平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

スギ薬局会長夫妻のワクチン先行接種で、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思い出した

2021年05月13日 | 事件・出来事
 スギ薬局グループ・会長夫妻のワクチン接種の働きかけ。
 茨城県城里町の42歳の町長らの先行ワクチン接種。

 コロナは様々なものをあらわにする。

 僕は芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を退屈な小説だと思っていたが、
 こういう現実を見せつけられると、作品の見え方が違って来る。
 スギ薬局の会長夫妻や城里長の町長は、天上から降りてきた糸に掴まり自分だけが助かろうとした『蜘蛛の糸』のカンダタである。

 宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』には、大西洋の客船(タイタニック?)の沈没事故で死んだ少女と弟と家庭教師が登場する。
 少女と家庭教師は救命ボートに乗るのを他人に譲り、船と共に沈んでいく。
 そうすることが神に祝福され、天国にめされる道だと信じている。
 少女の弟はその意味がわからず、現世に執着してダダをこねる。
 主人公のジョバンニは弟に味方して「そんな神様、ウソの神様だ」と少女に反論する。
 ここで宮沢賢治は迷っている。
 自らが犠牲になる死と信仰は正しいのか? と。

 いずれにしても宮沢賢治と芥川龍之介が人間のエゴイズムに目を向けたことは確かだ。
 宗教や信仰にも着目していて、信仰のなき人間のエゴイズムや苦悩についても描いている。

 神が死んで人々は行動の規範を失った。
 日本人はもともと宗教意識が希薄で、
「道徳」とか「恥」とか「周囲の目」とかに縛られて生きていくことが多い。
 今回のスギ薬局の会長夫妻や城里町の町長らはそれらをなくしてしまったのだろう。
 スギ薬局の会長夫妻は醜い言い訳をしてるし、
 城里町の町長は「何ら問題ない」と開き直っているらしいし。
 ………………

 あと驚くべきは、彼らに対する擁護発言があることだ。

「スギ薬局会長夫妻の市への貢献度を考えれば当然」
「税金を多く納めているんだから優先されるのは当然」
「町長らはコロナの最前線で戦っているから先行接種は当然」

 見事な奴隷根性だな。
「上級国民」というものがあるとすれば、上級国民様はほくそ笑んでるぞ。
 何しろ自分の特権を下級国民が積極的に支持してくれるのだから。
 下級国民が積極的に自分の権利を放棄しているのだから。
 心の中で、バーカ! と思ってるに違いない。

 さて、この状況を芥川や宮沢賢治が見たら、何を思うだろう?


※追記
 城里町の上遠野町長は、接種したのは余ったワクチンであり、接種会場の管理責任者の私も医療従事者に準ずる、と説明している。
 厚生労働省のホームページには、『ワクチンの優先接種の対象となる「医療従事者等」には、「自治体等の新型コロナウイルス感染症対策業務で、新型コロナウイルス感染症患者・疑い患者に頻繁に接する業務を行う職員」も含まれる』と書かれている。
 ワクチンが余っていたのなら有効に使うべきだが、なぜ町長?
 接種会場の職員にも当然、接種されてるんだろうね?
 厚労省はどこまでが「医療従事者等」なのか、を明確にすべきだろう。
 現に東京・多摩市では市職員800人のうち300人が接種したとか。
 【独自】東京都多摩市職員約800人中、300人超がワクチン優先接種 「多すぎる」専門家も疑問視 (アエラ・ドット)
 300人は多過ぎないか?
 

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2 コメント

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従属意識と日本人 (象が転んだ)
2021-05-14 02:28:52
日本人の古来から続く従属意識がこうした無能な上級市民と作ったんでしょうね。
ワクチン接種にしても、体制や供給が整ってないのにバカみたいに群がる日本人。一方で、1億円の懸賞金を賭けられても躊躇するアメリカ人。
権力に対する考え方も違うんでしょうね。
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ここ数年で壊れてしまった? (コウジ)
2021-05-14 06:59:21
象が転んださん

いつもありがとうございます。
東日本大震災の時は、秩序を保って列をつくる日本人が賞賛されましたが(単なる村意識?)、ここ数年で壊れてしまった感じがしますね。

アメリカでは、おっしゃるとおり、あの手この手でワクチン接種を受けさせようとしている。
権力に対する考え方や個の意識が違うんでしょうね。
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