◆BookBookBook◆

📚読書備忘録📚
(自己評価★★★★★)+泣ける物語
たまに山ブログ
         

S

2013-07-20 | 村上春樹(翻訳物)

 



スコット・フィッツジェラルド
訳 村上春樹
『バビロンに帰る』★★★


全英オープンを横目に読書 これ定番
ミケルソンとマキロイを前に松山くんの存在感!おもしろかった。
しかしプロでもこうなるとは。

とフィッツジェラルド
この短編もやはりお金持ちの転落と苦悩そこからの脱出
彼の私生活が垣間見れてその時代を感じられる。



彼が言うように、賑やかなパレードはもう窓の前を通り過ぎてしまっていたのだ。

まず最初にやったことは、酒を断つことだった。とはいってもアルコール類を一切口にしないというのではなくて、ビールだけは浴びるように飲んだ。「ビールはいくら飲んでもかまわない」と彼は言った。「まずいのはハード・ドリンクを飲むことなんだ」

「ある種の人種は生きるために酒を飲むことを必要としているんだよ」



やっぱり春樹の訳が らしく しっくりくる。


---以下抜粋

『バビロン再訪』
佐伯泰樹 訳

「で、キャンベルさんはどこへ行った?」とチャーリーが訊いた。
「スイスへ行かれましたよ。ご存じなかったんですか、ウェイルズさん。キャンベルさんはご病気が重いんですよ」
「そりゃあ気の毒に。それならジョージ・ハートは?」
「アメリカに戻って、お仕事に就かれました」
「”スノーバード”のやつは?」
「先週ここにみえました。お友だちのシェイファーさんならパリにおいでです」
一年半前はなじみの顔が目白押しだったのに、いまはやっと二人か。チャーリーは手帳に住所を走り書きすると、そのページを破り、
「シェイファーさんを見かけたらこいつを渡してくれないか」と頼んだ。「義兄の住所だ。まだどこのホテルにするか決めてないんでね」
パリが空っぽだとわかっても、そうがっかりはしなかったが、リッツ・ホテルのバーが静まりかえっているのは違和感があって、不吉な印象を受けた。もうここはアメリカ人のためのバーとはいえなかった――ついかしこまってしまって、わが家同然にくつろぐというわけにはいかない。フランス人に返還されたというわけか。タクシーをおりてドアボーイを眼にした刹那に、バーの静寂は予想がついた。この時刻ならいつもは狂ったように動き回っていたのに、いまは従業員通用口あたりで運転手と噂ばなしに興じている始末だったのだ。


春樹 訳
 

「それでミスタ・キャンベルは何処にいるんだろう?」チャーリーは訊いてみた。
「スイスに行ってしまわれました。ミスタ・キャンベルは具合がおよろしくないんですよ、ミスタ・ウェールズ」
「それはいけないね。じゃあジョージ・ハートは?」チャーリーは尋ねた。
「アメリカに戻られました。お仕事に就かれているようで」
「じゃあスノーバードはどこにいるんだい?」
「先週ここにおみえになりましたよ。ところであの方のお友達のミスタ・シェーファーなら今パリにいらっしゃいますよ」
一年半前の長い友人リストの一角を占めていた二つの聞きなれた名前だった。チャーリーはあるアドレスを手帳にさらさらと書きつけ、そのページをちぎった。
「もしミスタ・シェーファーを見かけたら、これを渡してくれ」と彼は言った。「これは僕の義理の兄の住所なんだ。まだホテルをきちんと決めてないんでね」
パリの街が閑散としているのを見ても、彼はそれほどがっかりはしなかった。しかしリッツ・ホテルのバーの静けさは奇妙だったし、どことなく不吉だった。それはもうアメリカ人のバーではなかった。そこにいるとなんだか改まった気分になった。ここは俺の店だぞという雰囲気はもうそこににはなかった。それは既にフランスの手にもどってしまっていたのだ。 タクシーを下りてドアマンの姿を眼にした瞬間から、その静けさは感じられた。この時間ならいつも目が回るくらい忙しくしているはずのドアマンは、従業員用入口のそばで制服姿のボーイと雑談に興じていた。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする