よをさむみ おくはつしもを はらひつつ くさのまくらに あまたたびねぬ
夜を寒み 置く初霜を はらひつつ 草の枕に あまたたび寝ぬ
凡河内躬恒
夜が寒いので降りる初霜を払いながら、草の枕に幾度も寝る旅であったことよ。
詞書には「甲斐の国へまかりける時、道にてよめる」とあります。躬恒は甲斐権少目(かいのごんのしょうさかん)に任官したことがありますので、その赴任の際に詠んだものでしょうか。躬恒が初霜を詠んだ歌は他に 0277、0663 にも見えます。躬恒が好んだ語なのかもしれませんね。
こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな
心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
(0277)
ささのはに おくはつしもの よをさむみ しみはつくとも いろにいでめやは
笹の葉に 置く初霜の 夜を寒み しみはつくとも 色に出でめやは
(0663)