平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ローズマリーの赤ちゃん アイラ・レヴィン

2007年05月27日 | 小説
 モンスターや殺人鬼を出すだけが恐怖ではない。
 「死の接吻」が見事だったため読んでみたが、この作品もすごい。
 アイラ・レヴィンの小説は巧みだ。

 主人公は結婚したばかりのローズマリー。
 夫のガイは役者。新居を探していたが、ブラムフォードという18世紀からある由緒ある建物に空きが出て、他の物件の契約をキャンセル、ブラムフォードに住むことになる。ローズマリーはブラムフォードに住むことに憧れていたのだ。
 しかし、これが恐怖の始まり。
 もしブラムフォードに住まなかったら悲劇は起こらなかったという運命の皮肉も感じさせる。

 そして作品は少しずつ恐怖の度合いを高めていく。
 恐怖を積み重ねていく。
★まずはブラムフォードの過去の忌まわしい事件。
 「人を喰う癖があるトレンチ姉妹」「悪魔を呼び出すことに成功したと言った魔術師アドリアン・マルカトー」
★移り住んだ部屋の奇妙な家具のレイアウト。
 建物自体が恐怖を匂わせる。
 これが恐怖の積み重ねの第一段階。
 第二段階は人だ。
★隣人のキャスタベット夫妻。
 その夫妻が慈善で育てていたテリーという娘が自殺する。テリーの死は麻薬中毒だったということで片づけられるが。
 またローズマリーは、キャスタベットの妻ミニーからタニスという植物から作られた魔除けのネックレスをもらう。それはローズマリーには異様な匂いのするネックレスですぐに引き出しにしまってしまうが、この匂いということで恐怖の予感を感じさせる所がうまい。
 人に拠る恐怖の描写はさらに続く。
★夫ガイの変貌
 ローズマリーの夫ガイは最初キャスタベット夫妻と時間を共有することを嫌がるのだが、次第に夫妻の所に行くようになる。それと機を同じくして、ガイと役を争っていたライバルの役者が失明するという事件が起き……。
 そして人格が変貌していく。
 何とローズマリーをクスリで眠らせて、そのままセックスしたのだ。ローズマリーは意識を失い、悪夢を見る。目が覚めるとローズマリーの体にはガイの爪によって傷つけられた痕。
★医師サパースタイン
 こんな状況下、ついに妊娠したローズマリー。
 そこでキャスタベット夫妻によって紹介された産婦人科の医師はサパースタイン。高名な医者らしい。しかし、サパースタインは「出産までの過程は人によって違う。医学書や人の意見に惑わされるな」と告げる。
 実際、ローズマリーの10月10日は苦痛の連続で、なぜか生肉を欲して食べたりする。医師サパースタインはそういうこともあると言って取り合わない。ローズマリーを心配した友人は他の医師に相談しろと言うが、その翌日には痛みは治まり、ローズマリーはサパースタインを信じる様になる。
 そして恐怖の第三段階。
 事件と明らかになる真実。
★友人ハッチの急病と死
 ローズマリーの友人ハッチは隣人キャスタベット夫妻のことを調べ、ある事実を知る。それをローズマリーに伝えようとするが、急病で倒れてそのまま死んでしまう。
 そしてローズマリーはハッチの残した伝言から推理してある事実を知るが、それはおそるべきもの。
 以下、ネタバレ。

 キャスタベット夫妻は悪魔崇拝主義者で、ローズマリーに悪魔の子を宿そうとしていた。夫のガイは夫妻に取り込まれ、医者のサパースタインも同じ悪魔主義者だった。ガイのライバルの役者が失明したり、友人のハッチが死んだのも彼らの呪術のせい。ローズマリーが生肉を好んで食べたのは、お腹に悪魔の子がいるため。また別の医師に診せる時に痛みがなくなったのは、悪魔の子がまずいと思ったから。

 ラストはローズマリーと生まれた子供の対面だ。
 子供は普通の容姿をしているのだが、目を開くと瞳が黄色。
 このショック!!
 徐々に恐怖が積み重なっていってついに迎える最大の恐怖!!
 実に巧みなホラー小説だった。


コメント
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