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『翼のはえた指 評伝安川加壽子』と皇后陛下

2015-12-21 | 映画・演劇・美術・音楽
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年12月21日(月)08時29分5秒

青柳いづみこ氏の『翼のはえた指 評伝安川加壽子』(白水社、1999)は既に読んでいたのですが、『双子座ピアニストは二重人格?』(音楽之友社、2004)所収の「安川加壽子先生の評伝を書き終えて」(初出は『えんれん』1999年11月号)によると、皇后陛下も同書を読まれたそうですね。
このエッセイは、

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 一九九九年六月に上梓した『翼のはえた指─評伝安川加壽子』は、幸い多くの読者に恵まれた。書評も、音楽関係者はもとより、詩人、作家、フランス文学者、文芸評論家、美術評論家、ジャーナリストなど多方面の評者に書いていただき、あらためて先生のお名前のひろがりの大きさを感じた。
恥ずかしいのは、「先生がさぞお喜びでしょう」と言っていただくことである。天国できっと先生は、我々のよく知っている少しだだっ子めいた口調で、「なぁに、やってんのよぉ」とおっしゃっているだろうから。誰だって、自分の生徒から「そのとき加壽子は……」などとよび捨てにされたくはないだろう。実は、評伝を書くにあたって一番抵抗があったのが、その点だった。
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と始まっていて、対象の近くにい過ぎるが故の客観視の難しさに触れていますが、そうかといって直接に安川加壽子の指導を受けていない人だったら例えどんなに資料を集めても書けないだろうと思われる話がたくさんあって、やはり青柳氏が最適の筆者なんでしょうね。
さて、このエッセイの最後は、

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 事実関係の誤謬もいくつか指摘していただいているが、なかでも感激したのは、本を読んで下さった美智子皇后さまから、芸大の同級生のピアニスト、岡崎悦子さんを通じて、リウマチ治療の現況についてお知らせいただいたことである。リウマチに深い関心をおもちの美智子さまは、私が「病院にはまだリウマチ科がない」と書いたことについて、「平成八年に認可されました」と伝えて下さった。早速二刷のときに改めさせていただいた。
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となっていますが、私が読んだのはたまたま図書館で借りた第一刷なので、関係部分を確認してみると、

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 現在はリウマチ患者は全国で四十万人以上いるといわれているが、病院ではいまだにリウマチ科という科名すら認められていない状態である。現在ですらそうだから、二十年前の当時は、登録医や認定医の制度もなかった。
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となっています。(p256)
「二十年前の当時」とは、安川加壽子の演奏家生命を奪ったリウマチが最初に発症した1978年のことですね。
それにしても皇后陛下の博識にはびっくりです。

http://ondine-i.net/books/155
http://ondine-i.net/books/2698
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