熊本いのちの電話「自殺予防公開講演会」
「自殺に傾くひとへの理解」 講師 河西千秋氏
自殺にまつわる誤解・都市伝説」
今さら聞けない自殺に関するあれこれ」 を含め下記について話をします。
①これまでの日本の自殺問題と国の対応
②自殺に噛む区押印
③自殺対策の進め方と実践活動
①これまでの日本の自殺問題と国の対応
足掛け3年の新型コロナ問題
「感染のしやすさ・恐怖」⇒メンタル
多くの感染、遺族、閉塞感、学業の中断、大学中退(万単位)
自殺が増加、最悪シナリオの結末、自殺が増加している。
G7国の中で日本が自殺が一番高い
自殺対策基本法(2006年)法律で以って自殺対策をしている。法律を持っているのは少ない。
自殺する人の個人の問題と言われていたのが、社会の問題だと視点を変えて。地方公共団体にも責任がある。国民も責任がある。「自殺贈号対策大綱」が出された。難しいと“大綱”がでる。
自殺総合対策、当初9個⇒13個、5年ごとに更新されている。
1.地域レベルの実践的な取組への支援を強化する
2.国民一人ひとりの気付きと見守りを促す
3.自殺総合対策の推進に資する調査研究等を推進する
4.自殺対策に関わる人材の確保、養成及び資質の向上を図る
5.心の健康を支援する環境の整備と心の健康づくりを推進する
6.適切な精神保健医療福祉サービスを受けられるようにする
7.社会全体の自殺リスクを低下させる
8.自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐ
9.遺された人への支援を充実する
10. 民間団体との連携を強化する
11. 子ども・若者の自殺対策を更に推進する
12. 勤務問題による自殺対策を更に推進する
13.女性の自殺対策を更に推進する
戦後大きな自殺者の山があり、今が3つ目です。1997年に一挙に1.5倍で3万人台、男性7割、女性が3割。
なぜ1997年に自殺が増えたか? 大型倒産が増えた。山一證券、拓殖銀行など倒産。バブルの崩壊後に決定的になった。
コロナになると平成良かったというが平成は自殺が多かった。そこで国が対策し、自殺が順調に減ってきていた。しかし、コロナで増えた。
増加は10代、20代、女性に非常に顕著。
10代、20代、30代は死因の1位が自殺40代は第2位。50代前半は第3位。
女性の自殺対策を更に推進する(新)が13番目として追加された。
②自殺にからむ要因
いったいどのような人が自殺で亡くなっているか。(自殺因子)
『心中天網島』(近松門左衛門)の上演後自殺が増えた
『若きウェルテルの悩み』ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ著の後、自殺が増えた。
地域や時代を超えて、こういうときに自殺が起きる。
その地域その時代と普遍的な要素の両方を考える
このようなひとは自殺に傾きやすい
1.自殺念慮、絶望、孤立無援感
2.精神疾患にかかっていた・かかっている
自殺した人の98%が精神疾患に罹っていた(WHO)
皆さんは今日自殺しようと思っている人はいないと思う。
考えてみてくださいと言ってもなかなか考えられない。
それがどう言うときにできるか?
脳が機能障害を起こしていることしかあり得ない。
脳で判断したり決断している。
・うつ病
・双極性障害
・統合失調症 など
限度を超えたストレス・悩み
悪く悪く考えてしまう
思考の柔軟性がなくなる。
自殺以外に今の状況を終わらせることができない、抜け出すことができない。
「こころの視野狭窄」「自殺するしかないと思う」
自殺≠死にたい なので、皆さんの活動が重要
3.がん、難病にかかっている、身体の機能を失った
HIVなども。身体の病気から自殺が生じるプロセス。
がんは100%告知して対応して生きましょうという時代。
告知されると落ち込むが、多くの人はどうするかを考えていく。
それでも心配でミスを起こしてしまう。
多くの方は脱出するが出来ない人がうつ病など発して自殺念慮が生まれてくる。
病気が悪さをしているのが大きい。
1~3はくっついている。
4.自分を傷つける自傷行為と自殺未遂
自殺者の40%以上に自殺未遂歴があり、80%以上が自殺手段を変えている。
自殺者の43%が1年以内に自損行為で救急医療を受診し、28%は3回以上繰り返している。自殺未遂者の3-12%がその後自殺。
横浜市立大学で救急車で運ばれた自殺未遂して助かった100数十人/年に聞き取り調査した結果、8割の人が精神疾患を抱えていた。
5.大事な人との離別・死別直後
喪失体験、その後は強い自殺念慮がある。
6.国や地域の経済破綻
経済破綻が大きく繋がっている。仕事に就けない人が多い。
大規模災害が経済破綻に。災害が起きた当初は皆が頑張ろうと自殺が減るがしかし、その後自殺が増えることが知られている。
会社がつぶれた。大学中退。力尽きてしまう。支援が入り立ち上がれる人と、立ち上がれない人。災害はすべての要因が起きる。
自殺の動機
遺書がある場合。警察が調査している。
一番多いのは健康問題が一番多い。
経済問題は入り口問題。最後は健康問題、身も心もボロボロになる。もう駄目だと思ってしまう。
自殺手段・ホットスポット・SNSの問題
自殺多い場所、観光地なのでフェンスなど作れない。ちょっとでも足を踏みはずと自殺できる。自殺へのアクセス性が高い。
日本では大量服薬で病院に運ばれるケースが多い。それは薬へのアクセスが高い。病院で簡単に薬を出してもらえる。蓄えてすぐに飲めるのでアクセス性が高い。米国は銃の自殺が高い。銃へのアクセス性が高いから。都会では電車への飛び込みが多い。駅のホームフェンスができるとアクセス性が低下して自殺が減る。
メディナ・ネット報道・SNS 松田聖子さんの娘が亡くなった。こういう時自殺者が増える。
「自殺とメディア報道」の勉強会を行った。
自殺か?と過剰報道が問題
大手の新聞は控えるようになってきた。
写真報道雑誌が芸能人の自殺をいっせいに報道した。
女性のタレント(岡田有希子さん)の自殺時、場所の報道も、若者の自殺が増えた。
本庄中3自殺の報道。
練炭自殺がネットで問題になった。
日本は切腹文化があり、死んで責任を取る人もいる。
人には、”自殺をする権利”があるのでしょうか?
考えてみていただきたい。隣の人と話し合っていただきたい。
相談電話で「何で死んではいけないのですか?」と尋ねられることがあるかと。
相談電話、対人支援で「なぜしんではいけないか」
⇒なぜ自殺を防がなければならないのか?
自殺を考えている状態がどのような状況かを考える。
問題は精神疾患に罹っているので問題になっている。
その人の持っている能力が低下している。安楽死を認める国でも精神疾患を持っている人は認められていない。
8割の人は精神疾患に罹ってもよくなっている。
治療して良くなると、「ありがとうございました」「あのときは考えが足りませんでした」
「自殺しなくてよかったです」
なぜ自殺してはいけないと質問されたら、でもね・・・として話をしている。
③自殺対策のすすめ方と実践活動
1次予防 事前の取り組み 啓発と教育
2次予防 自殺を食い止める リスクアセスメント、危機介入・治療
3次予防 遺された人への支援とケア、群発自殺の予防、心理学的剖検
ゲートキーパー「門番」
①心の健康が大切
②気づいてあげられる人
③声をかける
うつ病は見つけ難い。
うつ病の症状(9個の内5つ以上)
PHQ-9 (Patient Health Questionnaire-9)日本語版 (2018)
https://www.mizenclinic.jp/blog/depression-3/
1 物事に対してほとんど興味がない、 または楽しめない
2 気分が落ち込む、憂うつになる、 または絶望的な気持ちになる
3 寝付きが悪い、途中で目がさめる、 または逆に眠り過ぎる
4 疲れた感じがする、または気力がない
5 あまり食欲がない、または食べ過ぎる
6 自分はダメな人間だ、人生の敗北者だと気に病む、 または、自分自身あるいは家族に申し訳がない と感じる
7 新聞を読む、またはテレビを見ることなどに 集中することが難しい
8 他人が気づくぐらいに動きや話し方が遅くなる、 あるいは反対に、そわそわしたり、落ちつかず、 ふだんよりも動き回ることがある
9 死んだ方がましだ、あるいは自分を何らかの方法 で傷つけようと思ったことがある
これらがほとんど一日中、頻繁、それが2週間以上続いている。
人生これまでで落ち込むことはなかった人はいらっしゃらないと思います。
それが身体の症状にでる。自律神経の調整が上手く行かない。
病院に行っても検査しても分からない。メンタル不調が身体の症状として出ている。
気持ちが落ち込むのは普通
弱音を吐かないなどで、身体の症状が前に出る。
がまんは、傍から見ても分かりにくい。そこでゲートキーパーが重要になる。
ゲートキーパー養成研修会(北海道)
いのちの電話と協力してやっている。
①自殺の基礎知識
知識だけでは難しい。
②動画を見て研修やスキルアップ研修(ロールプレイなど)
自殺未遂した人に尋ねている。
そういう人は悪循環になっている。
生活の問題や⇔精神疾患 悪循環
自殺対策が重要と訴えるためには基礎データが必要。
横浜市大モデル
基本方針 4つの基本認識(①自殺は、その多くが追い込まれた末の死である。②自殺は、その多くが社会的な取組で防ぐことのできる問題である。③自殺を考えている人は何らかのサインを発していることが多い。④年間自殺者数は減少傾向にあるが、非常事態はいまだ続いている。)
①見立て
②ケース・マネージャーの研修
③心理教育(病気、自殺プロセス)
④定期面接;個別者に配慮した支援介入
「自殺対策のための戦略研究・ACTION―J」
を国と21施設、約390名の医療者等が参加(2015年)
わかったこと
必須項目
・自殺念慮と自殺の危険度
・受療状況
・生活状況
・社会資源の利用状況
入院中と退院後、少なくとも1.5年、アセスメントとプランニングに基づく支援を繰り返し個別性を重視した支援を継続により、その後の自殺が減ることがわかった。
これについては厚労省が記者会見した。また海外の雑誌に掲載した。
これが国の事業になった。ケース・マネージャーの養成。診療報酬に追加された。
これをやっているのは日本しかない。
熊本では1病院。全国で60ほど。北海道では4施設。
世界でも驚きの研究。コペンハーゲンでも講演した。
地域自殺対策がとても対策
未遂者は家に帰る。地域でしっかりケアがないと難しい。
北海道は自殺が多い。道民も知らない。
北海道は良いところと思われている。
自殺率では東北が多いが北海道も多い。
東北地域で取り組みを行っている。
しかし、北海道では取り組みをやっていない。
別海町(北海℃南東、人口1万少し、牛が20万頭)
横浜市栄区の取り組みで3年間自殺者を減らした。なかなか3年連続で自殺者を減らすのは難しい。自殺者数は一般に上下する。
北海道に行ってがっかり。500万人の半分が札幌市に住んでいる。
大学病院は地域にいかに医師を派遣するかで必死になっている。自殺啓発まで回っていなかった。
そこで下記を始めた。
・地域の方に勉強会を始める
・行政の人も勉強会
・対人支援する人の勉強会
⇒そしてネットワークを作って活動する。
別海町における自殺対策
・啓発研修会
・役場職員、民生委員児童委員
・ゲート・キーパーのロールプレイ
・看護職を対象として研修会
・事例検討会 亡くなった人の事例研修も行った
防げたと思えた事例だった。
困っている事例を行っている。解決していくための段取りがある。
必ず解決できる話合いを行っている。
住民調査、なぜこの地域の自殺がどうして多いのか?など
・自殺を防げると思っている人が少ない。
・自殺考えている人は相談しない。
キーホルダーを研修会に参加した人に配っている。バッグにつけてもらうとその人が研修に出た人だとわかる。
まとめに変えて
・予測因子、予防可能な自殺がある。
・自殺に関する正しい知識を学び、理解する
・素手で立ち向かうのは止めましょう。
・「お願い」をしない。「心が大事」皆さんが自分たちのためにやっている。
自殺だめというのではなく、命が大切だと伝えている。
感想;
350名の参加(リモート250名)とリモートの参加者が多かったです。
自殺者を減らす取り組みはいろいろな視点からの取り組みが必要であり、地道な取り組みも大切だと改めて認識しました。
昨年度のいのちの電話シンポジウムで河西先生と熊本いのちの電話が接点ができ、今回の依頼につながったそうです。
なぜ自殺してはいけないか?
自殺する権利はないのか?
に対して、自殺したいと思っているのは既に精神疾患を病んでいたり視野狭窄になっているから、健康な状態で考えることが出来ていないから、そこで自殺はしないで、メンタルが回復したら自殺を考えないとのニュアンスでした。
自殺ではなくても、「人生何のために生きるのか?」「生きる価値はあるのか?」については難しい問題ですが、それにヒントを与えてくれる一つがロゴセラピーのように思います。いつでも死ねるのですから、今死なずにそれを考えて見ることがあっても良いように思います。