徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

人類の中性化が止まらない。

2022年10月17日 07時49分14秒 | 小児科診療
私が子どもの頃(約50年前)は、
LGBTQという言葉は当然ありませんでした。
どう呼んでいたかというと、
女らしい男は「オカマ」、
男らしい女は「オトコオンナ」、
などと、今は差別用語扱いされる単語が使われていました。

近年、テレビタレントも男女グレーゾーンの人々が増えてきて、
これは最近の流れなんだな、
日本は、人類はどうなっちゃうんだろう、
と素朴な疑問が生まれてきました。

しかし今回、NHKのTV番組を見て目からうろこが落ちました。

「人類が絶滅の危機!?“中性化”と生殖の未来」
体や心の性差が縮まる「中性化」に最新科学で迫る。中性化の原因とされるのは男性らしい体や脳の形成に関わる性ホルモン・テストステロンの分泌の変化。先進国では、男性では分泌が減少、女性では増加している実態が見えてきた。中性化が進行した未来を見据えて、男と女によらない「新たな生殖の仕組み」を作り出そうという研究も始まっている。スペシャルナビゲーターの井上咲楽さんと「中性化」という人類の大課題を考える。

なんと、人類の中性化は数万年前に始まっていたというのです。
最近じゃないんだ・・・。

そのきっかけは「共同作業」。
具体的には複数の人間が協力して大きな獲物を捕る「狩猟」です。
力仕事ですから、男性が対象となります。

それまでは個人の能力、野性的嗅覚や攻撃性が強い人間が生き残れる世界でした。
しかし共同作業では、“協調性”が必要とされます。
ただ攻撃性が強いだけの人は、
連携を乱すので必要とされなくなり淘汰されるというのです。

頭蓋骨から、男性の中性化兆候が読み取れると解説がありました。
それは眉毛部分の骨の盛り上がり程度。
これは男性ホルモンであるテストステロンの分泌が多いと、
盛り上がりが強くなる場所とのこと。

数万年前から現代までの頭蓋骨を並べて比べてみると、
確かに眉毛部分がだんだん平らになっていることに気づかされます。

つまり、人間の生活文化が変われば、必要とされる性質も変わる、
ということなのですね。
テストステロンは男性なら多く女性なら少ないという単純なものではなく、
いろんな状況で分泌量が変化するホルモンであるという解説も、
驚きでした。

単純な肉体労働中心の時代は、
男女をはっきり分けることが秩序を保ちやすかったので、
テストステロンも男女差の分泌がはっきりしていたはず。

肉体労働からデスクワークに移行した現代社会では、
マッチョさは必要とされませんので、
男性のテストステロンは減るばかり・・・。

一方の女性は、
会社の管理職になったりすると、
テストステロンの分泌量がどんどん増えていきます。

現代社会でのテストステロン分泌は、
男女でオーバーラップするのが当たり前になってしまいました。

そういえば、これもNHKのドキュメンタリーで、
という番組がありました。
その中で、ガミガミ子供を叱る母親と、
それを見守る草食系男子の夫のテストステロン値を測定したところ、
なんと母親の方が高値だったのです。
つまり、テストステロン値が男女逆転していた・・・。

さてここで、世界の各民族社会の調査報告を紹介します。

(joyjoy83:2021年8月23日 )より抜粋;
(考察として)
・女性の社会的地位が高くなるほど、性的二型性は低下し、食料リスクがその傾向に関与することが示された。
・人類は、その長い歴史の中で、過度に攻撃的な個体を殺害・排除していく中で、全体的に穏やか性質を持つようになった。このプロセスは自己家畜化と呼ばれる。
・食料リスクに晒されている地域では、より男性性の強い男性が女性によって選択される。
・しかし安定して食料が確保できる状況では必ずしもそうではないと考えられる。
・女性の男性選択基準が人類の自己家畜化に影響していることが考えられた。
(原著)
・Female status, food security, and stature sexual dimorphism: Testing mate choice as a mechanism in human self-domestication.  Am J Phys Anthropol. 2018 Nov;167(3):458-469. doi: 10.1002/ajpa.23642. Epub 2018 Aug 29
(女性の地位、食料安全保障、および身長の性的二形性:人間の自己家畜化のメカニズムとしての配偶者選択の検証)

なるほど。
その人が要求される仕事や立場により、
男女にかかわらず、
テストステロン値は変動するのですね。

手の指の長さを見ると、
テストステロンの分泌量の多い少ないがわかるそうです。
人差し指と薬指の長さを比べてみてください。
ふつう、
男性は人差し指<薬指
女性は人差し指>薬指
なのですが、性別にかかわらず逆転している人が一定数います。
つまり、女性らしい男性、男性らしい女性ということになります。

このグラデーションがいいことなのか、悪いことなのか・・・
単純に判断はできませんが、
異性との恋愛、結婚、妊娠、出産が減ってきていることは事実です。
つまり、この傾向が続くと再生産~子孫を残すことが難しくなってくることから目をそらすわけにはいきません。

番組の中ではiPS細胞を使った無性生殖を紹介していました。
マウスではすでに実現しており、
人類では倫理上ストップがかかっていますが、
理論的には可能だとのこと。

精子と卵子がいらない生殖、
父親も母親もいない子ども、
いのちを創れるかもしれませんが、
哺乳類でちゃんと育つのかどうか、私には疑問です。

哺乳類の子どもが育つためには、
愛情がたくさんたくさん必要です。

両親が揃っていても「愛着障害」が社会問題化しているのに、
両親がいない哺乳類の子どもを創ってしまうと・・・。


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