井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

ヴァイオリンはアイドルの楽器?!

2012-06-24 08:11:15 | ヴァイオリン

日本では葉加瀬太郎 以降に、アイドル系ヴァイオリニスト(ヴァイオリン系タレントか?)の大物が出てきていないように思うが、台湾ではこんな人もいるのだ、ということを最近知った。

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これはスゴイ。ムーンウォークの後にのけぞって、膝ついてヴァイオリンを弾く・・・。

ちょっとやってみたけれど、音にならなかったorz。

芸能人、という漢字の意味をストレートに受け取れば「芸の能がある人」。タレントも「才能」、となり、やはりこのくらいのことをやってほしいよねぇ、と思う。

新しい傾向のようでもあり、旧来の伝統を受け継いでいるようでもあるところが、非常に興味をひく。

というのも、シゲティの以下の映像が残っているからだ。これは「アート・オブ・ヴァイオリン」のDVDにも収録されているので、ご存じの方も多いと思うが、あの精神主義の権化のようなイメージで伝えられているシゲティが、単なる「受け狙い」をやっている映像で、これはこれで衝撃的だった。

曲はフランソワ・シューベルトの「蜜蜂」(歌曲王のフランツと区別するために本人がドイツ人にも関わらずフランソワと名乗っている)。現在ほとんど演奏されなくなった。中身が無いからだと言えなくもない。単に動き回っている面白さのみの曲である。それならばリムスキー=コルサコフの「熊ん蜂の飛行」の方がはるかに面白いだろう。

でも、このように目の前で奏されたら、それなりに面白いはずだ。イナバウアー奏法はしていないけれど。

で、ヴァイオリン弾きを囲む聴衆、上の動画も下の動画も全く同種の人間に見えてくる。

やはりヴァイオリンというのはブラームスか何かを弾く楽器ではなくて、本来がこういう一面を持つ楽器だよね、ということを見せつけられた思いだ。シゲティ先生も受け狙いをやっていたとはびっくりだったが、これができないのもヴァイオリン弾きとしては本物にあらず、と師匠からも言われたな・・・。

同様のことを評論家の石井宏氏も、どこかに書いていたと思う。

まあ、比べていただきたい。やっていることの本質は同じではないだろうか。

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血沸き肉踊るクラシック系音楽

2012-06-20 21:46:48 | オーケストラ

FMで偶然聞いた曲があった。うん、これは知っている曲だ。しかし何だっけ。うーん、うーん、やはりボケが始まったことを認めるべきだろうか、とか何とか考えて、5分くらいしてやっと思い出した。モートン・グールド作曲の「ラテン・アメリカン・シンフォニエッタ」だ。

自分でCDも買っている。作曲者の指揮によるロンドン交響楽団のもの。FMで放送されたのと全く同じ演奏だったのが後でわかった。3200円もした、ということは1980年代に買ったのだろう。そのくらい興味津津で買ったのに、最近全然聴いていないから、ついに忘れかけてしまった、ということだ。やれやれ。

聞かなくなったのは理由がある。単純に「これは面白いよ」と人に勧めるほどには面白くないと評価したからである。

それでも、モートン・グールドには大変関心がある。「パヴァーヌ」や狂詩曲「ジェリコ」(吹奏楽の名曲)は悪くないと思う。

(ただしリンクした演奏は悪いと思う。良い演奏を探しきれませんでした。)

しかし上記の諸曲、全てこの曲には及ばないと思っている。それは、

アメリカン・サリュート AMERICAN SALUTE

いつ聴いても心が騒ぐ。血沸き肉踊る曲なのである。

最初に聞いたのは吹奏楽の「自由曲集」というLPを高校時代、友人が買って、それを貸してくれた時だ。面白いと思ったけれど、その友人が面白いと騒いでいたので迎合するのもはばかられ(素直じゃないのだ)、とりあえず興味を示す程度。

その次に、N響のゴールデンポップスといっただろうか、うろ覚えなのだが、確か外山雄三指揮のN響がテレビとFMで放送したのである。それが目茶苦茶速いテンポでメチャクチャかっこいいのだ。

当時のN響はドイツ風サウンド一点ばり、トランペットもゲタムラ先生で、決してヌケは良くないのだが、それでもカッコイイ。

そこでトリコになった私、爾来、事あるごとに演奏のチャンスを伺ってきた。

が、それにブレーキをかけるのは、もう一人の自分であった。

なぜ、日本人がアメリカのサリュート(敬礼)なの?

原曲の「ジョニーが凱旋する時」も結構好きな曲である。これもアメリカの南北戦争の歌だ。

これが、どういう訳か映画「塀の中の懲りない面々」で使われていて、とても妙な感じを持ったものだ。なぜ日本の囚人が「ジョニー~」なの? (ただし、ものすごく印象的)

非常にアメリカを感じさせる曲なのである。否、アメリカの愛国心を感じさせる。

これがとても羨ましい。

だったら、日本の愛国心をかきたてる曲をやれば良いではないか、と思うのだが・・・そんな曲がなかなか見つからない。

アメリカだとか何だとかにこだわらずに、演奏を考えたことも何度もある。そこで知るもう一つの驚きは、原曲が吹奏楽の方だということ(とヤマハの店員から言われた)。非常に珍しいケースだ。

これは基本的に管楽器向きの曲想で構成されていることを意味している。となると、弦楽器の苦労が報われないかも、と思ってしまう。

それは考えなくとも、最初に出てくるファゴット3本とコーラングレの組み合わせは、他の楽器には替え難い。これだけダブルリード楽器を揃えるのは実際問題として、かなり難しいのである。

このように様々な理由で演奏が実現しない。けれどこれを作ったモートン・グールドには頭が下がるばかり。これと並ぶ曲が無いとしても、これ一曲あるだけでも充分素晴らしい作曲家だと言いたい。

自分で演奏できないとすればアメリカ人の演奏を聴いて我慢するしかないのだろうな。という次第でご紹介する動画は、アメリカ空軍のもの。驚いたのはバンドでなくオーケストラであった。日本で言えば自衛隊管弦楽団?!そんなものがあるのか、とこれもこの度知った次第。

心なしか誇らしげに紹介する司会者にもやや嫉妬を覚えるが、空軍オーケストラ、なかなか素晴らしい演奏を聞かせてくれる。


ホルスト : 「火星」(戦争をもたらす者~組曲「惑星」)

2012-06-13 07:29:45 | オーケストラ

今年は金星蝕などの天体ショーの多い年、残念ながら当地は曇りにて「金環蝕」は見れなかったのだが、そんな年にふさわしく、オーケストラ授業ではホルストの「火星」をとり上げることができた。

もっとも、それは偶然で、この曲を演奏したのはユーフォニウムをやっている学生のためである。昨年度、ファゴット・パートの代理でかなりがんばってくれたので(連続するトリルを見事吹き通した)、卒業の今年くらい何かやりがいのあるものを、と思った。

ユーフォニウムは吹奏楽では欠かせない楽器だが、オーケストラには定席がない。ユーフォニウムを使う曲と言えば、ラヴェル編曲の「展覧会の絵」やマーラーの交響曲等、非常に限られる。

この組曲「惑星」も、ユーフォニウムを使う代表的な楽曲だ。

しかし、ティンパニを6台、ホルンを6本使う4管編成、というのは別の障害だった。

が、ものは相談、ティンパニ奏者の学生Iさんに尋ねてみると、2年生のI君と組めばできるかも、ということになった。

2年生は授業を履修はできないが、そのように助っ人として出演は、当のIさんも経験している。

では、ということで、他にもトランペット二人、テューバ一人が2年生から参加、ホルンの一部はサクソフォンで代用、と相成った。まがりなりにも体裁は整いそうである。

とは言え、6台のティンパニのための曲を3台のティンパニでどうやるのか?

これはペダルを駆使して、とにかく何とかしてしまうという、大変興味深い「ショウ」が展開される。

多分、この曲を一番楽しんで演奏したのが、このティンパニ・パート。「桜の巻」ではヴィオリストとして出演しているI君の雄姿がおわかりいただけることと思う。

また、中間部になると、初心者集団のチェロ・パートから、極めてイントネーションの安定しない音が聞こえてくる。普通は頼りない印象を持つものだが、「戦争をもたらす者」のことを考えると、戦争を前に不安におののく市民の心情を表現しているようで(生演奏だと顔の表情も不安におののいていて)、意図せぬリアリティを以て迫ってくるのが、意外におもしろかった。

一方、他のパートからは、案外不満の声が・・・。

「こんな低い音、吹いたことありません。」

とは第3トロンボーン嬢。中学から吹奏楽をやっていて、そんなことあるのか? (結局、助っ人のテューバ君に代奏させていた。)

大学にはいってからヴァイオリンを始めた第2ヴァイオリン嬢からは、

「つまらなーい」

確かにずっと「ソ」の音が続く。しかし君たちはちょっと難しいとたちまち弾けなくなるではないか、つまらなくても弾ける曲の方が有意義だとは思わないかね?

技術的に演奏できて、しかもおもしろい曲というのは、そうそう存在しないのである。

また、今回改めてスコアを学習してみると、聞いただけでは全く考えなかったことが頭をよぎる。

「この曲は、何調?」

ほとんどが「ソ」の音のオスティナート(執拗音型)なので、ト調だと思っていたが、最後は低音に「ド」音がくるのでハ調のようにも聞こえる。

しかし、最後の和音はド・ソ・レ・ラで構成される「四度和声」というものでハ長調でもハ短調でもない。

ハ調とト調がせめぎ合う構図が、まさに副題「戦争をもたらす者」を彷彿とさせる。

ト調陣営とハ調陣営が互いに主張してぶつかり合う、つまりはト調とハ調の「複調(バイトナリティ)」と考えるべきなのだろう。

複調というと、ミヨーなどのどうにも落ち着かないものを想起する。それですたれてしまったように思うが、このような世界の表現には、まさにぴったりだったのだな、と改めて感心した筆者であった。

本番で張り切りすぎて出番を間違ってしまったユーフォニウム君もいるけれど、そのあたりはご愛敬ということで聴いていただければ幸いである。

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ハリー・ポッター・ハイライツ

2012-06-05 00:29:32 | オーケストラ

福岡教育大学の授業「オーケストラ」で、かれこれ10年は演奏させてもらっているのが、この曲である。

ハリー・ポッター・シリーズの第1作目「賢者の石」の音楽を、スクール・オーケストラ用に編曲したもので(ハル・レナード社刊)、難易度があまり高くなく、その割には面白く演奏できるので重宝している。

スクール・オーケストラ用なのが一目瞭然なのはヴィオラと同じ音の第3 ヴァイオリンパートがあること。管楽器も、ほとんどが1パートでできている。が、トランペットが2パートだったり打楽器が4パートもあったり、というのはアメリカの事情だなぁ、と思わずにはいられない。

しかし「賢者の石」公開から随分時間が経っている。学生さんがこの曲に親しみを持つ時代はいつまで続くのだろうか。これに代わる別の曲がうまくみつかると良いのだけれど・・・、などという心配をする今日この頃である。

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