新春からお祝いムードを吹き飛ばし、春闘の賃上げにも影響を与えかねない負の連鎖による株価下落が6日間続いていますが、主因は管理相場の中国ではなく中東産油国の実需による換金売りのようです。そこに、ファンドが売り仕掛けで追随しているのが実体です。このような必要以上に下げ過ぎる場面も相場にはあります。「ちょっと待って、飛びつき買いと、ろうばい売り」。これは資本主義の崩壊ではなく単なる資金移動ととらえるべきかもしれません。しかし、日本では今後、アベノミクス相場も消費税引き上げと共に消え去る可能性が高く、手始めは春闘での賃金上昇率鈍化でしょう。物価上昇で株価とは相反し実態経済が悪くなれば自民党内もゴタゴタが始まります。所詮政治家に過度の期待は禁物なのです。
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元日銀審議委員の中原伸之氏は、サウジアラビアとイランの原油増産競争により原油価格に下落圧力がかかり続け、当面は1バレル20ドル台前後で低迷を続けるとの見通しを示した。ロイターに対し8日にコメントした。米利上げは失敗で、いずれ利下げに追い込まれるとの見解も示した。
市場関係者の間では、中東情勢の緊迫により原油価格が上昇に転じるとの見方もあるが、「サウジ・イランは増産競争をしており、(原油価格の上昇は)あり得ない」と指摘。そのうえで「多少の上下動はあっても、平均では20ドル台で推移する。20ドルを切ることもあるかもしれない」と語った。
また、中東におけるサウジとイランという大国間の緊張に関して「中東はイラン中心に新秩序が形成されるとみている」としつつ、「サウジの内情がわかりにくく不透明」と述べた。
2016年初めからの世界同時株安については「米利上げ以降、良いことが起こっていない。利上げは失敗。2000年にゼロ金利解除した日銀と同様、いずれ撤回に追い込まれる」とし、ゼロ金利や量的緩和の復活もあり得るとの見通しを示した。
中原氏は大胆な金融緩和を主張するリフレ派の論客で、安倍晋三首相に近い財界人としても知られる。東燃社長を務め、世界的なエネルギー需給の動向に詳しく、中東情勢にも精通している。
同氏は昨年初め、過去100年間の原油価格の歴史的な平均値は1バレル2ドルであり、147ドルまで上昇した2000年代が異常と指摘。20ドル台に下落するとの予測を多くの識者に先駆けて示していた。
コピー2 <ダウ、初日は大恐慌以来の下落率>
アジア発のリスクオフは、欧米市場にも広がった。4日の市場で米ダウは450ドルを超える下落から終値で276ドル安(1.58%)まで戻したが、新年初日の取引としては、1932年(8.1%安)以来の下落率となった。
世界恐慌以来の株安を説明するには、中国の経済指標悪化や中東の地政学リスクの高まりという表向きの理由だけでは難しい。中国の景気減速はネガティブ材料だが、昨年から予想されていたことだ。サウジアラビアとイランの外交関係断絶などが経済に与える影響は、まだ読めない。
市場関係者が不安視し、株式などリスク資産から資金を巻き戻した要因は、グローバルな投資マネー逆流への警戒にある。
中国経済の鈍化は予想されたこととはいえ、景気減速が加速すれば、石油需要はさらに落ち込み、原油価格には一段と下落圧力がかかる。産油国の財政はさらに厳しくなり、世界の金融市場に流れ込んでいたオイルマネーが逆流する可能性が高まる。
そのうえで、中東での地政学リスクが一段と高まれば、「軍事費拡大などにつながり、世界の株式や債券に投資されていたオイルマネーの巻き戻しが加速しかねない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏)という。