学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

「よろしいんじゃないでしょうか」(by 「水尾さん」のモデル)

2018-10-02 | 映画・演劇・美術・音楽
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2018年10月 2日(火)13時40分13秒

>筆綾丸さん
確か『ぐるぐる問答 森見登美彦氏対談集』(小学館、2016)に出ていたのですが、森見は『太陽の塔』を書き終えた後、「水尾さん」のモデルの女性と会って原稿を見てもらったそうですね。
すると別に修正を求められることもない代わりに特に感想もなく、「よろしいんじゃないでしょうか」との素っ気ない返事だったとか。
私はこのエピソードから、『太陽の塔』は実は「水尾さん」とヨリを戻すために書かれた作品ではないかと疑っているのですが、まあ、仮にそれが正しいとしても、「よろしいんじゃないでしょうか」で一刀両断されて、完全にふっ切れたのでしょうね。
『夜は短し 歩けよ乙女』(角川書店、2006)の主人公も、二足歩行ロボットのような不思議なステップを踏んだりするなど外形的には「水尾さん」を真似ていますが、すっかり小説の中の面白い登場人物に昇華されていますね。
また、森見の京大農学部と院での研究活動は『美女と竹林』(光文社、2008)というエッセイ集に詳しく描かれていますが、これは担当編集者が登場する内輪もので、率直に言って森見作品の中では少しレベルが落ちる内容です。
研究者としての将来に見切りをつけた森見は国立国会図書館という安定した職場を得て、最初は関西館、後に東京の本館に勤務したそうですが、なじみのない東京での仕事のストレスに加え、様々な出版社からの依頼を断ることができずに休みなく執筆に追われているうちに体調を崩して、結局は国会図書館を辞めて奈良に戻ったそうです。
『美女と竹林』にはそういう方向に向かう事情がチラチラ描かれていますが、それでも最後の方にそれなりの盛り上がりがあって、決して読んで損する作品ではありません。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

むささび(もま)鍋 2018/10/02(火) 11:10:41
小太郎さん
『ペンギン・ハイウェイ』を読みました。変な内容ですが、少年の失恋の物語として読めばいいのでしょうね。恥ずかしながら、ペンギン・ハイウェイ(penguin highway)やルッカリー(rookery)という用語を初めて知りました。ちなみに、辞書を引くと、pengwyn はウェールズ語で、白い頭、とありますね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9F%E3%81%AC%E3%81%8D%E3%83%BB%E3%82%80%E3%81%98%E3%81%AA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
『太陽の塔』に、「むささび・もま事件」の話がありますが、「たぬき・むじな事件」は知っていたものの、これは知りませんでした。
何の関係もありませんが、MOMAはニューヨーク近代美術館のことですね。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35984500R01C18A0ACYZ00/
今日の日経に、本庶佑氏のノーベル賞受賞に関連して、京大農学部3年の鍋加有佑という、森見登美彦氏の後輩の話が出ています。鍋とは農学部らしい姓だな、と思いましたが、鍋加(なべか)と読むみたいですね。なお、『太陽の塔』の主人公の専門は遺伝子工学とありますね。 
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