平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

映画「燃えよ剣」~政治やイデオロギーは人や組織を弱くする

2024年12月26日 | 邦画
 新選組・土方歳三(岡田准一)の物語である。

 剣・和泉守兼定を手に入れるくだりが面白い。
 刀商人から渡された剣を鞘から抜いて土方は言う。
「なんだ、錆びた刀じゃないか」
 すると商人。
「この刀は三百年間、あなたさまを待っていたのです。
 これまで多くの方がこの剣を鞘から抜こうとしましたが、抜けませんでした。
 しかし、あなたさまは抜きました。
 あなたさまはこの剣に新しく選ばれた方なのです」

 歴史ドラマでありながら伝奇的なエピソードだ。
 この和泉守兼定。
『ゴールデンカムイ』では土方歳三は生きていて、この刀を取り戻すために銀行を襲う。
 この剣を手にすることで土方は力を手に入れることが出来る。

 新選組と剣の関係はいろいろあって、
・近藤勇は「虎徹」
・沖田総司は「菊一文字」
・斎藤一は「鬼神丸国重」

 そして徳川家を滅ぼす刀は「村正」
 桑名の刀工集団・村正がつくる刃と徳川家には因縁があって、ネット情報に拠ると──
・妻・築山殿(瀬名)を処刑して斬った刀は村正
・関ヶ原の戦いの際、家康が怪我をした槍は村正
・大阪の陣で真田幸村が家康に投げつけた短刀は村正

 歴史の背景には「刀」の力が存在していたのかもしれない。
 ……………………………………………

 さて、本題。

 土方歳三は新選組を「日本一のケンカ集団」「武士の集団」にしようとする。
 そのことしか考えていない。
 しかし、近藤勇(鈴木亮平)、芹沢鴨(伊藤英明)、山南敬助(安井順平)らは違う。
「尊皇」「攘夷」といったイデオロギーに振りまわされ、
 帝、公家、徳川、薩摩、長州といった存在に翻弄される。

 その結果、新選組は弱体化する。
 確かに京都守護職・松平容保(尾上右近)の下で、京の不逞の輩と戦っている時は強かった。
 正しいことのために戦っているという自負があり、勢いもあった。
 だが、薩長が力を持ち、錦の御旗が掲げられ、朝敵になると動揺し、心が折れる。
 政治的な意見の対立で組織が分裂する。
 芹沢鴨のように権力を得た結果、カネや女に手を出して堕落するものもいる。

 政治やイデオロギー。
 土方はこれらにとらわれると、人や組織はブレて弱くなると考えている。
 土方がこだわっているのは「武士」であること。
「武士」としてどう生き死ぬかということ。

 人の生き方はさまざまであるが、土方歳三の生き様はストイックで潔い。

 ネタバレになるので具体的に書かないが、
 ラスト、土方の戦いぶりを温かい目で見ている人物たちが現れる。
 このシーンはちょっと泣ける……。


※関連動画
 映画『燃えよ剣』予告編(YouTube)

コメント
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