『軍事的勝利は麻薬に似ている。
イゼルローン占領という甘美な麻薬は、人々の心に潜む好戦的幻覚を一挙に花開かせてしまった。
冷静であるべき言論機関までが、異口同音に「帝国領内への侵攻」を呼号している。
政府の情報操作も巧みなのであろうが……』
イゼルローン要塞占拠で自由惑星同盟は一気に帝国侵攻に傾く。
かつて日本が、ハワイを攻撃して甚大な被害を与え、シンガポールを占領して、戦線を拡大していった時のように。
人間の欲望というのは果てしない。
ひとつのことが成し遂げられると、もっともっとと求めてしまう。
最後の『政府の情報操作も巧みなのであろうが……』という一文も効いている。
世論は権力者の情報操作に拠っても作られるのである。
さて、ここでアンドリュー・フォーク准将が登場する。
ヤンにライバル意識を持つフォークは、帝国侵攻に慎重なヤンの意見に反対する。
「戦いには機というものがあります」
「敵を過大評価し、必要以上に恐れるのは、武人としてもっとも恥ずべきところ。
まして、それが味方の士気を削ぎ、その決断と行動を鈍らせるとあっては、意図すると否とにかかわらず、結果として利敵行為に類するものとなりましょう。
どうか注意されたい」
「そもそも、この遠征は専制政治の暴圧に苦しむ銀河帝国二五〇億の民衆を解放し救済する崇高な大義を実現するためのものです。
これに反対する者は結果として帝国に味方するものと言わざるを得ません」
「たとえ敵に地の利があり、大兵力あり、あるいは想像を絶する新兵器があろうとも、それを理由として怯むわけにはいきません。
吾々が解放軍、護民軍として大義に基づいて行動すれば。帝国の民衆は歓呼として吾々を迎え、進んで協力するでしょう」
フォークの主張は詰まるところ『精神論』だ。
最後の言葉は特にひどい。
「地の利」「大兵力」「新兵器」──これらこそが戦争で一番重要なものではないか?
あとは「兵站」。
しかし、人はこうした勇ましくて美しい言葉に酔い、動かされてしまう。
仮に現在の日本がどこかの国と戦争して、『戦争反対』を唱えた場合、上記のような言葉が返って来るだろう。
・戦いには機がある。
・反対を唱えるのは利敵行為だ。
・大義はわれわれにある。われわれは解放軍だ。
これに対してヤンは現実的だ。
帝国の人民が現実の平和と生活の安定より空想上の自由と平等を求めているという考えは期待であって予測ではない。
そのような要素を計算に入れて作戦立案をしてよいわけがない。
そうなんですよね。
人々が求めているのは日々の平和と生活の安定。
自由とか平等といったイデオロギーは二の次。
民主主義国でも抑圧や貧困はあり、民主主義は名ばかりで形骸化してる場合もある。
フォークは軍人だが、権力者が自分に酔い、美しい言葉、勇ましい言葉を口にした時は注意した方がいい。
自由惑星同盟の帝国侵攻の動機はこのように無責任で根拠のないものだった。
これによって自由惑星同盟は破滅に向かっていく。
イゼルローン占領という甘美な麻薬は、人々の心に潜む好戦的幻覚を一挙に花開かせてしまった。
冷静であるべき言論機関までが、異口同音に「帝国領内への侵攻」を呼号している。
政府の情報操作も巧みなのであろうが……』
イゼルローン要塞占拠で自由惑星同盟は一気に帝国侵攻に傾く。
かつて日本が、ハワイを攻撃して甚大な被害を与え、シンガポールを占領して、戦線を拡大していった時のように。
人間の欲望というのは果てしない。
ひとつのことが成し遂げられると、もっともっとと求めてしまう。
最後の『政府の情報操作も巧みなのであろうが……』という一文も効いている。
世論は権力者の情報操作に拠っても作られるのである。
さて、ここでアンドリュー・フォーク准将が登場する。
ヤンにライバル意識を持つフォークは、帝国侵攻に慎重なヤンの意見に反対する。
「戦いには機というものがあります」
「敵を過大評価し、必要以上に恐れるのは、武人としてもっとも恥ずべきところ。
まして、それが味方の士気を削ぎ、その決断と行動を鈍らせるとあっては、意図すると否とにかかわらず、結果として利敵行為に類するものとなりましょう。
どうか注意されたい」
「そもそも、この遠征は専制政治の暴圧に苦しむ銀河帝国二五〇億の民衆を解放し救済する崇高な大義を実現するためのものです。
これに反対する者は結果として帝国に味方するものと言わざるを得ません」
「たとえ敵に地の利があり、大兵力あり、あるいは想像を絶する新兵器があろうとも、それを理由として怯むわけにはいきません。
吾々が解放軍、護民軍として大義に基づいて行動すれば。帝国の民衆は歓呼として吾々を迎え、進んで協力するでしょう」
フォークの主張は詰まるところ『精神論』だ。
最後の言葉は特にひどい。
「地の利」「大兵力」「新兵器」──これらこそが戦争で一番重要なものではないか?
あとは「兵站」。
しかし、人はこうした勇ましくて美しい言葉に酔い、動かされてしまう。
仮に現在の日本がどこかの国と戦争して、『戦争反対』を唱えた場合、上記のような言葉が返って来るだろう。
・戦いには機がある。
・反対を唱えるのは利敵行為だ。
・大義はわれわれにある。われわれは解放軍だ。
これに対してヤンは現実的だ。
帝国の人民が現実の平和と生活の安定より空想上の自由と平等を求めているという考えは期待であって予測ではない。
そのような要素を計算に入れて作戦立案をしてよいわけがない。
そうなんですよね。
人々が求めているのは日々の平和と生活の安定。
自由とか平等といったイデオロギーは二の次。
民主主義国でも抑圧や貧困はあり、民主主義は名ばかりで形骸化してる場合もある。
フォークは軍人だが、権力者が自分に酔い、美しい言葉、勇ましい言葉を口にした時は注意した方がいい。
自由惑星同盟の帝国侵攻の動機はこのように無責任で根拠のないものだった。
これによって自由惑星同盟は破滅に向かっていく。