よしもとばなな
『どんぐり姉妹』★
私の名前はぐり子。姉の名前はどん子と言う。
とんでもない名前だと思うでしょう、私もそう思います。
この世には、意味なく存在するものはない。
でも深い意味があるってほどでもない。
サムゲタン
「結婚には興味ない、恋愛のはじめの頃だけが好きなの。だって、こんなときって、なにもしなくても幸せなんだもの。息しているだけでも楽しい。」
調べたらみんな蒸発しちゃう、この豊かな水が。この水をゆっくり一滴ずつためて、きれいな湖をつくるまでにかかる時間のほうが好き。
どんな人も、ちょっとくらいでいいから、子どものときの自分に会いにいけるといいのにな、と私は思った。
目を閉じると、窓からの光がまぶたの色でオレンジに見えた。生きてるってこれだけのこと、でもなんてすごいことなんだろう。
「韓国の夜道は、まだ夜がちゃんと夜なのです。暗くて、冷たい空気の中に氷の粒がたくさん入っているみたい。人々は白い息をはき、楽しいときは楽しい、いやなときはいやだという顔をちゃんとしている気がする。いい人はいい顔、悪い人はずるい顔をちゃんとはっきりしています。」
「韓国にいると命がぐっと自分に近い気がする。」
あんなに空が青いなんて。心細くなるくらいに。
「飽きたくないのに。」
こんな世界で暮らせたらいいのに、そう思うから大人は絵本を描き続けるのだろう。
夢の中にまた夢があり、目が覚めると新しくまた夢が始まった。
夢というものは自由すぎて、時々わけがわからない。
やちむんの里
マルタン・マルジェラ