小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

アスリートの“運動誘発性喘息”は見つけにくい。

2018年01月18日 08時06分54秒 | 気管支喘息
 先日、日本小児アレルギー学会に参加し、思春期喘息のシンポジウムを聞いていて「思春期喘息のコントロールが悪いのは、コンプライアンス/アドヒアランスだけの問題ではなく、症状に患者本人も気づかないためである」ことを聞いて目から鱗が落ちました。

 そういえば昔、こんな患者さんを経験したことがありました。
 中学3年生で、水泳部のキャプテン。
 数年来喘息発作がなく、その時点では悪化時受診となっていました。
 ある日受診した際、「タイムが伸びなくて後輩達に抜かれて焦っている」という相談を受けました。
 でも泳いでいるときに苦しくなったりはしないそうです。
 診察時も喘鳴を聴診器で検出できません。
 「試しに練習前に発作止めの吸入をしてみようか?」
 と提案し、実行してもらいました。
 すると次に受診時、
 「タイムトライアルで記録がぐんと伸びました。体も動きました。」
 との報告。
 というわけで、本人が意識していないけど運動誘発性喘息を治療的診断できたのでした。
 一般に「水泳は喘息発作を起こしにくいスポーツなので、喘息児の体力作りに適している」と言われていますから、意外な発見でした。

 学会を聴講して「思春期喘息は肺機能検査など客観的な指標を用いて管理する必要がある」ことを学びました。
 そんな、わかりやすそうで捉えるのが結構難しい「運動誘発性喘息」の解説記事を紹介します。

■ アスリートには気管支喘息が多いって本当?
2017/11/14:日経メディカル

■ 意外と難しい運動誘発性喘息の診断
2017/12/14:日経メディカル
 
■ 適切な喘息診療が金メダリストを生む…かも
2017/12/26
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

成長期のアスリートに多い“スポーツ貧血”

2018年01月18日 07時30分50秒 | 小児医療
 思春期貧血は昔から有名で、「成長著しい時期であり需要に供給が追いつかない」とか女子の場合は「月経で失われるから」と説明されてきました。
 しかし近年、運動系部活動を熱心にしている選手の中で、足底を強く踏み込む動作があるとその衝撃で赤血球を壊してしまい貧血の原因になることが指摘されるようになりました。
 私が研修医の頃までは「行軍症候群」(軍隊の長時間の行軍で兵士の尿に赤血球の中身のヘモグロビンが出る)として知られた病態ですね。

■ 成長期のアスリートに多いスポーツ貧血って?
2018/1/16:日経メディカル
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ネコから感染するのはSFTSだけではない。

2018年01月18日 07時02分29秒 | 感染症
 2017年には「野良猫にかまれた女性がSFTSで死亡」した例が話題になりました。

 そして今回、ネコからヒトへ感染したコリネバクテリウム・ウルセランス(Corynebacterium ulcerans)という細菌による死亡例が報告されました。
 ジフテリア類似症状(重症では呼吸困難で死亡することもあります)を示すとされ、現在小児に行う定期接種の四種混合ワクチンに入っているジフテリア・トキソイドが有効と記事にありますので、接種が済んでいる子どもは安全ですね。

■ 野良猫からウルセランス菌感染で死亡例、国内初 〜ジフテリアに似た症状、マクロライド系抗菌薬が奏効
2018/1/17:日経メディカル
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「化血研事件」の化血研という会社がなくなります。

2018年01月18日 06時36分43秒 | 予防接種
 日本脳炎ワクチンは、現在でも不足しており、当院では予約再開に至っていません。
 その裏にはこんな事情があります;

■ 化血研が日本脳炎ワクチンの自主回収を決定
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201801/554472.html?n_cid=nbpnmo_mled_html-new-arrivals)

 もう一つ、「化血研事件」を扱った記事を紹介します。
 いろいろ話題になった「化血研」という会社、名前が消えてなくなるようですね。
 
 この記事を読んで、ちょっと違和感を覚えました。
 記事を書いた弁護医師は少し調査が足りないのではないかと思います。
 「化血研事件」の本質は、「製剤方法を勝手に変更して届け出ていなかった」ことであり、「被害が出たかどうか」ではありません。

 実は、この事件には伏線があるのです。
 その昔、MMR(麻疹-ムンプス-風疹)ワクチンが認可され、使用された際に、製薬会社がワクチン株を規定のものから別の株へ変更したため、無菌性髄膜炎の副反応が想定外数発生し、ワクチンは中止に追い込まれたことがありました。

 それがトラウマになって、日本のワクチン行政は及び腰になり、世界標準から20年遅れてしまいました。
 そのため、ムンプス(おたふくかぜ)の流行がコントロールできず、1000人に1人の割合で難聴患者が発生する事態となりました。
 「行うべきワクチンをしなかったために発生した病気」の責任は製薬会社にあります。

 厚生労働省は、このような事件を回避するため、一見必要以上に見える行政指導をしているのだと思います。

■ 化血研事件にみる日本の行政規制
2017/12/20
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

医療事故では医療者も傷つく。

2018年01月18日 06時20分48秒 | 医療問題
 医療事故が起こると、患者側は被害者、医療者側は加害者として報道されます。
 メディアは社会的地位が高い人たちの不祥事を好んで取り上げ、読者である国民もそれを喜ぶ傾向がありますので。

 しかし医療者側にいる私から見ると、心血を注いで診療しても、結果が悪いと悪者にされる例を見聞きします。
 残念ながら、努力してもヒューマン・エラーはゼロにはできません。
 医療者は傷つき、現場から立ち去りますが、その後立ち直れたのでしょうか。

 そんな中、患者側だけではなく、医療者側もケアするプロジェクトが立ち上がりました。
 紹介記事中の「医療者が一番癒されるのは、患者や遺族からの『赦し』を受け取ることであり、そのためには双方が落ち着いて話せる安全なコミュニケーションの場が大切」という文言が印象的です。

■ 医療者が壊れる前のファーストエイド
ケアネット:2018/01/18
 医療事故に直面し傷ついた患者・遺族と医療者双方をケアし、支援していくシステムの普及を目指し設立された一般社団法人Heals(Healthcare Empowerment and Liaison Support)の設立シンポジウムが、2017年12月23日に都内において開催された。シンポジウムでは、医師、看護師をはじめとする医療従事者、弁護士など法曹関係者、患者団体など約170名が参加し、現状の問題点や今後の展望についてディスカッションが行われた。

◇医療事故で傷ついた人々の橋渡しに
 はじめに同団体の代表理事の永尾 るみ子氏が「Healsの理念」について講演を行った。講演では、乳幼児突然死症候群(SIDS)により自身が愛児を失い医療不信になったこと、その後看護師として医療の世界に身を置き感じた医療システムなどの不安定さについて語った。これらを踏まえ、医療事故後の患者と医療者の関係性について、傷を負った双方が心の問題を抱え込まず、ケアをすることができないかとHealsを考え、団体設立となったと説明した。
 とくに医療事故の後、医療者の多くは自責の念や事故への対応や裁判への不安など非常に不安定な心理状態におかれているにも関わらず、周囲に相談できず、負の感情を抱えたまま職場を去ったり、心のバランスを崩したりする人がいると問題を浮き彫りにする。医療事故後には、「遺族、医療者の双方がケアされる環境づくりが大事だ」と同氏は指摘し、そのためには、「Healsを通じて患者・遺族への相談、医療者へのピアサポーター養成、遺族と医療者の対話のあり方について学ぶテキスト、さまざまな研修プログラムの開発などを行っていきたい」と展望を語った。

◇事故医療者へ必要なファーストエイド
 次に曽根 美穂氏(青山心理発達相談室・臨床心理士)が、「傷ついた医療者の心理とケア」をテーマに説明を行った。
 医療事故は突然起こるものであり、事故が起きると患者・遺族も医療者も強いストレスを受け、心的外傷(トラウマ)を負う。そして、負ったトラウマは、心理面(自責の念、後悔の念など)、身体面(不眠、動悸など)、社会生活面(孤立化、過敏反応など)で影響を及ぼし、ケアされないと心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)を発症する。
 PTSDを発症すると再体験(フラッシュバックやパニック状態)、回避・まひ(事故の現場へ行けない、周囲との付き合いを避けるなど)、過覚醒(常時緊張や不眠・悪夢)を起こし、社会生活が困難となるばかりか、専門的な治療が必要になる。そのため、トラウマの段階でのケアが重要であり、治療では秘密が守れる場所で、事故者本人が信頼できる人が、本人を孤立させず、気持ちに寄り添い、話を聞きその内容を言語化する必要がある。「トラウマの解消には言語化が必要であり、言語化されることで気持ちが整理され、本人にとって受け入れられる出来事になる」と同氏は説明し、「医療事故が起きた場合、医療機関は、傷ついた医療者のファーストエイドに、医療メディエーターを活用して欲しい」と説明を終えた。

◇ファーストエイドを担うピアサポーターの役割
 次に井上 真智子氏(浜松医科大学地域家庭医療学講座 特任教授)が「ピアサポートのしくみと過程」をテーマに、アメリカのピアサポートを例に解説した。
 ピアサポートとは、心理的ファーストエイドとして同じ立場の人間が支援をし合う仕組みであり、アメリカでは、医療者をシステムエラーの第2の被害者として捉え、ピアサポートが医療者のバーンアウトを防ぐとされ、10数年前から行われている。
 アメリカでは、2002年に医療事故の患者と医療者の交流・赦しを目的にNPO法人MITSS(Medically Induced Trauma Support Services )が設立され、サポートが開始された。
 ピアサポートは、グループセッションと個人セッションの2形態があり、事故の発生後に最大48時間以内にサポートを実施するフローになっている。ピアサポーターの役割として、「本人の感情の正当化」「能力・適正に自信を持たせる」「専門的ケアの必要性の評価」などが挙げられ、その一方で「事故の原因究明」「患者への説明・謝罪の助言」「職務能力の評価」などは行わないとされている。また、サポーターは研修への参加、メールでの報告(内容は実施件数と状況のみ)、サポーターミーティングへの参加が求められている。これらはボランティアの形で行われ、ピアサポートの医療者のミスを責めない姿勢は、医療者を疲弊させない文化で院内を変えていくと説明されている。
 医療者の心が傷ついたとき、回復には6段階プロセスがあるという。すなわち、
(1)混乱と反応
→(2)侵入思考・振り返り
→(3)自己一貫性の修復
→(4)調査への対応
→(5)感情への対応
→(6)切り替え・前進
の順で本人は回復していき、(6)の「切り替え・前進」では、「職場の移動・退職」「事態をやり過ごして生き残り」「成長・洞察」の3パターンがある。早い段階からサポートすることで、その後のキャリアへの影響を防ぐことが大切という。
 最後に井上氏は「医療の現場では、個人を責めない『公正な文化』に基づく、職場内での支援が必要」と語り、レクチャーを終えた。

◇電話相談から始まるピアサポート
 次に和田 仁孝氏(早稲田大学大学院法務研究科 教授)が、「Healsの果たすべき役割」について説明を行った。
 医療事故で傷ついた当事者である患者・遺族と医療者に対して、電話相談か面接によるケアサポートを実施する。その導入として、現況のアセスメント、施設適合的なシステムの提案、関連部署管理者へのレクチャー、サポートシステム管理者の研修が行われる予定である。早い時期での実施を計画しているが、ボランティアベースによるものなので、開催は月1回からのペースになるという。
 参考までにアメリカでは、医療事故以外の事由のサポートも行われ、個々の医療機関独自のやり方でよいとしている。ピアサポーターの75%が医師で、看護師も多く、宗教者もいる。
 今後の展望としては、「医療機関だけでなく学会での普及も視野に入れるとともに、私見ながら『患者・医療者の対話カフェ』の実現やピアサポート導入パッケージの推進、サポーター養成の研修事業などを行っていきたい」と将来の発展を語った。

◇患者・患者遺族、医療者の視点で医療事故後の対応を考える
 後半のシンポジウムでは大磯 義一郎氏(浜松医科大学医療法学 教授)を司会に迎え、先ほどの講演者と会場とで活発な意見交換が行われた。
 シンポジウムでは、患者視点として肉親を医療事故で失くし、自身も医療事故の被害者となった女性が事故後の対応の問題(一例として医療者からの情報不足など)を語った。これに対し近年では、医療者が患者に共感をもって接し、医療情報の提供、謝罪を行うように変化している現状が報告され、こうした案件に対してHealsには、両者が対立軸にならないように、患者・遺族、医療者の重大な心理的負担を受け止める役割が期待されると今後の働きを示した。
 また、医療者の視点からは薬剤誤投与での患者死亡のケースが報告され、当時のサポートの状況と反省点などが語られた。事故には医師を含む複数の医療者が関係し、事故後に医療者には病院が主体となって弁護士相談やメンタルサポート、就業支援が行われた一方で、遺族との交渉状況は何ら医療当事者には知らされなかったという。また、医師の精神面でのフォローがなかったことから、精神状態が不安定な状況におかれた点は反省すべきであったと説明された。経過として、その後遺族側から医師と面談したいとの提案により面談が実現し、医師が謝罪し、遺族も医師に同情を示し、精神的な安定へとつながった。このケースを踏まえて「医療者が一番癒されるのは、患者や遺族からの『赦し』を受け取ることであり、そのためには双方が落ち着いて話せる安全なコミュニケーションの場が大切ではないかと考える。事故後、早い段階で医師に声をかけ、想いを語る機会をもつ必要があったと思う。情報を遮断して守るのではなく、医師のトラウマケアを意識した守り方が必要だったと考える」と提言を述べた。


<参考>
一般社団法人Heals ホームぺージ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「くしゃみ」を我慢してはいけません。

2018年01月16日 18時31分39秒 | 感染症
 そう言われれば、そうかもしれない・・・。

■ くしゃみ抑制すると脳血管や喉、鼓膜が破裂する恐れ 医師ら警鐘
2018/1/16 AFP=時事
【AFP=時事】くしゃみを抑えると、喉の裂傷や鼓膜の損傷、脳血管の破裂などを引き起こす可能性があると、研究者らが15日、警鐘を鳴らした。
 多くの人は、くしゃみが出そうになると、本質的にくしゃみの爆発力を抑え込もうとして口や鼻などをすべてふさぐ。だがこうした行為が場合によっていかに危険かということが、英レスター(Leicester)にある病院の救急外来を最近受診した34歳の男性の症例で明らかになった。この男性は、首の腫れと激痛を訴えていた。
 英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)の症例報告データベース「BMJ Case Reports」に掲載された論文によると、担当医師らは、「患者は鼻をつまみ、口を閉じてくしゃみをこらえようとした後、首の辺りで破裂するような感覚を覚えたと話した」として詳細を説明。CAT(コンピューター断層撮影)のスキャン画像を見ると、抑制されたくしゃみの力によって喉の後部が破裂していたことが確認できたと述べている。
 まれな症例ではあるが、くしゃみを抑制したことにより両肺の間に空気がたまってしまった例や、脳血管が膨張した状態にある脳動脈瘤(りゅう)の破裂が起きた例さえあるという。
 医師らは、「鼻孔や口を覆ってくしゃみを抑制するのは危険な行為であり、避けるべきだ」と結論付けている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「あなたの子供は肥満児、医師受診を」

2018年01月16日 06時31分45秒 | 小児医療
 群馬県は肥満児が多いらしい、そしてその理由は車保有率が高いため歩かないから?、という記事を紹介します。

 健診で「肥満」を指摘された子どもに医療機関受診を促す通知を出すことになったという内容ですが、素朴な疑問として「今まではどうしていたの?」ということ。
 健診で「肥満」を指摘されても、医療機関を受診するかどうかは保護者に委ねられていた、ということになりますよね。
 では何のために税金を使って健康診断をしてきたのでしょうか?
 問題を検出してもアフター・フォローがないなら、欠陥施策だと思います。

■ 群馬県教委「あなたの子供は肥満児、医師受診を」通知へ
毎日新聞2018年1月15日
18年度から定期健康診断で「肥満度50%以上」対象に
 群馬県教育委員会は15日、来年度から、定期健康診断で肥満度が高いとされた県内の小中学生に対し、病院で受診するよう通知すると発表した。群馬県は全国平均に比べ子どもの肥満傾向が高く、食生活や運動習慣を見直すきっかけにして将来的な生活習慣病のリスクを軽減するのが狙い。文部科学省の担当者は「全国的な調査はないが、個別の通知は珍しいのではないか」としている。
 対象は定期健康診断の結果、日本小児内分泌学会の基準で肥満度50%以上と判定された児童・生徒。男女とも身長に応じて定められている「標準体重」の1.5倍以上の体重になると肥満度50%以上の「高度肥満」とされ、通知の対象となる。
 対象者には、歯科、眼科健診と同様に通知を出し、医師の診断を受けた上で学校に結果を提出してもらう。
 文科省の学校保健統計調査によると、群馬県は肥満度20%以上の肥満傾向の子どもの出現率が高く、12歳男子で15.81%と全国平均の9.89%を大きく上回っている。県教委は、車の保有率が全国一という「車社会」が影響しているとみている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヒアリで恐いのは毒ではなくアレルギー

2018年01月06日 11時31分32秒 | 医療問題
 「ヒアリに刺されると死ぬことがある」と恐怖で語られた2017年。
 詳しく見ると、ヒアリで恐いのは毒ではなく、アナフィラキシー。

 これは蜂に刺されるときと似ています。
 蜂に刺されると、その毒で誰でも腫れて痛いですね。
 しかし、重症化してアナフィラキシー・ショックを起こし命に関わるのはほんの一部の人です。
 これは、ハチ毒に対してアレルギーがあるかどうかにより決定すること。

 ヒアリでも、その毒で誰でも痛い思いをするようです。
 しかし、重症化してアナフィラキシー・ショックを起こし命に関わるのはほんの一部。
 蜂と同じく、ヒアリ毒に対するアレルギーの有無で重症化するかどうかが決まります。

 ハチ毒に対するアレルギーは林業に携わる人に多い傾向があります。
 何回も刺されてアレルギーを獲得するのです(感作といいます)。

 という内容の記事を紹介します;

■ ヒアリ、正しく恐れて 救急医のサイト、閲覧20万超
2018年01月03日 朝日新聞デジタル
 毒を持つ南米原産のヒアリが全国各地で見つかるなか、救急医が「正しい知識を持ってほしい」と毒の症状や治療法を紹介したサイトが20万回以上閲覧されている。
 サイト「医療者のための正しく恐れるヒアリ学」は、名古屋掖済会(えきさいかい)病院救命救急センターの安藤裕貴医師(39)が作成した。「ヒアリに刺された時は冷やす」といった対処法や、刺された時に起きうる急激なアレルギー反応で、死に至る可能性もある「アナフィラキシーショック」についての基礎知識にも触れている。
 また、ヒアリ生息域の住人の約5割が年に1回刺されている米国内の現状などを紹介。医療関係者向けだが、専門知識のない人でもわかる内容だ。研究が進んでいる米国の論文約20本を読み込み、最新の情報をまとめた。安藤医師は「ヒアリの毒に致死性があるという誤ったイメージが先行しているが、毒そのもので死ぬことはない。気をつけるのはアナフィラキシーのほう。刺されたらどうなるのかという情報が少なかった」と話す。
 環境省によると、ヒアリは昨年5月に兵庫県尼崎市で国内で初めて確認された。その後、浜松市や広島県呉市でもみつかり、12月25日までに12都府県で26事例が確認された。冬場は動きが鈍るが、暖かい土の中などで越冬し、春先に再び活動が活発になるとみられ、サイトが役に立ちそうだ。
 安藤医師は「必要以上に恐れず、不安を和らげることにつながれば」とサイト作成の理由を語った。


 上記サイトを見てみました。
 ほほう、と頷いた箇所を列記します。

・ヒアリ生息地の住人の51%は1年に1回刺されている。
・ヒアリによるアナフィラキシーの発生頻度は7%(?)。
・「ヒアリに刺される」はお尻から出る針で刺されること。口で噛むのではない。
・一般的な局所症状は、刺された瞬間痛みが走り、1時間以内に腫れてきて、12時間以内に小さな膿疱ができ、大きな紅斑になって(17-56%)24-72時間続く、蕁麻疹が出ることもある。
・アナフィラキシーのほとんどは、刺されて15分以内(遅くとも1時間以内)に発症する。
・ハチ毒と交差反応性がある。


 この中で気になった項目は「ハチ毒と交差反応性あり」。
 ハチアレルギー患者では、初めて刺されたときはまだアレルギー体質になっていないのでアナフィラキシーなど強い反応は起こらないとされています。
 だから、ヒアリも初めて刺された時に重症化することはない、と考えていましたが、ハチ毒と交差反応性があるとなると話は別。
 ハチアレルギー患者さんは、初めてヒアリに刺されたときも同様の症状が出る可能性があるということになります(要注意!)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

湯たんぽによる「低温やけど」に注意!

2018年01月06日 09時38分57秒 | 医療問題
 湯たんぽが恋しい季節になりました。
 湯たんぽは「良眠」に効果的だそうです。
 最近はレンジでチンするお湯を使わない簡易タイプも登場しています。

 しかし、便利グッズにありがちなことですが、万能ではありません。
 糖尿病で感覚が鈍っている方、脳梗塞などで足の麻痺があり熱いと感じても自分で動かせない方には注意が必要です。

■ 「低温やけど」にご用心 エコな湯たんぽも注意
2018年01月04日 朝日新聞デジタル
 冷え込みが厳しい日が続いています。湯たんぽやカイロは手軽で使いやすく、愛用している人も多いのではないでしょうか。湯たんぽは、エコブームもあり、この季節、店頭でもよく見かけます。ただし、使い方を間違えると、低温やけどを招くこともあるようです。どんな注意が必要なのか、専門家に聞きました。
 「低温やけどは、若い人よりも高齢者や糖尿病などの持病がある人に起きてしまうことが多い」。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の磯貝善蔵・皮膚科医長は、こう話します。
 健康ならば、熱いと感じれば体をずらして避けようとすることができます。でも、糖尿病の神経障害で感覚が低下していたり、脳梗塞(こうそく)や骨折などで体を動かしにくい状態だったりすると、熱くてもそこから体をずらすことが難しくなります。このため、長い時間、湯たんぽなどに皮膚が触れた状態になりがちです。
 一般的に皮膚が損傷を受けるのは、
 ・60度であれば5秒ほど
 ・50度で2~3分
 ・44度で3~4時間

ーとされています。
 低温やけどは、温度が低い分、皮膚が接する時間が長くなり、やけどがじわじわ進み、深いところまで達しやすい、という特徴があるそうです。
 最初は皮膚の変化も目立たなかったり、痛みも弱かったりするため、自覚に乏しく、受診まで時間がかかることが多い、とのこと。でも、受診したときには、皮膚の深い部分までやけどしていて、皮下組織が壊れ、手術が必要になることもあるそうです。
 少し古いですが、製品事故の調査をしている独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の調査データがあります。1996年4月~2009年10月に、湯たんぽなどやカイロ、電気毛布などによる低温やけどの事故は、77件ありました。月別にみると、1月が最多で19件、次いで12月と2月が各10件、3月も9件ありました。
 また、消費者庁の発表によると、湯たんぽによるやけどの事故は、09年9月~今年10月に240件ありました。このうち、低温やけどは少なくとも67件。消費者庁は「心地よく感じる程度の温度でも、皮膚の同じ部分が長時間接触していれば、やけどになることがあります」と注意を呼びかけます。高齢者に加え、幼い子どもも皮膚が薄く重症化しやすいため、気を付けたほうがいいそうです。
 それでは、具体的にはどんなことに注意すればいいのでしょうか。磯貝さんは大きく3点あげます。

 (1)湯たんぽはあらかじめ布団に入れておき、寝るときは足から遠ざける
 (2)カイロは、寝るときにははずす
 (3)もしやけどになってしまったら、なるべく早く医療機関を受診


 睡眠薬をのんでいたために熟睡し、気付かないうちに低温やけどになった、という報告があるそうです。認知症など要介護の程度が重ければ、自力で動くことも難しい。そんな状況もありえます。こうしたケースでは「周囲や家族が気を付けてあげる必要があります」と磯貝さんは話します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「もうけすぎ」薬局に逆風

2018年01月05日 15時01分09秒 | 医療問題
 しばらく前にこのブログで「おくすり手帳」の問題点を扱いました。
 薬局で薬剤師が服薬指導をすることになっているものの、病名がわからないので十分な指導ができないというジレンマが存在する、という内容です。

 厚生労働省・日本政府は「医薬分業」を謳って薬局の独立を促してきました。
 その結果、調剤報酬が増加の一途を辿り、医療福祉費の肥大に貢献するほどになりました。一時期は「薬局バブル」などと呼ばれました。
 医療福祉費を減らさなければならないはずの日本経済に逆行する流れです。
 そして今、薬局はハシゴを外されることになりそうです。

■ 「もうけすぎ」薬局に逆風 かかりつけ機能後押し 調剤報酬引き下げ
共同通信社:2018年1月4日

 ほかに医療福祉費肥大に貢献している分野に「接骨院・整骨院・柔道整復師」があります。

□ 柔道整復療養費にメス?厚労省が不正請求への対処に本腰
2012/7/10 日経メディカル
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする