共に、レクオーナを聴いてサラサーテを弾きましょう!