The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―38. 目的にあった識別管理によって、品質トラブルを防止する”
今回は 検査後の製品識別が テーマですが、その背景も問題となっています。
【組織の問題点】
3年前にISO9001の認証を取得したガラス製品メーカーA社の定期審査でのこと。
製造部での現場監査で 検査装置の横に置いてある製品には、品名・品番の表示はあったのですが、検査済なのか未検査なのかの区別が明確でありませんでした。このためか、過去に未検査品を顧客に出荷してしまったというクレームが数件発生しているとのこと。
このようなクレームの対策が 今回の課題です。
【磯野及泉のコメント】
まず著者・岩波氏は、製品の識別管理の ISO9001の条項として “7.5.3 識別及びトレーサビリティ” を 取り上げています。
そして、出荷前の製品が “「検査前なのか検査後なのか、検査後であれば良品なのか不良品なのか」の識別が行われていないことが問題です。そのために、未検査品が良品に混入して出荷されてしまったと考えることができます。” と指摘しています。
そしてISO9001で要求事項となっている識別の種類を整理して示しています。著者の提示事項は下表のようになります。
そして、最後に “品質トラブルをなくすためには、目的にあった識別を行うことが 必要です。” と述べて この本では終わっています。
著者・岩波氏の指摘である“製品の識別管理”とその結果である“トレーサビリティ”は重要です。
そして テーマ内容は 本の企画の構成j上 このように落ち着いたトーンになっていますが、実際の 場面では このような展開には 恐らく なっていないものと思われます。
つまり “過去に未検査品を顧客に出荷してしまったというクレームが数件発生している” ことこそが問題となります。同じようなクレームを数件も発生させていたにもかかわらず、審査機関の審査指摘に至るまで 何ら対策を講じずに来てしまったという問題です。このA社では このクレーム多発時期に 他にもっと大きなクレームや問題が起きていたのでしょうか。
いずれにせよ こういう状態ではISO9001の是正処置のプロセスが適切に機能していないという問題が浮き上がって来ます。
このように複数の不適合が 想起される場合、審査の現場では どういう指摘が適切でしょうか。通常、審査機関によるISO9001適合性審査では より具体的な 相手が逃げ隠れできない監査証拠を 優先して取り上げて指摘し、それに関連する 不適合は 相手に “気付かせる”ようにするのが適切であると考えられているようです。
要するに “気付き” により 自発的に反省し 是正処置を 取るようにする方が 効果的だとのことです。この点が、審査機関による第三者監査の特徴でありますが、自社の第一者監査では、その場で是正処置プロセスの機能不全を直接指摘し、反省を厳しく求めることが一般的だと思われます。
従って、恐らく第三者監査(審査)に臨まれた岩波氏の指摘は このテーマ“製品の識別管理”に関する不適合であったのではないかと 想像されます。
なるほど、ここでも 受審組織の “主体性” を尊重し、その上で “気付き”が 求められている印象です。
ISOマネジメントでは 前回も指摘したように “組織の主体性” が暗黙の前提条件になっています。これは 主体性の希薄な 多くの日本企業にとって 非常に苦手なことです。日本企業の多くが ISOマネジメントに なじめない原因が ここにあると思います。審査機関によって 反省の糸口を与えられたにもかかわらず、トヨタのように 徹底した“なぜなぜ解析” を せず 目前の事象のみに拘泥し 小手先の是正(修正)でコトタレリとし、再発を防ぐ抜本対策を取らず、このため一向に進歩向上しない会社が多いのだと思われます。
さて ことのついでに、ISO9001の94年版では 次のような際立った要求事項がありました。
この要求事項を出荷前製品の識別管理に適用することは 多くのクレームを防ぐ第一歩として重要であると考えます。つまり、折角 作った製品が 最後のプロセスでテレコになったりしてクレームにならないようにすることは 大切なことだと思うのです。これこそ 最もプリミティブな クレーム対策で、コンピュータ・システムを動員してでも 完璧な管理を実施するべきであると考えます。私は 第二者監査では この部分は必ずチェックするようにしています。
“検査は省略せよ” との いつもの主張に反するようではありますが・・・・・。
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