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徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2019/20シーズンの「抗インフルエンザ薬」動向

2019年10月09日 05時44分41秒 | 小児科診療
 経済誌「日経ビジネス」でも、抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」について取りあげています。
 昨シーズンベストセラーになったものの、耐性化問題から(特に小児に対して)使用が制限される可能性に言及しています。
 ただ、私が待ち望んでいる学会の指針発表は10月末になりそう、と流行に対して後手に回ってしまいました。
 抗インフルエンザ薬に関して、今シーズンのポイントは、

① ゾフルーザの処方制限
② イナビル吸入懸濁液の登場

 が現場でどう扱われるか、ですね。

①に関しては、流行の型がA(H3N2)つまりA香港型の場合は処方を避けるべきでしょう。

②に関しては、5歳未満の乳幼児、また高齢者に使用されると思われますが、一つ困ったことが。
院内感染という問題が新たに発生するのです。
イナビル吸入混濁液はネブライザーを使用して吸入する薬です。
処置室で行うことになりますが、喘息の吸入同様、5〜10分時間がかかります。
そして流行期には、複数の患者さんが同時に吸入する状況も出てきます。
インフルエンザの型が同じならよいのですが、異なる場合(例えばA型とB型)、付き添い家族は感染してしまうリスク大(吸入している患者本人は守られますが)。
空間ではなく時間で隔離しようとすると、イナビル吸入を待つ行列ができそうです。
小児科医院の処置室が、インフルエンザ流行拡大の起点になるなんて、感染対策上許されません。

どうしたものか・・・。

インフル早期流行の裏で治療薬市場の勢力図に異変
2019年10月9日:日経ビジネス
古川 湧(日本経済新聞証券部記者)
 厚生労働省の10月4日の発表によると、沖縄県など6県でインフルエンザが流行の目安を超えている。例年より早いインフルシーズンの到来に製薬業界も対応を急ぐが、治療薬市場の勢力図は変わるかもしれない。昨シーズン、トップシェアの塩野義製薬の「ゾフルーザ」が失速するとみられているからだ。
 冬場の病気のイメージが強いインフルエンザが、早くも流行の兆しを見せている。厚生労働省の10月4日の発表によると、流行の目安を超えているのは沖縄県や鹿児島県、佐賀県など6県。前週発表時点で入っていた東京都は抜けたものの、「今年は例年に比べて、流行入りする時期が早まっている可能性がある」(感染症の専門家)。原因は定かではないが、海外旅行客の増加などが指摘されている。
 医療現場で強まる警戒。出番が早まるインフル治療薬に注目が集まるが、見逃せないのは市場での勢力図に変化が起きそうなことだ。
 インフル治療薬の国内市場は中外製薬の「タミフル」と第一三共の「イナビル」、塩野義製薬の「ゾフルーザ」の3剤で全体の約8割を占める。中でも2018年3月に発売したゾフルーザは、「1回飲むだけで効く」という手軽さから昨シーズンに需要が急増。予想の約2倍となる263億円を売り上げ、一時は工場を24時間稼働させても生産が追いつかないほどだった。
 タミフルやイナビルの売上高に対するインパクトも大きかった。タミフルは18年12月期に前期比36.7%減の107億円、イナビルは19年3月期に同28.1%減の182億円まで落ち込んだ。
 今シーズンも快進撃を続けるとみられた塩野義だが、目算が狂った。ゾフルーザが効きにくい「耐性ウイルス」に対する懸念が強まっているのだ。

◇ 医学会も投与抑制呼びかけへ
 インフル治療薬では一定の割合で耐性ウイルスが出現するが、ゾフルーザはその検出率が比較的高い。塩野義も低年齢の小児患者で耐性ウイルスの検出率が高かったとする調査結果を9月2日に公表している。仮に耐性ウイルスが市中に広がれば、どの薬を使用すべきか医師が判断しづらくなり、治療が遅れる可能性もある。
 こうした懸念から感染症に関する複数の医学会が10月末にも「小児患者へのゾフルーザの投与は慎重にすべき」との声明を出す見通し。これでゾフルーザは昨シーズンほどは使用されない公算が大きくなった。
 そうした中で、「ゾフルーザ越え」を虎視眈々(たんたん)と狙うのが第一三共だ。同社のイナビルはゾフルーザが登場する前は売上高でトップを走っていた。イナビルは口から吸い込むタイプの粉末薬で、1回吸うだけで効くのが最大の特徴だ。中外のタミフルは朝夕2回、5日間にわたって飲み続ける必要があり、利便性ではイナビルが上回る。しかも、タミフルでは、昨年から沢井製薬のジェネリック医薬品(後発薬)が参入し、以前よりも売り上げを見込みにくい状況になっている。
 さらに第一三共は、吸い込む力の弱い子供や高齢者でも吸引がしやすい新製品のイナビルを10月25日に発売する予定だ。液体のイナビルを霧状にして吸い込ませる製品で、同社の広報担当者は「寝たきりになっている患者の方など、従来掘り起こせていなかった市場を開拓していきたい」と語る。
 経済活動にも大きな影響を与えるインフルの大流行。治療薬を巡る健全な企業間競争が、大流行を防ぐ手立てとなるに越したことはない。
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