「坂の上の雲」第3話「国家鳴動」(前・後編)を見た。
海軍に入った真之(本木雅弘)は父が死去。
父に「勝ち負けの運は本当のいくさの時に取っておけ」と諭されてケンカをやめる。
陸軍の好古(阿部寛)はフランスの留学から戻り結婚。家庭を持つ。
正岡子規(香川照之)は肺病で喀血するが、何とか治まり、帝国大学をやめて
陸羯南(佐野史郎)が主催する新聞「日本」に就職する。
青年から大人へ。
それぞれが自分の道を歩んでいく。
大人になったのは日本という国家も同じだ。
維新で西洋化を進めた日本は列強が覇を競う世界という荒波に出て行く。
たとえれば、本格的な社会人デビューだ。もはや学生ではいられない。
……………………………………………………
日本という国家が最初に受けた荒波は朝鮮問題だった。
東学党の乱。
東学とは西学(キリスト教)に敵対する、儒教・仏教・道教の三教を合わせた新興宗教だ。
これが乱を起こし、政府軍を撃ち破り、韓国政府を揺るがした。
日本はこれに対して、朝鮮出兵を決めた。
出兵の表向きの理由は「日本の公館、居留民の保護」だが、
裏の理由としては「朝鮮を清国やロシアに取られてはまずい」という理由がある。
当時、政府の首脳は「朝鮮を取られたら、敵が喉もとに迫り、日本の防衛は成立しない」と
考えていた。
当時、朝鮮は一応独立国家であったが、清の属国化しており、
日本は、清が東学党の乱に乗して朝鮮を支配するのを怖れていた。
その結果が朝鮮派兵である。
この派兵をめぐる総理大臣・伊藤博文(加藤剛)と陸軍参謀次長・川上操六(國村隼)のやりとりが
興味深い。
清国と戦争になることを怖れる伊藤博文は大規模派兵に否定的だ。
一方、川上操六は──
「伊藤首相はゆるすまい。かれはあたまからの平和主義者である」
「そこをごまかすのだ」
「首相に対しては一個旅団をうごかすといっておく。
一個旅団の兵数は二千である。これならば首相もゆるす」
「二千は平時の兵数である。しかし旅団が戦時編制をすれば七、八千になる。
首相はそこまで気づかぬはずだ」
川上操六は伊藤博文を騙したのだ。
騙された伊藤が抗議すると、
「出兵するかどうかについては閣議がそれを決めますし、閣下ご自身それを裁断なさいました。
しかし出兵がきまったあとは参謀総長の責任であります。
兵数はわれわれにおまかせください」(原作2巻P58~60)
川上の論理は大日本帝国憲法に記された「統帥権」である。
陸海軍を統率する権利は天皇にあり、首相にはない。
作戦は首相の権限外なのである。
この川上の言葉に伊藤は「憲法だな」と苦い顔でつぶやくだけで反論できない。
この朝鮮出兵をめぐるやりとりは、後の昭和の戦争を物語っている。
すなわち
・朝鮮を取られたら日本の防衛は成立しない→満州を取られたら日本の防衛は成立しない。
朝鮮も満州も列強の侵攻を阻む緩衝地帯なのだ。
・川上操六の派兵→日清戦争
関東軍の暴走→日中戦争
統帥権で軍のすることに口出しできない政府。
まさに歴史は繰り返すだ。
このエピソードが示すとおり、憲法は重要なのだ。
だから安易な改正に乗ってはいけない。
さて次回は「日清戦争」
大国・清はお金持ちで、北洋・南洋・福建・広東の四艦隊を持っている。
「定遠」「鎮遠」という二隻の戦艦もある。
真之たちはどう戦うのか?
※追記
伊藤博文は派兵を決めた外務大臣・陸奥宗光(大杉漣)にこんなことを語っていた。
「楽観論はもうよい!
負けたらどうなるのか、おまえは考えたことがあるか?
財政は破綻、国際的に孤立して、わが国は列強の餌食になる。
そうさせんためにこそ、わしやおまえがおるんじゃ」
原作にないテレビ版オリジナルの台詞だが、現在のタカ派政治家に聞かせたい言葉だ。
海軍に入った真之(本木雅弘)は父が死去。
父に「勝ち負けの運は本当のいくさの時に取っておけ」と諭されてケンカをやめる。
陸軍の好古(阿部寛)はフランスの留学から戻り結婚。家庭を持つ。
正岡子規(香川照之)は肺病で喀血するが、何とか治まり、帝国大学をやめて
陸羯南(佐野史郎)が主催する新聞「日本」に就職する。
青年から大人へ。
それぞれが自分の道を歩んでいく。
大人になったのは日本という国家も同じだ。
維新で西洋化を進めた日本は列強が覇を競う世界という荒波に出て行く。
たとえれば、本格的な社会人デビューだ。もはや学生ではいられない。
……………………………………………………
日本という国家が最初に受けた荒波は朝鮮問題だった。
東学党の乱。
東学とは西学(キリスト教)に敵対する、儒教・仏教・道教の三教を合わせた新興宗教だ。
これが乱を起こし、政府軍を撃ち破り、韓国政府を揺るがした。
日本はこれに対して、朝鮮出兵を決めた。
出兵の表向きの理由は「日本の公館、居留民の保護」だが、
裏の理由としては「朝鮮を清国やロシアに取られてはまずい」という理由がある。
当時、政府の首脳は「朝鮮を取られたら、敵が喉もとに迫り、日本の防衛は成立しない」と
考えていた。
当時、朝鮮は一応独立国家であったが、清の属国化しており、
日本は、清が東学党の乱に乗して朝鮮を支配するのを怖れていた。
その結果が朝鮮派兵である。
この派兵をめぐる総理大臣・伊藤博文(加藤剛)と陸軍参謀次長・川上操六(國村隼)のやりとりが
興味深い。
清国と戦争になることを怖れる伊藤博文は大規模派兵に否定的だ。
一方、川上操六は──
「伊藤首相はゆるすまい。かれはあたまからの平和主義者である」
「そこをごまかすのだ」
「首相に対しては一個旅団をうごかすといっておく。
一個旅団の兵数は二千である。これならば首相もゆるす」
「二千は平時の兵数である。しかし旅団が戦時編制をすれば七、八千になる。
首相はそこまで気づかぬはずだ」
川上操六は伊藤博文を騙したのだ。
騙された伊藤が抗議すると、
「出兵するかどうかについては閣議がそれを決めますし、閣下ご自身それを裁断なさいました。
しかし出兵がきまったあとは参謀総長の責任であります。
兵数はわれわれにおまかせください」(原作2巻P58~60)
川上の論理は大日本帝国憲法に記された「統帥権」である。
陸海軍を統率する権利は天皇にあり、首相にはない。
作戦は首相の権限外なのである。
この川上の言葉に伊藤は「憲法だな」と苦い顔でつぶやくだけで反論できない。
この朝鮮出兵をめぐるやりとりは、後の昭和の戦争を物語っている。
すなわち
・朝鮮を取られたら日本の防衛は成立しない→満州を取られたら日本の防衛は成立しない。
朝鮮も満州も列強の侵攻を阻む緩衝地帯なのだ。
・川上操六の派兵→日清戦争
関東軍の暴走→日中戦争
統帥権で軍のすることに口出しできない政府。
まさに歴史は繰り返すだ。
このエピソードが示すとおり、憲法は重要なのだ。
だから安易な改正に乗ってはいけない。
さて次回は「日清戦争」
大国・清はお金持ちで、北洋・南洋・福建・広東の四艦隊を持っている。
「定遠」「鎮遠」という二隻の戦艦もある。
真之たちはどう戦うのか?
※追記
伊藤博文は派兵を決めた外務大臣・陸奥宗光(大杉漣)にこんなことを語っていた。
「楽観論はもうよい!
負けたらどうなるのか、おまえは考えたことがあるか?
財政は破綻、国際的に孤立して、わが国は列強の餌食になる。
そうさせんためにこそ、わしやおまえがおるんじゃ」
原作にないテレビ版オリジナルの台詞だが、現在のタカ派政治家に聞かせたい言葉だ。
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