アニメ『ち。-地球の運動について-』(NHK・土曜23時45分ほか)
この作品はさまざまなことを考えさせてくれる。
作品は──
15世紀のヨーロッパで禁じられた地動説を命がけで研究する人間たちの生き様と信念を描いた物語だ。
この時代、地動説を唱えたり、研究して証明しようとすれば「異端」の審判を下され、
拷問・火あぶりにされる。
でも「地動説」を追い求めずにはいられない。
第1章の主人公ラファウ(CV坂本真綾)は大学で神学を学ぶ予定の秀才だったが、
地動説を知って考える。
「地動説の方が惑星の運行をきれいに証明できる」
これに比べて天動説は美しくない。
だからタファウは疑問を持つ。
「神がこんなに美しくない世界をつくるだろうか?」
ラファウは冷徹な合理主義者だ。
だから地動説を信じていないと平気でウソを言えるし、
大学で神学を学ぶふりをしながら、地動説の研究をしようとしている。
一方で、こんな合理主義者のラファウだから非合理なものを否定せずにはいられない。
非合理なもの──具体的にはキリスト教だ。
キリスト教は教える。
「異端者は悪魔に取り憑かれている」
「人から悪魔を追い出すには火あぶりにするしかない」
「火あぶりにすれば人は灰になるが、灰になった人間は肉体を失っているので、
最後の審判の時、復活できない」
ラファウはこれを非合理だと否定する。
キリスト教が教える「絶対神による救い」を拒絶する。
彼は共感するのはギリシャの哲学者の言葉だ。
ソクラテス、いはく、
「誰も死を味わっていないのに誰もが死を悪であるかのように決めつけている」
エピクロス、いはく、
「われわれのある所に死はない。死のある所にわれわれはない」
セネカ、いはく、
「生は適切に活用すれば十分に長い」
ソクラテスたちは理性的に生と死を考え、怖れることなく乗り越えている。
ラファウもこれに同意して、やすやすと死を乗り越える。
ラファウはさらに異端審問官のノヴァク(CV津田健次郎)にはこんなことを語る。
「あなたが相手にしている敵は僕でも異端者でもない。
想像力であり好奇心であり、畢竟、それは知性だ。
これは伝染病のように拡がり、一組織が手なずけられるほど可愛げのあるものではない」
ラファウが主張するのは──想像力・好奇心・理性・知性の素晴らしさだ。
これらの揺るぎない堅固さだ。
そして「感動」。
地動説に感動したラファウはこの感動を誰かに伝えずにはいられない。
自分の研究成果を後世の人間に残さずにはいられない。
…………………………………………
・天動説と地動説
・宗教と科学
・キリスト教の死生観とギリシャの死生観
・理性、知性の復権
『ち。-地球の運動について-』に込められているテーマはさまざまだ。
僕は最近、死についていろいろ考えているから、
ラファウが死をどう乗り越えたかはとても興味深かった。
ラファウのとった選択に心がザワザワした。
原作者の魚豊氏はこの作品についてこう語っている。
『天動説から地動説へ移行する、知の感覚が大きく変わる瞬間がいいんですよね。
哲学と結びついて、「コペルニクス的転回」や「パラダイムシフト」って言葉が生まれるくらいの衝撃を与えました。
その瞬間が面白くて、漫画にしようと決意しました』
何かを求めて見ることで、この作品は見る者に「パラダイムシフト」をもたらすと思う。
現在は第3話まで放送。
第1章が終了したばかりなので、まだ間に合う。
多くの人に見てもらいたい。
この作品はさまざまなことを考えさせてくれる。
作品は──
15世紀のヨーロッパで禁じられた地動説を命がけで研究する人間たちの生き様と信念を描いた物語だ。
この時代、地動説を唱えたり、研究して証明しようとすれば「異端」の審判を下され、
拷問・火あぶりにされる。
でも「地動説」を追い求めずにはいられない。
第1章の主人公ラファウ(CV坂本真綾)は大学で神学を学ぶ予定の秀才だったが、
地動説を知って考える。
「地動説の方が惑星の運行をきれいに証明できる」
これに比べて天動説は美しくない。
だからタファウは疑問を持つ。
「神がこんなに美しくない世界をつくるだろうか?」
ラファウは冷徹な合理主義者だ。
だから地動説を信じていないと平気でウソを言えるし、
大学で神学を学ぶふりをしながら、地動説の研究をしようとしている。
一方で、こんな合理主義者のラファウだから非合理なものを否定せずにはいられない。
非合理なもの──具体的にはキリスト教だ。
キリスト教は教える。
「異端者は悪魔に取り憑かれている」
「人から悪魔を追い出すには火あぶりにするしかない」
「火あぶりにすれば人は灰になるが、灰になった人間は肉体を失っているので、
最後の審判の時、復活できない」
ラファウはこれを非合理だと否定する。
キリスト教が教える「絶対神による救い」を拒絶する。
彼は共感するのはギリシャの哲学者の言葉だ。
ソクラテス、いはく、
「誰も死を味わっていないのに誰もが死を悪であるかのように決めつけている」
エピクロス、いはく、
「われわれのある所に死はない。死のある所にわれわれはない」
セネカ、いはく、
「生は適切に活用すれば十分に長い」
ソクラテスたちは理性的に生と死を考え、怖れることなく乗り越えている。
ラファウもこれに同意して、やすやすと死を乗り越える。
ラファウはさらに異端審問官のノヴァク(CV津田健次郎)にはこんなことを語る。
「あなたが相手にしている敵は僕でも異端者でもない。
想像力であり好奇心であり、畢竟、それは知性だ。
これは伝染病のように拡がり、一組織が手なずけられるほど可愛げのあるものではない」
ラファウが主張するのは──想像力・好奇心・理性・知性の素晴らしさだ。
これらの揺るぎない堅固さだ。
そして「感動」。
地動説に感動したラファウはこの感動を誰かに伝えずにはいられない。
自分の研究成果を後世の人間に残さずにはいられない。
…………………………………………
・天動説と地動説
・宗教と科学
・キリスト教の死生観とギリシャの死生観
・理性、知性の復権
『ち。-地球の運動について-』に込められているテーマはさまざまだ。
僕は最近、死についていろいろ考えているから、
ラファウが死をどう乗り越えたかはとても興味深かった。
ラファウのとった選択に心がザワザワした。
原作者の魚豊氏はこの作品についてこう語っている。
『天動説から地動説へ移行する、知の感覚が大きく変わる瞬間がいいんですよね。
哲学と結びついて、「コペルニクス的転回」や「パラダイムシフト」って言葉が生まれるくらいの衝撃を与えました。
その瞬間が面白くて、漫画にしようと決意しました』
何かを求めて見ることで、この作品は見る者に「パラダイムシフト」をもたらすと思う。
現在は第3話まで放送。
第1章が終了したばかりなので、まだ間に合う。
多くの人に見てもらいたい。
コペルニクスとガリレオも考えられますが、前者は宗教上の理由から、後者はケプラーの第1と第2の法則を受け、地動説を唱えました。
でもアニメのタイトルからすれば、コペルニクス(「天体の回転について」なんでしょうか。
但し、地動説の決定打と言えば、ケプラーの第3法則から万有引力を発見したニュートンですが、こうした自然科学を題材にしたアニメには、多くの子供達に興味を持ってほしいですね。
わたしは海外には縁のない人間ですが、いろいろ読んだり聞いたりした印象では、今の21世紀前半の時代、アメリカ人よりもヨーロッパ人(西ヨーロッパ人)の方が、キリスト教にうまく向き合えているような気がします。
アメリカ人の熱心なクリスチャンの中には、聖書を絶対視して「世界は7日間でつくられた」「世界は丸くない」「進化論は間違い」と考えるような人も、ときどき現れるわけですが、ヨーロッパ人の場合、そこまで極端な人は少ないという印象です。
理由として、ヨーロッパは地続きで、ほかの地域の文化が入って来やすいということがあるんでしょう、多分ですけど。
「地政学者」のおじさんたちは、アメリカは海洋国家だと言いますが、個人的には大陸的要素も濃いと思います。アメリカの内陸部になると、ほかの文化と接触する機会も少ないわけで、閉鎖的な「田舎」の感じになるようです。
もしかして、キリスト教にもイスラムのような原理主義的なものがあって、そういった信者が「我々の住むセカイは丸くない」と主張しているのかもしれません。
ただ、あまり報道はされないですね。アメリカは文明国だから、そんな偏った考えはないんです、というのが日本の政府やマスコミの建前でしょうか。
もうひとつ、地動説というと、最近考えるのは「大気の薄さ」なんですね。
地球の直径は12000キロくらいなのに、大気圏の厚さは対流圏だけで考えると10キロあるかないかくらいですから、直径に比べればペラペラに薄いわけで「こんなペラペラの空気で、よくオレたち窒息しないな」と考えたりすることはあります。
またまたちょっと脱線しました。
教えていただき、ありがとうございます。
今作の登場人物は、地動説に関わったさまざまな人物を再構成して描かれているんでしょうね。
僕自身で言えば、ラファウが示した地動説の理論や数式がまったく理解できていません。笑
なので、宗教と科学や死生観の方に目が向いてしまします。
わかれば、すごく面白いんだろうな、とも思います。
この作品を入り口に、たくさんの人が天文学や数学や宗教や哲学に興味をもってもらえるといいですね。
いつもありがとうございます。
具体的には、トランプを支持している「キリスト教福音派」などを指すのでしょうか。
彼らが地動説を否定しているかどうかはわかりませんが、進化論などは目の敵にしているようですね。
つまり現代でも宗教と科学の対立はあるわけでして、「ち。」は昔の話ではないんですよね。
日本人は宗教に淡泊だと言われますが、神社本庁や統一教会などの考えが自民党政治に反映されています。
古谷経衡さんに拠ると、今や宗教系・組織系の自民党員は全党員の4割だとか。
だとすると、かなりの影響力。
時代の流れが変われば、宗教的なものが頭をもたげてくるかもしれませんね。
「ち。」に関しては、明日の放送を予約して、ぜひ見てみて下さい。