平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

青天を衝け 第27回「篤太夫、駿府で励む」~徳川に捧げられなかった命を持てあまして、ここに来た

2021年09月20日 | 大河ドラマ・時代劇
 時代が変わり、武士が刀を捨て算盤に向かう時代に。
 剣の達人・川村恵十郎(波岡一喜)は篤太夫(吉沢亮)に駿府の商工会所で言う。
「何から始めればいいか、教えよ」
 こう考えるに至った川村の心中はこうだ。
「徳川に捧げられなかった命を持てあましてここに来た。
 ここに来たのは禄をもらうためではない。徳川のために何か出来ぬかと」
 川村恵十郎、つらいだろうな。
 せつないな。
「命をもてあまして」という言葉が胸に響く。
 それでも「徳川のために」と前を向こうとしたのは、川村の強さだ。

 こんな川村と対照的なのが、成一郎(高良健吾)と土方歳三(町田啓太)だ。
 彼らは箱館で「徳川のために」戦っている。
 命を持てあましているのではなく、逆に燃やしている。
 川村にしてみれば実にうらやましい限りだろう。
 しかし、それは死に向かう道だ。
 土方は死ぬことを本望としている。
 だが、成一郎は──
 土方は成一郎に言う。
「お前には生の匂いがする。
 生きて日の本の行く末を見届けよ。それはつらい道かもしれぬがな」
 おそらく成一郎は生き残るのだろう。
 生き残った彼は何を思うのか?
 御一新の日の本をどう見るのか?

 維新の旧幕臣の物語は哀しくドラマチックだ。
「八重の桜」でも、旧会津藩士の悲哀が描かれたが、今作ほど念入りではなかった。

 一方、篤太夫。
 駿府・徳川の勘定方として、水を得た魚のように腕を振るっている。
 コンパニーをつくり、町人が出資をして新産業を起こし、利益を得る。
 商工会所(銀行)をつくり、事業のために貸し付ける。
 その行動の根本にあるのは、
 川村、土方、成一郎にも通じる「徳川のため」だ。
 決して新政府のためではない。

 これが旧幕臣の第三の道なんですね。
 その評判は五代才助(ディーン・フジオカ)、大隈重信(大倉孝二)、伊藤俊輔(山崎育三郞)にも伝わっている様子。
 時代は、渋沢栄一を求めているようだ。

・三者三様の「徳川のため」
・中央政府に聞こえて来る渋沢栄一の評判
 ここに至るドラマ構造は実に見事だ。
 原作のない大河ドラマは途中で破綻することが多いのだが、今作はすべてが上手く絡まっている。
 このクォリティを維持してほしい。


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