福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

角田さんの第12回目(結願)江戸三十三観音霊場・東京十社巡拝行記録・・2

2016-04-12 | 開催報告/巡礼記録
角田さんの第12回目(結願)江戸三十三観音霊場・東京十社巡拝行記録・・2
(「番外所、龍吟山 千躰荒神殿 海雲寺」の続)


境内の中央に地蔵尊像があります。その脇に参道が延びていて、禅宗様の本堂があります。鰐口も賽銭箱は無く、質素で静かな佇まいですので、千躰荒神堂が、本堂と、つい、間違えてしまうそうです。ここに、ご本尊・十一面観世音菩薩がお祀りされています。

地蔵尊像は、2体並び立っていて、向って右側の地蔵が「平蔵地蔵」といわれ、由来の石碑が立っています。石碑に刻まれた由来文を見てみましょう。

「平蔵地蔵の由来
江戸の末(1860年頃)鈴ヶ森刑場の番人をしながら交代で町に出て施しを受けて暮らしていた三人連れの乞食がいた。その一人、平蔵は、或る日、多額の金を拾ったが落とし主を探し当然のこととして金を返し、お礼の小判を断った。そのことを知らされた仲間の者は、金を山分けにすれば三人とも乞食を止めて暮らせたのにと腹を立てて正直者の平蔵を自分達の小屋から追い出し凍死させてしまった。これを聞いた金の落とし主である仙台屋敷に住む、若い侍は、平蔵の遺体を引き取り、青物横丁の松並木の所に手厚く葬り、そこに石の地蔵尊をたて、ねんごろに供養し続けた。明治32年10月、京浜電車が開通することになったが、生憎その線路に地蔵尊の土地がかかり、時の海雲寺住職 横川得諄和尚が菩薩のような功徳の君子・平蔵を長く社会の木鐸たらしめんと願って当寺境内に移してもらい回向した。いつの世も人は、利害得失を先とし、他人の迷惑を考えず、金銭のために大切な人の命さえ取る者がいて、憂慮たえない。誠心で、清く正しい平蔵の心に感銘しその死後、報恩感謝、供養の誠をつくした若侍の敬虔な態度にも教え導かれるものがある。物足りて心貧しい今日、得諄和尚の主旨に生きる法孫として、かねてより多くの人々が、平蔵地蔵尊に、あやかり、浄く正しい心で和平な日々を送って明るい社会づくりに役立たんことを願っていた。たまたま、篤信者あり平蔵地蔵尊の信仰こそ荒んだ人心を洗う甘露の法乳であると賛同と援助を得たので海雲寺並に、荒神王を参詣する総ての人にお参りいただくため本尊前庭に移し奉安することとなった。ここに、平蔵地蔵の由来を略記し讃仰の資とす。
 南無地蔵願王尊伏して願わくば尊像を拝し奉るわれ等を憐愍せられ誠実な心、健全な体もて世のため人のためにつくせる力を与え給え
 昭和61年10月吉日
 龍吟山 海雲寺二十三世 如雲裕生  謹誌」

巡拝行の有意義なところは、ご本尊にお参りすることもさることながら、寺宇の中や、境内の中などに人知れず、さりげなく佇んでいるそれこそ「寶物」に似たものが、必ずあり、それを見つけることも「楽しみ」の一つです。石碑や、造形物もさることながら、愛らしい、草花、澄んだ可愛い小鳥の声に触れることも、「宝物」の一つです。これらは、遍照講のご詠歌にもありますが、総てが、「法(のり)」の声なのです。

我田引水のようで、申し訳なく思ったのですが、巡拝するお寺の中に、「心意気」のような霊気があり、訴えてくるものが、必ずあります。私の場合のサンプルを、少し、冗長になったかもしれませんが、海雲寺の例で、三宝荒神様と、平蔵地蔵の2例で、お寺の「心意気」をお伝えしたくて、「由緒記」「由来誌」全文を、記されてある通りに、ご紹介しました。

そうそう、海雲寺で、もう一つ。境内に「力石」がありました。優に80キロはある、楕円の丸い石です。大正時代まで、若者達の力競べにつかわれていたそうです。当時、門前には、多勢の漁師や、親船から積荷を小舟に移しとる、瀬取(沖仲仕)がいて、石の持ち上げ、山門と本堂の間を何回、石を持ち歩けるか競いあつたといいます。力尽きて、放り出した台地に、ドスンと地響きを立てた鈍い音は、静けさを破る快い響きだったでしょう。荒くれ男衆たちが、重い石を扱う姿を思い浮かべると、純朴、素朴な漁の若者達が、貧しい暮らしでも、現在の我々が、ギスギスした空気の中で、あくせく暮らしていることと、比較にならないほどのゆとりのあったときを過ごしていたことが解かります。

ご詠歌 龍吟じ 品川の海に 雲おこり み仏の慈悲 ありがたきかな
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 角田さんの第12回目(結願... | トップ | 角田さんの第12回目(結願... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

開催報告/巡礼記録」カテゴリの最新記事