小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「おいしく治す食物アレルギー攻略法」(伊藤浩明監修)

2017年07月04日 06時53分27秒 | 食物アレルギー
おいしく治す食物アレルギー攻略法
監修:伊藤浩明
作成:あいち小児保健医療総合センターアレルギー科
発行:認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク

<内容紹介>
本書は、伊藤浩明先生監修の下、あいち小児保健医療総合センター アレルギー科で実際に使用している資料をまとめた資料編と解説編に分かれています。
「資料編」は、保護者へ指導する際にコピーして使用できるパネルがまとめられ、「解説編」は、資料編のそれぞれの内容について、指導者が理解しておきたい内容が記述されています。「資料編」と「解説編」相互に、対応するページが示され、指導がスムーズにできるよう構成されています。
食物アレルギーの食事指導を行う管理栄養士の皆さまにご利用いただきたい一冊です。

この「攻略本」は、原則として各医療機関の医師の診断と指示の下に管理栄養士が食事指導を行うことを想定して作られています。食物アレルギーの基礎的な内容を網羅した解説ではありませんので、一般的な知識は成書や研修会などで学習した上でご利用ください。また、一般の方は必ず主治医の指導の下ご利用ください。




当院はアレルギー科を標榜しているので、よく食物アレルギー患者さんが相談に受診されます。
そこで避けられないのが除去解除の際の経口負荷試験とそれに伴う栄養指導です。

しかし、アナフィラキシーの既往のある重症患者さんを抱えるのは危険だし無責任とも考えられます。
アレルギー関連学会で議論になるのは決まって重症患者さんで、軽症患者さんに対するガイドラインもマニュアルも従来は存在しません。

そんな中、私は「開業医でどこまでできるか?」をずっと探り続けてきました。
近年になり、ようやく軽症者への対応も扱われるようになった感があります。

この本は、先日聴講した伊藤浩明先生のお話の中でも紹介され、私が探してきた「軽症者の診療」を扱った内容です。

・『攻略法』は、従来から「少しずつ食べてみる」指導をしてきたすべての軽症者が対象です。
・私たちは『攻略法』による食事指導と経口免疫療法の本質的な違いは、対象となる患者さんの違いと考えています。


ただ、やはりハードルがありました。
医師の他に「栄養士」ありき、なのです。
しかし現状は、総合病院でなければ栄養士はいません。

・『攻略法』は医師と栄養士がチームを組んで食事指導を行うことを想定しています。

当院の事情として、地域の基幹病院の小児科が閉鎖したことが大きく影を落としています。
いざというときの受け入れ先がないのです。
入院施設のある近隣の総合病院へ救急車で搬送しても30分以上かかってしまいます。

すると、はじめから十分な救急体制の取れる総合病院に患者さんを誘導した方がよい、とも考えられます。
やはり開業医では十分な診療は無理なのでしょうか・・・。

ちなみに、経口負荷試験を保険診療で行うには、以下の施設基準を満たし申請して許可される必要があります;

1.小児科を標榜している保険医療機関。
2.小児食物アレルギーの診断および治療の経験を10年以上有する小児科を担当する常勤の医師が1名以上配置されている。
3.急変時などの緊急事態に対応するための体制その他当該検査を行うための体制が整備されている。

当院に当てはめると、1と2は満たしますが3は不十分と言わざるを得ません。アナフィラキシー・ショックを起こした場合は医師も複数を集めて人海戦術で診療にあたるのがふつうですが、私1人しかいませんので。
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