投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 1月28日(土)11時12分38秒
前回の投稿で、過去十数年、まともに小説を読んだ記憶がないと書きましたが、昨年、この掲示板でも触れた森鴎外の『かのやうに』とか、最近ではユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』とか、まあ、世間で小説とされているものをチラホラと読んではいます。
ただ、それも歴史研究の対象であったり準備作業だったりして、ストーリーそのものを楽しむことがなくなったなあ、という感懐があって、『レベッカ』にしても、グレート・ブリテン島の最西端、コーンウォール半島に存在するというマンダレーからロンドンに車で向かう道中の描写は当時の交通事情を考える上で良い資料になるなあ、みたいな妙なことをついつい考えてしまいます。
マンダレーについては、茅野美ど里氏の「ダフネのふたつの顔─訳者あとがき」にも若干の説明がありますね。(p583)
------
マンダレーのモデルは、メナベリーという実在の屋敷です。フェリーサイドに滞在するようになってダフネはその存在を知ったのですが、無人の家は林の奥深くにひっそり隠れるように建っており、姉とともについに辿り着いて屋敷が目の前に姿を現したときの感動がダフネを虜にしました。初めて目にしてから十七年近く経った一九四三年に、二十年の賃貸契約で借りられることになると、修繕やメンテナンスは借り手の責任という不利な条件だったにもかかわらず、大満足でした。人目を避けるように建っているメナベリーは、ひとりにならないとほんとうの自分を取りもどすことができなかったダフネにとって、うってつけの家だったのです。のちに契約が切れかかったときも、延長を求めて必死に家主と交渉しましたが、残念ながら希望はかないませんでした。
------
ダフネは1907年生まれですから、1943年の17年前というと1926年、ダフネが19歳の時ですね。
1938年4月に出来上がった原稿にダフネはあまり自信が持てなかったそうで、出版社に原稿とともに送った手紙には「サスペンスを醸しだすようにしたのですが、最後はちょっとあっけなくて、なんだか暗いです」とあったそうです。(p582)
しかし、出版社はヒットを確信して一大広告キャンペーンを行ない、実際に刊行と同時にイギリスのみならずアメリカでも大ベストセラーとなり、1940年に早くも映画化ですから、印税が山ほど入って来て、メナベリーの賃借も可能になったのでしょうね。
https://en.wikipedia.org/wiki/Menabilly
前回の投稿で、過去十数年、まともに小説を読んだ記憶がないと書きましたが、昨年、この掲示板でも触れた森鴎外の『かのやうに』とか、最近ではユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』とか、まあ、世間で小説とされているものをチラホラと読んではいます。
ただ、それも歴史研究の対象であったり準備作業だったりして、ストーリーそのものを楽しむことがなくなったなあ、という感懐があって、『レベッカ』にしても、グレート・ブリテン島の最西端、コーンウォール半島に存在するというマンダレーからロンドンに車で向かう道中の描写は当時の交通事情を考える上で良い資料になるなあ、みたいな妙なことをついつい考えてしまいます。
マンダレーについては、茅野美ど里氏の「ダフネのふたつの顔─訳者あとがき」にも若干の説明がありますね。(p583)
------
マンダレーのモデルは、メナベリーという実在の屋敷です。フェリーサイドに滞在するようになってダフネはその存在を知ったのですが、無人の家は林の奥深くにひっそり隠れるように建っており、姉とともについに辿り着いて屋敷が目の前に姿を現したときの感動がダフネを虜にしました。初めて目にしてから十七年近く経った一九四三年に、二十年の賃貸契約で借りられることになると、修繕やメンテナンスは借り手の責任という不利な条件だったにもかかわらず、大満足でした。人目を避けるように建っているメナベリーは、ひとりにならないとほんとうの自分を取りもどすことができなかったダフネにとって、うってつけの家だったのです。のちに契約が切れかかったときも、延長を求めて必死に家主と交渉しましたが、残念ながら希望はかないませんでした。
------
ダフネは1907年生まれですから、1943年の17年前というと1926年、ダフネが19歳の時ですね。
1938年4月に出来上がった原稿にダフネはあまり自信が持てなかったそうで、出版社に原稿とともに送った手紙には「サスペンスを醸しだすようにしたのですが、最後はちょっとあっけなくて、なんだか暗いです」とあったそうです。(p582)
しかし、出版社はヒットを確信して一大広告キャンペーンを行ない、実際に刊行と同時にイギリスのみならずアメリカでも大ベストセラーとなり、1940年に早くも映画化ですから、印税が山ほど入って来て、メナベリーの賃借も可能になったのでしょうね。
https://en.wikipedia.org/wiki/Menabilly
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます