九州新幹線で鹿児島中央駅に降り立つと、そこは別世界。ホームから巨大な活火山「桜島」が見えるからだ。ここ数年噴火しない日はほとんどなく、噴火が何の話題にもならない。
しかし、よそから来た人間は、まずこれに目を奪われる。これを見ながら育った人間は人生観が変わるよなぁ、と思う。
「そうですかぁ?」と地元民は言う。確かに、生まれた時にはそこにあるのだから、変わるということはないか・・・。
とにかく、山と海が同時に見える風景は壮観なのだ。ぜひ一度は皆さんに見ていただきたい。
と、風景からして独特なのだが、生活・文化の面でも、他県とは一線を画したものを感じることが多い。
まず、マスコミを筆頭に「南日本」という表記が多い。あちらこちらで目にするものだから、「あぁここは南日本なのだ」と思わずにはいられないようになっている。
ちなみに、本当の「西日本」であるはずの長崎県では「西日本」という言葉はほとんど使われない。福岡が鉄道と新聞で大々的に使ってしまったからであろう。
鹿児島市内にいると「嗚呼、ここは南日本国の首都なのだ」とまで思えてしまうほど、クローズした文化圏が形成されている。
例えば、音楽をやる子供たちは、まず「南日本音楽コンクール」を受けることを考える。すでに60回を超える歴史を持つもので、いろいろあるコンクールの中でも中心的存在である、鹿児島では。
そう、ご当地では「全日本学生音楽コンクール」は知られていない。鹿児島県民のほとんどは南日本新聞を読んでおり、毎日新聞に限らず朝日も読売も鹿児島ではマイナー誌なのである。
そして弦楽器、管楽器を練習する子供達は「MBCユースオーケストラ」に入ることを考える。南日本放送がスポンサーのオーケストラで、実は井財野もここのOBである。団費は確か不要、制服は支給、あまりに条件が良すぎて、意外と苦難の道を歩んでいたのを、よく耳にしたものだ。
とは言え、オーケストラ好きを大量に生み出した存在、その影響もあって、鹿児島県内にはアマチュアオーケストラがかなりある。鹿児島市内に鹿児島大学学友会管弦楽団、鹿児島交響楽団、KTS室内合奏団、鹿児島伯林的管弦楽団と市内に計五つ、市外で聞き及んでいるのは川辺、霧島、加音、鹿屋。
ついでに弦楽合奏団だが「アンサンブル井財野」もある。入団資格は井財野作品が好きなこと、あまり上手すぎないこと・・・これは冗談。
なかなかここまで充実したところは少ないのではないか、やはり南日本国の首都だなぁ、と思ったところで、ふと気がついた。鹿児島県にはセカンドシティが無い!
本来であれば、宮崎県の都城市がセカンドシティだったのだろうと思われる。都城は大隅国であり、言葉も薩隅方言(鹿児島弁に類似)。ところがどういう経緯でか宮崎県に編入されてしまったので、鹿児島市が単独で成長してしまったのだろう。
いずれにせよ、なぜか沢山できてしまったオーケストラ、それぞれが順調に成長することを願わずにはいられない。