井上ほのか
『アイドルは名探偵』
昭和63年4月 5日 第1刷発行
昭和63年7月20日 第2刷発行
・・・昭和ですよ!!
死語になりつつある(死語自体が死語?)
帰省すると帰化したくなるのか?
なつかし過ぎてくらくらする(笑)
だって昭和だもの。若かりしあの頃以前。
意識は?景色は?何してた?
主人公たちはそのままで年齢を重ねたのはわたしだけ(当たり前だけど)
何度読んだことだろう。
スプリンクラーがなんなのか分からなかった(それもなつかしい)
ベタな少女小説かもしれないけど、よく出来ていると思う。
次に読んだ風見さんなんてこのジャンルでよいの?ハイクオリティ
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雨にうたえば
ときならぬスプリンクラーの雨がやむと、スタジオは水びたしになっていた。
セットのかげに、避難していたスタッフが、いそいで駆け出していく。
ほとんど足首のところまである水を、モップとぞうきんで、なんとかしようよいうのだ。
一人のADが、青くなって走ってきて、九条監督に息せききって報告した。
「監督ッ、どこも燃えていません!ひどいイタズラですッ!!」
「なにィ!貴様、もう一度言ってみろ!!」
瞬間湯沸器というあだ名の、九条監督が、興奮してADを怒鳴りつけた。
「イ、イタズラです・・・・・・スタジオじゅうどこにも火事のあとはないんです・・・・・・スイマセン」
ADが、ブルブルふるえながら繰り返した。
「いったい誰のしわざだ!? 撮影の邪魔しやがって! 誰だ、すぐ出てこい、許さんぞ!」
なおも、怒鳴り続けようとしていた、九条監督の声をさえぎって、誰かの悲鳴が響きわたった。
「キャアアッ! 死んでるッ、水鬼さんが死んでるわッ!」
「何だとッ!!」
スタジオにいた全員の目が、いっせいに中央のセットにむけられた。
まるで、撮影のワンシーンみたいに、俳優の水鬼明彦さんが倒れていて、その背にふかぶかと長いナイフがささっているのが、見えた。
「いったい・・・・・・誰が・・・・・・?」
ふたたび九条監督が言った。
(誰が?誰が?誰が?)
わたしの頭のなかでも、エコーのようにその言葉が、なり続けた。
(誰が?)
思わず、二、三歩後ずさりしたわたしを、後ろからささえてくれた両手があった。ふり返ると、克樹がいた。
目を見れば、彼が同じことを考えているのが、わかった。
「・・・・・・とうとう、脅迫状が本当になっちゃった・・・・・・これで、主役候補が一人少なくなったんだね・・・・・・」
それを聞くと、わたしは、いやなめまいと一緒に、ここ数週間の出来事をいっきに思いだしていた・・・・・・。