今回は〝起業家〟の直虎(柴崎コウ)だった。
土地の開墾や綿の栽培で人手が足りず、他家から農民を借りようとする時、直虎はこう言う。
「やってみなければわからぬ!」
困難なことでもまずやってみようとするのが起業家なんですよね。
失敗すれば、別の方法を考えればいい。
人の意見を取り入れるのも起業家の資質のひとつで、直虎は旅の男(柳楽優弥)に「人を買う」という話を聞くと、すぐに走り出した。
直虎はそんなバイタリティあふれる領主なのだ。
………………
だが一方で、脚本の森下佳子さんは主人公を万能には描かない。
まずは政次(高橋一生)への反発。
「井伊は但馬からは絶対に百姓を借りぬ!」
「政次だけはイヤじゃ!」
と、だだをこねる子供のよう。
政次が出した<人集め>のアイデアも拒絶し、中野直之(矢本悠馬)にたしなめられる。
「直虎様は聞いたことのない話こそやってみようと思う方ではないのですか?」
すぐに落ち込んだりもする。
政次のアイデアが実を結んで、たくさんの百姓が集まってくると、
「労少なくして実を結ぶ策」を考えた政次に劣等感を抱き、井伊家の後見人は政次の方がふさわしいのではないかと、悩み始める。
直虎は発展途上で、まだまだ頼りない領主様なのだ。
………………
だが、直虎には政次にはないものがある。
ひとつはバイタリティ。
直虎は目的を実現するためにかけずり回り、頭を下げる。
ふたつめは常識に縛られないこと。
そんな直虎を評して政次は言う。
「貸してくれるかもしれぬと考えるのが、あのおなごのすることだ」
みっつめは吸収力。
先程の旅の男の件もそうだが、南渓和尚(小林薫)の指摘も腑に落ちた様子。
「足らぬ知恵なら借りてくればどうじゃ?」
「(家臣を上手く活用するのは)領主としての腕の見せ所じゃ」
最後は人望。
農民たちは直虎を慕っているし、中野直之も奥山六左衛門(田中美央)も頼りない直虎を支えようと思っている。政次にはこれがない。
ちなみに今回、僕が好きなのは、戦場で直虎を守れるのかと悩む直之に対して六左衛門が言ったせりふだ。
「まあ、それも考えていきましょうよ、皆で」
おそらく井伊家は、みんなで力を合わせて戦国の世を生きていくのだろう。
突出したリーダーがいるわけではなく、お互いが足りないところを補い合ってがんばっていく。
何となく、この作品のスタイルが見えてきた。
後半で、綿の芽が出たのは、直虎の奮闘が何とか形をなしてきたという象徴だろう。
種をまけば芽が出る。
その芽が育って、きれいな花や大きな実を結ぶかはこれからの話だが、直虎の奮闘が<家臣と領民が力を合わせて生きていくという井伊家>を生んだことは確かだろう。
土地の開墾や綿の栽培で人手が足りず、他家から農民を借りようとする時、直虎はこう言う。
「やってみなければわからぬ!」
困難なことでもまずやってみようとするのが起業家なんですよね。
失敗すれば、別の方法を考えればいい。
人の意見を取り入れるのも起業家の資質のひとつで、直虎は旅の男(柳楽優弥)に「人を買う」という話を聞くと、すぐに走り出した。
直虎はそんなバイタリティあふれる領主なのだ。
………………
だが一方で、脚本の森下佳子さんは主人公を万能には描かない。
まずは政次(高橋一生)への反発。
「井伊は但馬からは絶対に百姓を借りぬ!」
「政次だけはイヤじゃ!」
と、だだをこねる子供のよう。
政次が出した<人集め>のアイデアも拒絶し、中野直之(矢本悠馬)にたしなめられる。
「直虎様は聞いたことのない話こそやってみようと思う方ではないのですか?」
すぐに落ち込んだりもする。
政次のアイデアが実を結んで、たくさんの百姓が集まってくると、
「労少なくして実を結ぶ策」を考えた政次に劣等感を抱き、井伊家の後見人は政次の方がふさわしいのではないかと、悩み始める。
直虎は発展途上で、まだまだ頼りない領主様なのだ。
………………
だが、直虎には政次にはないものがある。
ひとつはバイタリティ。
直虎は目的を実現するためにかけずり回り、頭を下げる。
ふたつめは常識に縛られないこと。
そんな直虎を評して政次は言う。
「貸してくれるかもしれぬと考えるのが、あのおなごのすることだ」
みっつめは吸収力。
先程の旅の男の件もそうだが、南渓和尚(小林薫)の指摘も腑に落ちた様子。
「足らぬ知恵なら借りてくればどうじゃ?」
「(家臣を上手く活用するのは)領主としての腕の見せ所じゃ」
最後は人望。
農民たちは直虎を慕っているし、中野直之も奥山六左衛門(田中美央)も頼りない直虎を支えようと思っている。政次にはこれがない。
ちなみに今回、僕が好きなのは、戦場で直虎を守れるのかと悩む直之に対して六左衛門が言ったせりふだ。
「まあ、それも考えていきましょうよ、皆で」
おそらく井伊家は、みんなで力を合わせて戦国の世を生きていくのだろう。
突出したリーダーがいるわけではなく、お互いが足りないところを補い合ってがんばっていく。
何となく、この作品のスタイルが見えてきた。
後半で、綿の芽が出たのは、直虎の奮闘が何とか形をなしてきたという象徴だろう。
種をまけば芽が出る。
その芽が育って、きれいな花や大きな実を結ぶかはこれからの話だが、直虎の奮闘が<家臣と領民が力を合わせて生きていくという井伊家>を生んだことは確かだろう。