「違うわよ。実はね……」
赤ちゃんをあやす私に、麗夢さんはかいつまんであの後のことを教えてくれた。
麗夢さんが私を気絶させた直後、円光さんの必殺技、『夢曼陀羅』というのが炸裂したそうだ。それは、半径1キロにも達する巨大なもので、大阪城を中心に地面に描かれ、その辺りの魔物や、瘴気という負のエネルギーを軒並み吸引、消去したんだって。お姉さまはその時、身の丈40mを超える怪獣になっていて、眠り込んだ私の身体を鷲掴みにしていたそうなんだけど、夢曼陀羅の力にすっかり吸い込まれてしまったらしい。麗夢さんが言うには、お姉さまのおかげで夢魔を逃がすことなく、きれいさっぱり浄化出来たんだとか。ほんとならそれですっかり全てが消えて終わったはずだったんだけど、私を助けに来たみんなは、私が眠りながら抱きかかえているものに気が付いて、戸惑ったんだって。
何故ならそれが、この赤ちゃんだったから。
「私が、赤ちゃんを……?」
「そうよシェリーちゃん。赤ちゃんはピンクの浴衣にくるまれていたんだけど、何か覚えがある?」
ピンクの浴衣? 私は覚えがあるどころではなかった。私は赤ちゃんの顔をもう一度見た。すっかり機嫌を直して笑う赤ちゃんの目元や口元は、言われてみれば確かにそっくりではないか。
「お姉さまだ……」
「え? どう言うことシェリーちゃん?」
「だから、この子、お姉さまなのよ! ROMお姉さまなの! 麗夢さん、お姉さまは死んじゃいなかったんだわ!」
赤ちゃんは、ROMと呼ばれたのがうれしかったかのように、一段と笑い声を上げて、きゃっきゃと喜んだ。
「そうか……」
「まさかとは思ったが……」
鬼童さんやヴィクター博士が腕組みして考え込み、おじいちゃんは気むずかしげなお顔で二人に言った。
「大丈夫なのか? その、赤子があの怪物のなれの果てだとしたら……」
「おじいちゃんお願い! 私に育てさせて!」
私は思わずおじいちゃんに言った。
「ま、待てシェリー!、幾ら何でもそれは……、第一、まだ安全と決まったわけではないのだぞ」
慌てて私を説得しようとするおじいちゃんに、円光さんが言った。
「しかし、今のこの赤子には、邪気も何も感じない。ただの普通の赤子にしか見えぬ」
麗夢さんも言った。
「そうね。元は確かにROMだったかも知れないけど、今はただの赤ちゃんでしかないわ」
「しかし、だからといってシェリーが育てるなど……」
なおも難色を示すおじいちゃんに、ヴィクター博士が言った。
「ならば僕が引き取りましょう。シェリーちゃんに御世話してもらいながら、僕が育てますよ。それならどうですか?」
「ううむ……」
「お願い、おじいちゃん!」
必死な私に、榊警部や鬼童さん円光さん、それにハイネマンさん達も味方してくれた。こうなるとおじいちゃんも一人頑張ってもいられないのだろう。とうとう最後にはヴィクター博士の提案に乗る形で、首を縦に振った。
「……判った。だが勘違いしないよう念のために言っておく。君にシェリーを嫁がせるわけではないぞ」
榊警部が笑い出したいのを堪えて、向こうを向いて背中を震わせている。麗夢さんはやれやれと肩をすくめ、ハイネマンさんは、将軍、それはないでしょう、と呆れ顔だ。当のヴィクター博士はと言うと、顔を真っ赤にしてそんなことはないと必死に否定していた。
私はと言うと?
まだ結婚なんて判らないし、第一私には夢の中で約束した人がいる。ヴィクター博士には悪いけれど、あくまでもお付き合いはこの赤ちゃんの御世話に限らせてもらおう。
そう言うわけで私は赤ちゃんの養育係になりおおせ、こうして特別に王室専用機に席を設えてもらい、一路母国へ帰ろうとしているのである。
赤ちゃんをあやす私に、麗夢さんはかいつまんであの後のことを教えてくれた。
麗夢さんが私を気絶させた直後、円光さんの必殺技、『夢曼陀羅』というのが炸裂したそうだ。それは、半径1キロにも達する巨大なもので、大阪城を中心に地面に描かれ、その辺りの魔物や、瘴気という負のエネルギーを軒並み吸引、消去したんだって。お姉さまはその時、身の丈40mを超える怪獣になっていて、眠り込んだ私の身体を鷲掴みにしていたそうなんだけど、夢曼陀羅の力にすっかり吸い込まれてしまったらしい。麗夢さんが言うには、お姉さまのおかげで夢魔を逃がすことなく、きれいさっぱり浄化出来たんだとか。ほんとならそれですっかり全てが消えて終わったはずだったんだけど、私を助けに来たみんなは、私が眠りながら抱きかかえているものに気が付いて、戸惑ったんだって。
何故ならそれが、この赤ちゃんだったから。
「私が、赤ちゃんを……?」
「そうよシェリーちゃん。赤ちゃんはピンクの浴衣にくるまれていたんだけど、何か覚えがある?」
ピンクの浴衣? 私は覚えがあるどころではなかった。私は赤ちゃんの顔をもう一度見た。すっかり機嫌を直して笑う赤ちゃんの目元や口元は、言われてみれば確かにそっくりではないか。
「お姉さまだ……」
「え? どう言うことシェリーちゃん?」
「だから、この子、お姉さまなのよ! ROMお姉さまなの! 麗夢さん、お姉さまは死んじゃいなかったんだわ!」
赤ちゃんは、ROMと呼ばれたのがうれしかったかのように、一段と笑い声を上げて、きゃっきゃと喜んだ。
「そうか……」
「まさかとは思ったが……」
鬼童さんやヴィクター博士が腕組みして考え込み、おじいちゃんは気むずかしげなお顔で二人に言った。
「大丈夫なのか? その、赤子があの怪物のなれの果てだとしたら……」
「おじいちゃんお願い! 私に育てさせて!」
私は思わずおじいちゃんに言った。
「ま、待てシェリー!、幾ら何でもそれは……、第一、まだ安全と決まったわけではないのだぞ」
慌てて私を説得しようとするおじいちゃんに、円光さんが言った。
「しかし、今のこの赤子には、邪気も何も感じない。ただの普通の赤子にしか見えぬ」
麗夢さんも言った。
「そうね。元は確かにROMだったかも知れないけど、今はただの赤ちゃんでしかないわ」
「しかし、だからといってシェリーが育てるなど……」
なおも難色を示すおじいちゃんに、ヴィクター博士が言った。
「ならば僕が引き取りましょう。シェリーちゃんに御世話してもらいながら、僕が育てますよ。それならどうですか?」
「ううむ……」
「お願い、おじいちゃん!」
必死な私に、榊警部や鬼童さん円光さん、それにハイネマンさん達も味方してくれた。こうなるとおじいちゃんも一人頑張ってもいられないのだろう。とうとう最後にはヴィクター博士の提案に乗る形で、首を縦に振った。
「……判った。だが勘違いしないよう念のために言っておく。君にシェリーを嫁がせるわけではないぞ」
榊警部が笑い出したいのを堪えて、向こうを向いて背中を震わせている。麗夢さんはやれやれと肩をすくめ、ハイネマンさんは、将軍、それはないでしょう、と呆れ顔だ。当のヴィクター博士はと言うと、顔を真っ赤にしてそんなことはないと必死に否定していた。
私はと言うと?
まだ結婚なんて判らないし、第一私には夢の中で約束した人がいる。ヴィクター博士には悪いけれど、あくまでもお付き合いはこの赤ちゃんの御世話に限らせてもらおう。
そう言うわけで私は赤ちゃんの養育係になりおおせ、こうして特別に王室専用機に席を設えてもらい、一路母国へ帰ろうとしているのである。
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