沈みゆく華族、『斜陽』の世界。
それは何と哀しいものか。
施しをする者から施しをされる者に。
子爵の令嬢・橘瑠璃子(広瀬アリス)にとってみれば、どんなにがく然とする現実だったことか。
おまけに自分の経済基盤が<財産隠し>という犯罪に拠って成り立っていることを知り、施しをされる者にならないために、その悪を受け入れなければならないという苦しみ。
自分は汚れてしまった。
だから彼女がホテルオーナーの娘・二百郷朋子(上野美緒)に語った言葉が胸を打つ。
「私の宝物は朋子さんと過ごした、このホテルでの日々よ。幸福で変わりのなかった子供の時間よ」
世界と調和していて、すべてが楽しかった子供時代との決別。
瑠璃子の死は、絶望から生じた自殺であったのだろう。
犯人の行動はそのきっかけを与えただけ。
瑠璃子の心情を考えると、哀しくなる。
さて、今回題材にされた戦後まもなくの時代。
華族の没落と共に、レッドパージのことも描かれた。
ソヴィエト、中国、北朝鮮……押し寄せる共産主義勢力に抗するため、政府は公安警察を作る。
そのために行われた数々の謀略、陰謀。
それを記した『国枝文書』。
実に面白い事件設定だ。
実際の史実を見ても、「下山事件」「松川事件」「帝銀事件」など、陰謀絡みの事件が数々ある。
そんな時代を掘り起こしてドラマにした脚本・太田愛さんは見事。
そして今回の右京(水谷豊)の捜査。
完全に宝探しですね。
『永山子爵の備忘録』、『早蕨ホテルの宿泊名簿』、『瑠璃子のスクラップブック』。
これらの文書を読み解いていって、宝の隠し場所にたどりついてしまった。
映画でいうと『インディー・ジョーンズ』や『ナショナル・トレジャー』みたいな感じ。
これに殺人事件も絡まって、公安を始めとする二重三重の思惑が交差して、お正月にふさわしい豪華料理になっている。
<スクラップブック>についても勉強になった。
英国の貴族の娘は、日記や手紙など文字で何かを残すとゆすられるネタになるため、思い出の品をスクラップブックに貼って日記代わりにしていた。
お洒落ですね。
記憶を呼び起こすのは何も文字でなくてもいい、スクラップブックに貼った品など、ビジュアルからでも呼び起こすことが出来る。
見事な文化です。
これに詩が書き添えてあったりしたら、さらにロマンチック。
このスクラップブックの文化は、写真が普及してアルバムという形になって消えていったのでしょうが(現在はビデオだし)、実に優雅な感じがする。
一方、逆に今のビデオやハードディスクの記憶文化は味気ない。
そういえば、今回の事件でも、スキャンした文書やコピーといったデジタルが出てきたが、作家は<古文書>や<スクラップブック>を登場させることで、現代文化との対比を試みているのであろう。
『国枝文書』もカビでボロボロになってしまったし……。
最後は享(成宮寛貴)。
享ってかなり有能ですよね。
・右京さんに指示されなくても、殺された犬の写真を撮ってくる。傷がスタンガンであることを見破る。
・「こんな家に泊まってみたかったんですよね」と右京さんの意図を先読みして発言する。
・みつばちの箱が開けられたことも、箱の中に何かが隠されていて、犯人はそれを見つけようとしていたと推理する。
・警察庁の成り立ちをスラスラ語ることができる。
・茜(波瑠)を逃がすために、自分の彼女や同僚を使って行う連係プレイ。
・右京の言葉を読み取って、犯人が宝石箱を開けた瞬間に襲いかかり取り押さえる。おまけに手錠をはめられているのに見事なアクション!
・公安警察には「何でもかんでも隠蔽できると思うなよ!」と熱く叫ぶ。
右京さんと、アイコンタクトとあ・うんの呼吸で行動できる点で、享は歴代相棒の中で群を抜く。
右京さんが自分の考えを語らず享を突き放すのも、「君が自分で考えてみなさい」と鍛えているような感じもする。
熱さと知性を兼ね備えたいい刑事になりそうです。
それは何と哀しいものか。
施しをする者から施しをされる者に。
子爵の令嬢・橘瑠璃子(広瀬アリス)にとってみれば、どんなにがく然とする現実だったことか。
おまけに自分の経済基盤が<財産隠し>という犯罪に拠って成り立っていることを知り、施しをされる者にならないために、その悪を受け入れなければならないという苦しみ。
自分は汚れてしまった。
だから彼女がホテルオーナーの娘・二百郷朋子(上野美緒)に語った言葉が胸を打つ。
「私の宝物は朋子さんと過ごした、このホテルでの日々よ。幸福で変わりのなかった子供の時間よ」
世界と調和していて、すべてが楽しかった子供時代との決別。
瑠璃子の死は、絶望から生じた自殺であったのだろう。
犯人の行動はそのきっかけを与えただけ。
瑠璃子の心情を考えると、哀しくなる。
さて、今回題材にされた戦後まもなくの時代。
華族の没落と共に、レッドパージのことも描かれた。
ソヴィエト、中国、北朝鮮……押し寄せる共産主義勢力に抗するため、政府は公安警察を作る。
そのために行われた数々の謀略、陰謀。
それを記した『国枝文書』。
実に面白い事件設定だ。
実際の史実を見ても、「下山事件」「松川事件」「帝銀事件」など、陰謀絡みの事件が数々ある。
そんな時代を掘り起こしてドラマにした脚本・太田愛さんは見事。
そして今回の右京(水谷豊)の捜査。
完全に宝探しですね。
『永山子爵の備忘録』、『早蕨ホテルの宿泊名簿』、『瑠璃子のスクラップブック』。
これらの文書を読み解いていって、宝の隠し場所にたどりついてしまった。
映画でいうと『インディー・ジョーンズ』や『ナショナル・トレジャー』みたいな感じ。
これに殺人事件も絡まって、公安を始めとする二重三重の思惑が交差して、お正月にふさわしい豪華料理になっている。
<スクラップブック>についても勉強になった。
英国の貴族の娘は、日記や手紙など文字で何かを残すとゆすられるネタになるため、思い出の品をスクラップブックに貼って日記代わりにしていた。
お洒落ですね。
記憶を呼び起こすのは何も文字でなくてもいい、スクラップブックに貼った品など、ビジュアルからでも呼び起こすことが出来る。
見事な文化です。
これに詩が書き添えてあったりしたら、さらにロマンチック。
このスクラップブックの文化は、写真が普及してアルバムという形になって消えていったのでしょうが(現在はビデオだし)、実に優雅な感じがする。
一方、逆に今のビデオやハードディスクの記憶文化は味気ない。
そういえば、今回の事件でも、スキャンした文書やコピーといったデジタルが出てきたが、作家は<古文書>や<スクラップブック>を登場させることで、現代文化との対比を試みているのであろう。
『国枝文書』もカビでボロボロになってしまったし……。
最後は享(成宮寛貴)。
享ってかなり有能ですよね。
・右京さんに指示されなくても、殺された犬の写真を撮ってくる。傷がスタンガンであることを見破る。
・「こんな家に泊まってみたかったんですよね」と右京さんの意図を先読みして発言する。
・みつばちの箱が開けられたことも、箱の中に何かが隠されていて、犯人はそれを見つけようとしていたと推理する。
・警察庁の成り立ちをスラスラ語ることができる。
・茜(波瑠)を逃がすために、自分の彼女や同僚を使って行う連係プレイ。
・右京の言葉を読み取って、犯人が宝石箱を開けた瞬間に襲いかかり取り押さえる。おまけに手錠をはめられているのに見事なアクション!
・公安警察には「何でもかんでも隠蔽できると思うなよ!」と熱く叫ぶ。
右京さんと、アイコンタクトとあ・うんの呼吸で行動できる点で、享は歴代相棒の中で群を抜く。
右京さんが自分の考えを語らず享を突き放すのも、「君が自分で考えてみなさい」と鍛えているような感じもする。
熱さと知性を兼ね備えたいい刑事になりそうです。
「相棒11 元日スペシャル」がとても好きなで、ウェブで
色々な方の感想を読んでいるうちにこちらに来ました。
昭和という時代は豊かになった一方で、過去の豊かさを失った時代でもあると思います。その昭和を掘り起こす印象深い作品でした。
享もいいですよね。右京さんの新たな面、あるいはこれまで観ることができなかった行動がでてきそうで、とても楽しみです。
はじめまして。
コメントありがとうございます。
過去の豊かさ。
この話の場合は<華族文化>のことをいうのでしょうが、瑠璃子たちの言葉づかい、仕草などは上品で、少女らしくて、ゆったりしてて、いいですね。
古屋信子さんの作品世界のよう。
それに世の中は変わっていくものだとしても、日本の場合は極端ですよね。
今回の「アリス」は、滅びゆく者の哀愁が感じられる見事な話でした。
享も右京さんに鍛えられて、今後どんな刑事になるか楽しみです。