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福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

沙彌十戒法并威儀序

2020-10-22 | 諸経

この経は沙弥の十戒・七十二威儀の説明を中心に書かれていますが、雲照師は幼いときこの経を読まれて戒律を守ろうと開眼したと伝えられています。

 

 

 

沙彌十戒法并威儀序

夫乾坤の萬物を覆載するや人を以て貴と為す。身を立て世に處するは禮儀を以て之が本とす。君臣父子禮にあらざれば立たず。邪を防ぎ姦を止めるは禮にあらざれば禁ぜず。

和國の婚崇するは禮にあらざれば定まらず。郷邑を遜悌するは禮にあらざれば通ぜず。師徒朋友は禮にあらざれば敬せず。吊喪問疾は禮にあらざれば行はれず。昔の先賢垂範、永く以って軌則と為す。喪祭之儀は世務之急なり。是れ信行の機を以って旦夕の要となす。今世に浮遊し、或は輕。或は重、或は深、或は淺なり。法則を諧し以って譏論を致すべからず。

 

 

沙彌十戒法并威儀一卷失譯附東晋録 

佛、舍利弗に語りたまはく、「汝去りて羅睺羅を度して出家せしめよ」と。舍利弗言さく「我當に云何んが度すべきや」。

佛教へて言はく

「我羅睺羅。歸依佛歸依法歸依僧   如是に三説せよ。            

我某甲。歸依佛竟歸依法竟歸依僧竟             如是に三説せよ。            

盡形壽不殺生 盡形壽不盜 盡形壽不邪婬 盡形壽不妄語 盡形壽不飮酒。

佛婆伽婆出家せしめたまふ。我某甲、和上某甲に因り、佛に隨って出家す。如是に三説せよ。

佛婆伽婆出家せしめたまふ。俗服を捨て袈裟を著す。我某甲、和上某甲に因り、佛に隨って出家す。俗服を捨て袈裟を著す。盡形壽不殺生、沙彌戒を持す。 盡形壽不盜、沙彌戒を持す。 盡形壽不婬、沙彌戒を持す。 盡形壽不妄語、沙彌戒を持す。 盡形壽不飮酒、沙彌戒を持す。 盡形壽不著香華鬘不香塗身、沙彌戒を持す。 盡形壽不歌舞倡妓不往觀聽、沙彌戒を持す。 盡形壽不坐高廣大床、沙彌戒を持す。 盡形壽不非時食、沙彌戒を持す。 盡形壽不捉持生像金銀寶物、沙彌戒を持す。 汝今已に沙彌の十戒を受け竟んぬ。當に盡形

壽頂戴奉持し終身犯すことを得ず。應に三寶を供養すべし。和上阿闍梨、一切如法に教へたまはんに違逆することを得ず。上中下坐、心常に恭敬して、方便を勤求し、坐禪誦經學問を勸助して福を作せ。三惡道を閉じ涅槃門を開き、比丘法中に正業を増長し、四道果を得よ。沙彌之戒は、盡形壽人物を殘殺傷害することを得ず。當に所生及び師友の恩を念じ、精進行道して父母を度せんと欲し、慍訟することなく、人に直きを推し、曲れるを引きて己に向ふ。蠉飛蠕動蚑行之類を剋傷する所なし。恩を施し乏しきを濟ひて其の安きを得せしむ。心に人の為を念じ、言、殺に及ぶことなし。殺を見て食せず。聲を聞きて食せず。殺を疑ひて食せず。若し殺を見る時は當に慈心を起こす、誓って吾、道を得れば國に殺す者なからしめんと。草木不用なるを愼んで毀傷することなし。斯の戒を犯すこと有らば沙彌に非ざる也。 沙彌之戒は盡形壽に圭合銖兩を偸盜することを得ず。一として人を欺くことなく、心に義を存して、口に教を取らしめざれ。僕使を販賣し、僮客(奴僕)を借賃し、或は惠施することあるも、一も取ることを得ざれ。珍玩の高床幃帳とを服飾すること無かれ。衣は趣に形を蔽ひ、文綵を以てすること無かれ。食は趣に命を支へ嗜味を得るなかれ。穀糧を貯畜し、穢寶を藏積することを得ることなかれ。 人與ふとも受けず。受れば則ち留めず、轉じて窮乏を濟ふ。常に人の爲に不貪之徳を説きて、寧ろ手を斷つに就くも非財を取らざれ。斯の戒を犯すこと有らば沙彌に非ざる也。

沙彌之戒は、盡形壽、婦を取り繼嗣を畜養することを得ず。女色を防遠し、六情を禁閉せよ。美色を覩みる莫れ。目瞻眄せず、心に婬を念ずるなかれ。口に調を言ふことなし。華香脂粉以って身に近けることなかれ。好聲邪色は一として視聽することなかれ。寧ろ破骨碎心焚燒身體なるも淫を為すことを得るなかれ。婬妷にして垢穢を生ずると雖も、貞潔にして死ぬるに如じ。斯の戒を犯すは沙彌に非ざる也。

沙彌之戒は盡形壽、誠信を本と爲す。兩舌・惡罵・妄言・綺語・前譽後毀、人を證して罪に入れることを得ず。言を徐にし、政を持して人の短を宣るなかれ。人の爲に説法せば理を説く如しと思へ。諍者あるを見れば兩に和善を説け。夫れ士の處世は口中に斧あるがごとし。

其の身を斬る所以は、惡言による。言を愼まざる者は沙彌にあらざる也。

沙彌之戒は、盡形壽、飮酒するを得ず。嘗酒を得ることなし。嗅酒を得ることなし。亦た粥酒なし。酒を以て人に飮ましむることなし。藥酒を飲むことなし。酒舍に止ることなし。酒は毒水にして衆失之原なり。賢を殘そこなひ、聖を毀り、禍殃を招致す。四等枯朽し福を去って罪に就くこと之に由らざるなし。寧ろ洋銅を飲むとも愼んで犯酒することなかれ。斯の戒を犯すことあらば沙彌に非ざる也。

沙彌之戒は盡形壽、兵仗を習弄し、手に利器を執り、六畜を畜養し、飛鳥を籠繋し、車輿騎乘し心を快うして恣意に馳騁遊獵し禽獸を彈射することを得ざれ。山林を放火焚燒して衆生を傷害するを得ることなかれ。湖池を乾決し派涜を堰塞し、鉤釣と魚網をもって水性を殘害するを得ることなかれ。斯の戒を犯すあらば沙彌にあらざる也。 

沙彌之戒は、盡形壽、碁局摴蒲博塞を習弄して、勝負を諍ひ、弄舞調戲吟咏歌音し、樂器琴瑟箜篌箏笛竿笙を手に執ることを得ず。以って道を亂すの意なり。山澤を墾掘し田畝を耕犁し、園圃を修治し、五穀を種殖し、船車賈作、市において販買し、百姓と利を諍ふことなかれ。斯の戒を犯すあらば沙彌に非ざる也。

沙彌之戒は盡形壽、奇技巫醫蠱道を學習することを得ず。時日卜筮占相吉凶。仰觀暦數推歩盈虚。日月薄蝕・星宿變怪・山崩地動・風雨旱澇・歳熟不熟・有疫無疫、一として知ることを得ることなし。國家の政事を論説し、優劣を秤量し、出軍行師攻伐勝負することを得ざれ。斯の戒を犯すあらば沙彌に非ざる也。

 沙彌之戒は、盡形壽、男女の別ありて、同寺に居せず、跡を相尋せざれ。同船車に倶に載ることなし。逢ふも道に談ずることなし。若し異物を持ば之を察視するなかれ。嫌を遠ざけ疑を避けよ。書䟽往來し衣服を假借裁割浣濯及び乞求する所なかれ。彼れ若し惠むに己に亦た宜しく受けざるべし。若し往を欲する時は必らず耆年を湏ひ愼んで獨行するなし。止坐宿すること無し。斯の戒を犯すあらば沙彌にあらざる也。

 沙彌之戒は盡形壽、賢にあらざれば友とせず、聖に非ざれば宗とせず、不孝之子。屠兒・獵者・偸盜嗜酒之徒・志趣邪僻・履行凶嶮は交遊することを得ざれ。往來之藝濁は道行を虧損す。法服應器は常に身と倶にし、非時に食せず、非法に言はず。食するは則ち無語、臥するには則ち無談、精勤して義を思ひ、温故知新、坐れば則ち禪思し、起れば則ち諷誦す。戒行如是なるを眞の佛弟子となす。      説戒已に竟る。

 

次に威儀を説く。            

已に沙彌十戒を受けて賢者道人と為る。次に之に教ふること、當に漸漸に稍く小より起って用ふべし、當に威儀施行所應を知るべし。當に和上幾歳三師名字を知るべし。當に教へて初受戒時の歳日月數を識知すべし。當に知るべし和上につかふるに幾ばくの事あるかを。亦た當に知るべし阿闍梨に隨事するに幾事あるかを。亦た當に知るべし楊枝澡水を給するに幾の事あるかを。亦た當に知るべし授袈裟・攝袈裟及び持鉢に幾の事あるかを。亦た當に知るべし捉錫杖・持履に幾の事あるかを。和上と阿闍梨倶に請に応ずる時、若しは國王家に至る時、若しは迦羅越家に至る時、若しは婆羅門家に至る時、若しは飯に連坐する時、若しは飯に別坐する時、若しは倶に入城乞食する時、若しは倶に還る時、故處に至る時、若しは日晩の時、若しは水邊に止まり飯する時、若しは道邊の時、若しは樹下に飯する時、若しは自ら先に去り住して相ひ待つ時、若しは鉢を合して食する時、若しは貿鉢を轉ずる時、若しは倶共に對して飯する時、若しは前後に飯する時、若しは飯し已って澡漱の時、若しは澡鉢して

去る時、各の當に具に知るべし幾の事あるやを。當に知るべし衆僧に給し直日と作る時、各の當に知るべし幾くの事あるやを。年二十に満ちて具足戒を受けんと欲する時、皆悉く當に知るべし、設し賢者比丘のために問はれ具に對(こたへ)られずば應に與に具足戒を受るにあたはずと。何以故。沙彌となって乃ち沙彌の應に施行すべき所の事を知らず。沙門の事は大にして作し難く甚だ微妙なり。賢者沙彌は且らく去って熟學して當に悉く聞知すべし。乃ち應に具足戒を授與すべし。卿ち沙彌法を知らざる所以は、但だ未だ諦に身苦を知らざる故に、意を伏せざる耳。而るに反って具足戒を受けんと欲す。今卿に具足戒を授けば人は佛法易行・沙門易作と謂ひ、佛道の至妙を知らず。罪福運行し法律交互す。是を以て數日之中に之を相みる。是の故に當に先ず問ふべし。設もし能く具さに對て能く如法ならば、三師得やすからん耳。

師、沙彌に教ゆるに五事あり。一は當に大沙門を敬すべし。二は大沙門の名字を呼ぶことを得ず。三は大沙門の戒經を説く時、盜聽するを得ず。四は大沙門の長短を求るを得ず。五は大沙門誤失の時轉行して説くことを得ず。是を沙彌の威儀と為す。

 

又沙彌に教るに五事あり。一は屏處に大沙門を罵ることを得ず。二は大沙門を輕易して前において戲笑し其語言形相行歩を効(なら)ふことを得ず。三は大沙門の過ぐるを見ば、即ち當に起住すべし。若しは經を讀誦し、若しは飯時、若しは衆の事を作するは應に起ることを得ざるべし。四は行きて大沙門と相逢ば當に下道して止住し之を避くべし。五は若し調

戲する時、若し大沙門を見ば、即ち當に止謝して不及と言ふべし。是を施行所應となす爾。 

 

沙彌和上に事(つか)ふるに十事あり。一は當に早起。二は戸に入と欲するに當ず先に三彈指せよ。三は楊枝澡水を具せ。四は當に袈裟を授て却って履を授く。五は當に掃地し澡水を益す。六は當に被枕を襞み床席を拂拭すべし。七は師出でて未だ還らざれば捨てて房中を去ることを得ず。師還らば當に取袈裟を取り逆へて内に之を襞むべし。八は若し過あるに、和上阿闍梨教誡せば、還って逆語するを得ず。九は當に低頭して師の語を受けて去るべし。當に之を行ぜんことを思念すべし。十は戸を出れば當に還って戸を牽きて之を閉ずべし。是和上に事ふる法と為す。 

 

沙彌、阿闍梨に事ふることを教ゆるに五事あり。一は阿闍梨を視るに一切當に我を視る如くせよ。二は調戲するを得るべからず。三は設へ汝呵罵されるも還語するを得ず。四は若し汝をして不淨器を出さしむるも惡怒を唾すを得ず。五は暮は當に之を按摩せよ。是を阿闍梨に事ふるの法と為す也。沙彌、師に事(つかへ)んに、當に早起して楊枝澡水を具すべし。六事あり。一は楊枝を斷じて當に度數に随ふべし。二は當に頭を破てく。三は當に洗ひて淨ならしむ。四は當に故宿水を易ふべし。五は當に軍持(師の水瓶)を淨澡すべし。六は當に中に水を満たして持ちて入るべし。汚れ有りて濺んに聲あらしむことを得ず。是れ楊枝を具して澡水する法と為す。

 袈裟を授くるに四事あり。一は當に徐徐に一手は排し、一手は下を捉へて之を授せ。二は當に次で上下を視るべし。三は當に止住して師の衣を持して已るべし。四は當に師の肩上に上著すべし。是を袈裟を授す法と為す。 

袈裟を攝するに四事あり。一は當に上下を視るべし。二は地に著せしむるを得ず。三は當に安常處に著すべし。四は上を覆ふ。是を攝袈裟法と為す。

 持鉢に四事あり。一は當に洗ひて淨ならしむ。二は拭きて燥ならしむ。三は帶びて堅ならしむ。四は聲有らしむを得ず。是を持鉢法と為す。

錫杖を持するに四事あり。一は取りて生垢を拭去す。二は著地して聲有らしむことを得ず。三は師の戸を出れば乃ち當に授す。四は師出還せば當に受取。若しは倶行、若しは入衆、若しは禮佛も亦た當に取持すべし。是錫杖を持する法と為す。

 履を持するに四事あり。一は當に先ず之を抖擻す。二は當に禮して次に之を比すべし。三は當に手を洗ふべし。便ち袈裟を持つことを得ず。四は師坐せば當に取り次に之を比之すべし。是を履を持するの法と為す。

若し倶に請に應じて飯時に連坐するに四事あり。一は坐して當に師を離れること六尺なれ。二は當に師の達嚫竟るを視て乃ち應に鉢を授くべし。三は師より先に食飯するを得ず。四は師飯し已らば當に起きて鉢を取りて自ら近くすべし。是を連坐飯時の法と為す也。

 別坐飯時に四事あり。一は當に立ちて師邊に住すべし。二は師食し去んと教すれば乃ち當に坐を去るべし。三は頭面を地に著け作禮せよ。四は飯を食するに倨坐上に戲ることを得ず。

飯已りて當に師邊に至りて住せよ。師還りて坐せんと教すれば乃ち應に坐すべし。是を

別坐飯時の法と為す也。

入城乞食時に四事あり。一は當に師の鉢を持すべし。二は當に師の後に随ふべし。足を以て師の影を蹈むを得ず。三は城外において當に鉢を取りて師に授けよ。四は城に入るに別行を欲せば當に師に報ずべし。是を乞食を行ずる時の法と為す。 

倶に行きて故處に還至するに四事あり。一はに當に先に徐ては、戸を開き坐具を出して之を敷くべし。二は師の手を澡し已りて乃ち却って自ら澡すべし。三は當に師に鉢を授けて自ら却って叉手して住すべし。四には當に豫め澡豆手巾等を具すべし。是を還歸飯時の法と為す。 水邊を過ぎて飯する時に四事あり。一は當に淨地を求むべし。二は當に草を求めて坐を作すべし。三は當に水を取りて師の手を澡し已りて還て自ら手を洗ひ已り乃ち却りて師の鉢を授べし。四は師教て飯せしめば當に作禮して却て坐すべし。是を水邊飯時の法と為す。

樹下に止陰して飯する時の法に四事あり。一は當に持鉢して樹上に掛著し葉を採取して坐を作すべし。二は水を取りて師の手を澡ぐべし。設ひ水を得ずとも、淨草を取りて師に授くべし。三は鉢を還取して師に授くべし。 四は當に豫め淨草を具し師鉢を澡し已りて却りて草熟を以て鉢を拭き乃ち去るべし。是を樹下飯時の法と為す。 

道中相ひ待つに三事あり。一は持鉢して淨地に著け作禮して事の如く説け。二は當に日の早晩を視、疾く還歸し道に止るべし。三は當に師の鉢を取り并に持して師の後に随って去れ。是を道中相待時の法と為す。

鉢飯を合する時に二事あり。一は若し師鉢中に酪酥漿なくば當に自ら所得の鉢飯を取りて師に授くべし。若し師取らざれば、旦らく當に却住すべし。二は師鉢中の半飯を取り徐き出して淨地樹葉上に著し、却りて自ら鉢中の半飯を取り、師鉢中に著して却住すべし。是を合鉢飯時の法と為す。 

鉢飯を博(貿)する時に三事あり。一は若し師鉢中に美膳者を得、自らは不如の者を得れば便當ち師に授くべし。二は師が鉢飯を(貿)んと欲せば當に讓りて受けざるべし。三は師堅く呼て鉢を貿らば當に再飡(そん・食)を取り便當ち鉢を拭ひて還って師に授くべし。是を貿鉢飯時の法と為す。

對飯の時に三事あり。一は當に師鉢を授け乃ち却って坐飯すべし。二には當に數しばしば師の得んと欲するところを視、即ち當に起きて取與すべし。三は食するに大疾を得ることなかれ、亦た後おくれて竟ることを得ざれ。以おゆること起らば當に復た何等をか得んと欲するやを問へ。師、持去を言うはば乃ち當に取り去れ。是を對飯時の法と為す。

 前後の飯時に三事あり。一は師の鉢具を授け已って當に却して屏處に至りて住すべし。師の呼聲を聽かば即ち當に之に應ずべし。二は當に豫め澡水を取りて一邊に著すべし。三は師飯畢らば當に師の手を澡ぎて却って住すべし。師去って飯せよと教えば乃ち當に作禮して去りて飯すべし。是を前後飯時の法と為す。 

飯已りて澡鉢するに三事あり。一は澡漱已らば當に先に師鉢を取りて澡し、令

淨し已りて樹葉上に著すべし。二は却りて自ら鉢を澡し已り亦た樹葉上に著すべし。先に師鉢を取り已って手で摩し淨燥ならしめ、嚢中に内著して師に付すべし。三は還りて自ら鉢を取りて拭きて燥ならしむべし。亦た嚢中に内著し之を帶し止住すべし。是を燥鉢時の法と為す。

澡鉢し去る時の法に三事あり。一は師言く、我れ今某賢者の許を過んと欲す、某自ら先に歸るべし。二は頭面著地し作禮して便ち去れ。三は獨り還り去れ。餘の聚落中を過ぎて戲笑することを得ず。故處に直歸して誦經せよ。是を澡鉢去時の法と為す。

 沙彌の入衆に五事あり。一は當に學を明める。二は當に事を習ふ。三は當に衆に給す。四は當に大沙門に物を授く。五は大戒を受けんと欲する時三師得易き耳。

 復五事あり。一は當に禮佛すべし。二は當に比丘僧を禮すべし。三は當に上下坐を問訊すべし。四は當に上座坐處を留るべし。五は坐處を諍ふことを得ず。 

復五事あり。一は坐上において遙かに相呼び語笑することを得ず。二は數ば起出することを得ず。三は若し衆中に沙彌某甲を呼ば即ち當に起應すべし。四は當に衆僧の命に隨ふべし。五は摩摩帝(寺主)呼びて所作あらば當に還って師に白すべし。是を名て入衆時の法用となす。

 沙彌直日を作すに五事あり。一は當に衆僧の物を惜む。二は道に當りて事を作すことを得ざれ。三は作事未だ訖らざるに中に起て捨去することを得ず。四は若し和上阿闍梨呼びて便ち往くを得ざれば應當に摩摩帝(寺主)に報ぜよ。五は當に摩摩帝の教に隨ひて違戻するを得ず。是を直日を作す法と為す。

擇菜に五事あり。一は當に根を却れ。二は當に頭を齊くせよ。三は青黄合すること有らしむるを得ず。四は洗菜。當に水を三易し淨めしむべし。已って當に三振して去水せよ。五は作事畢竟らば當に處を掃きて淨ならしむべし。

復五事あり。一は衆僧物を私取するを得ず。二は若し取んと欲する所あらば當に摩摩帝に報ずべし。三は盡力して衆僧の事を作すべし。四は當に食堂中を掃除し乃ち布席空案を却くべし。五は當に朝暮に舍後を掃除し水を益し灰土を棄つべし。 

汲水に十事あり。一は手不淨にて便ち汲水に用ひるべからず。當に先に澡手すべし。二

は大ひに井中に投罐して聲あらしむ事を得べからず。三は當に徐徐に下罐すべし。大ひに挑撃して左右に著して有聲ならしむべからず。四は繩頭をして井戸に還入せしめ有聲ならしむことを得べからず。五は履を持して井欄上を覆ふべからず。六は罐水を持して釜中に著入せしむることを得るべからず。七は罐を持して地に置くことを得るべからず。八は當に器を洗澡して淨ならしめよ。九は水を擧て入るるは當に徐徐に行ふべし。十は屏處に着きて人を道中に妨ぐることを得ず。 

澡釜に五事あり。一は當に釜縁口上澡ぐべし。二は當に釜縁裏を澡ぐべし。三は當に腰腹を洗ふべし。四は裏底を澡ぐべし。五は當に水を三易すべし。 

吹竈に五事あり。一は蹲して火を吹くことを得ず。二は生薪を燃やすことを得ず。三は濕薪を倒然するを得ず。四は腐薪を然すことを得ず。五は熱湯を以て火を澆して滅することを得ず。

 掃地に五事あり。一は當に順に行ふ。二は灑地するに厚薄あることを得ず。 三は

四壁を汚湔あることを得ず。四は濕地を蹈んで壞すことを得ず。五は掃已らば即ち當に自ら草糞を撮り之を棄つべし。

 比丘僧飯時・沙彌の掃地に五事あり。一は當に却行(あとずさり)すべし。二は手を挑して持することを得ず。三は六人を過ぐれば土聚を作す。四は悉く掃きて遍ならしむを善と為す。五は即ち當に自ら手掃除し持出でて之を棄つべし。

 水澡灌を持して瀉水するに五事あり。一は一手にて持上げ一手にて持下ぐ。轉易することを得ず。二は當に左面に近け堅持して前を直視すべし。三は當に人の手を視て水を下すに多きことを得ず、少きことを得ず、正當に人の手中に投じ澆すべし。四は水を下すに當に人の手を去ること四寸、高なるを得ず、下なるを得ざるべし。當に水の多少を相視て設へ水少く一人に不足するとも當に水を益すべし、人の手に住するを得ざれ。五は澡手を以て還って袈裟を如法に著すべし。

澡盤を持するに五事あり。一は盤を曳きて聲あらしむことを得るべからず。二は當に兩手で左面に堅持すべし。三は當に人の手に随て高下すべし。左右を顧視することを得ず。

四は澡盤中水滿つれば當に之を出棄すべし。人の前の地に澆することを得ず。五は已らば當に手を澡ひ還りて袈裟を如法に著すべし。

手巾を持するに五事あり。一は當に左手に下の頭を持して右手に上の頭を持して人に授けよ。二は坐を去ること二尺。人の膝に倚ることを得ず。三は手巾を持して隨って人の口に障ぎることを得ず。四は人手を拭きて未だ巾を放さざるに引去ることを得ず。以ひて下し竟らば當に持して主に付け若しくは故處に著すべし。五は已らば當に澡手して還りて袈裟を如法に著すべし。

履を布(しく)に五事あり。一は當に先ず抖擻して中の所有を去るべし。二は當に上座より起るべし。三は當に澡盤の後より主に示し自ら識らしむべし。四者は左を持ちて右を著(はかす)べからず。皆ならば當に下沙彌に竟るべし。五は已らば竟に當に還りて澡手して袈裟を如法に著せ。

沙彌の澡鉢に七事あり。一は鉢中に餘飯あらば便ち取りて之を棄ることを得ず。二は中の飯を棄んと欲せば當に淨地に著せ。三は當に澡豆(そうず・からだのよごれを洗い落とすのに用いる小豆粉)若草葉を用ふべし。四には澡鉢には淨地において人の道にあたることを得ず。

五は澡鉢には當に下に枝有らしむべし。六は當に更に淨水を益し、遠く汚たるを棄てて人に濺(そそ)ぐことを得ず。七は鉢中の水を棄んと欲すれば當に地を去ること四寸にして高下あらしむることを得ず。

拭鉢に五事あり。一は當に手を澡ひて拭て燥せしむべし。二は當に淨手巾を持ちて膝上に著すべし。三は當に裏を拭ひて燥せしむべし。四は手已に表を拭きて復た裏を拭裏を得ざるべし。五は鉢已らば燥し即ち當に淨手巾を持て覆ひ、嚢中に著て常處に安ずべし。

行會に飯する時に沙弥に教へて持鉢するに五事あり。一は地に置くを得ず。二は重ねて聲あらしむるを得ず。三は楊枝を持ちて鉢中に著するを得ず。四は人來りて案を授くは鉢枝を持ちて人の案上に著するを得ず。五は人の後より授鉢するを得ず。當に正しく前より亦た行かず、衆中にして師の飯し已るを視ば當に起きて鉢を取りて還坐すべし。是を持鉢の法と為す。

師の為に遣行せられて人に答謝するに七事あり。一は當に直に往くべし。二は當に直に還るべし。三者は當に師の所語を識るべし。亦た當に人の報語を識るべし。四は妄りに所道を所ふことを得ず。五は若し所索し有に止りて留宿することを得ず。六は調譺することを得ず。七は出行に當に法則あるべし。

沙彌比丘に給し僧使未だ竟らざるに妄りに大沙門の戸に入ることを得ず。得入するに三事あり。一は若し和上阿闍梨暫く往かしむ。二は若し債て所取あらしむ。三は往て経を問はんと欲せば應に得入すべし。

門戸に入らんと欲するに七事あり。一は當に三彈指して乃ち入るを得る。二は人の道に當て住坐し若しくは火光を障ることを得ず。三は他事を妄語することを得ず。四は當に叉手して如法に説くべし。五は若し教て坐せしめば交脚するを得ず。六は調譺するを得ざれ。七は人の先を障ふを得ざれ。出戸を欲はば當に戸に向ひて出すべし、面を廻らして戸に向ひ却行して出るべし。背去するを得ず。

獨り沙彌をして遠く出行せしむに當に上頭に教ゆるに三事あり。一は彼の人、卿和上の名何等と問ふに便ち報じて言く字某甲と。二は復た卿和上沙門となり來って幾歳ぞやと問ふに便ち報じて言ふべし若干歳と。三は復た卿和上是れ何許の人なりやと問ふに便ち報じて言ふべし某郡縣の人なりと。設もし復た卿阿闍梨の名は何等の人なりやと問はんに便ち報じて言ふべし字某甲なりと。復た卿阿闍梨の年幾許なりやと問はんに便ち報じて言ふべし年若干なりと。復た卿阿闍梨是れ何許の人なりやと問はんに便ち報じて言ふべし是れ某國縣の人なりと。若し復た賢者の名は何等字なりやと問はんに便ち報じて言ふべし字某甲なりと。復た卿作沙彌となりて已來幾時やと問はんに便ち報じて言ふべし若干歳若干月若干日

若干時なりと。是を和上阿闍梨を知り亦た自ら時名字歳日月數を知ると為す。

浴室に入るに五事あり。一は低頭して入る。二は入に當に上座處を避く。三は上座讀經時に狂語することを得ず。四は水を以て互相に澆するを得ず。五は不得水をって澆して火を滅するを得ず。

復五事あり。一は調譺(嘲弄)することを得ず。二は中の瓫器を破することを得ず。 三は用水を大費することを得ず。四は中の澡豆・麻油を潘することを得ず。五は當に疾く出去すべし、中に止まって衣を浣ふ(あらう)ことを得ず。

沙彌舍後に至って行ずるに十事あり。一は大小便を欲するに即ち當に行ずべし。二は行きて左右を顧視するを得ず。三は至って當に三彈指すべし。四は迫促して中の人を出さしむることを得ず。五は至上に至って復た三彈指せよ。六は大咽することを得ず。七は低頭して陰を視ることを得ず。八は弄んで灰土を上ずることを得ず。九は水を持して壁を澆ずることを得ず。十は已りて還らば當に手を澡ふべし。未だ手を澡はずして應に物を持つなかれ。

復た五事あり。一は前壁に唾することを得ず。二は左右を顧視して望ずることを得ず。三は草を持ちて壁地に畫くことを得ず。四は火槽を持ちて地及び壁に畫くことを得ず。五は圊厠上に久固なることを得ず。當に自ら下り去るべし。設ひ當に人に逢ふとも作禮することを得ず。當に道を避けて去るべし。沙彌の威儀式を説き竟んぬ。

沙彌七十二威儀、總じて十四事あり。

師と語らんに二事あり。一は語を報ずることを得ず。二は自ら理することを得ず。

沙彌、師の為に禮を作すに十事あり。一は師の頭前に盤あらば應に作禮すべからず。二は師坐禪せば應に作禮すべからず。三は師經行ならば應に作禮すべからず。四は師食ならば應に作禮すべからず。五は師經を説かば應に作禮すべからず。六は師と相逢ひて左面にて應に作禮すべからず。七は師梳齒せば應に作禮すべからず。八は欲戸に入んと欲せば作禮して應に彈指三返すべし。師應ぜざれば應に去るべし。九は師を離るること七歩なることを得べからず。十は師戸を開かば應に作禮すべし。

早起して戸に入るに五事あり。一は衣被を整理す。二は出甌す。三は掃地。四は問經。五は

物をあたふ。

三衣を襞むに五事あり。一は前に當ることを得ず。二は當に左面に於いてすべし。三は當に衣の表裏を識るべし。四は襞を倒すことを得ず。五は當に常の處に置くべし。

師に隨ひて行くに五事あり。一は人家を過歴することを得ず。二は道に止住して人と共に語ることを得ず。三は左右を顧視するを得ず。四は當に低頭し師の後に随ふべし。五は檀

越の家に到らば當に一面に住し師教へば應に坐すべし。

師に所須(しょしゅ・生活必需品)を給するに五事あり。一者は當に楊枝を得べし。二は當に澡豆(からだのよごれを洗い落とすのに用いる、粉末状にした小豆(あずき)。後には、同じ用途の小糠(こぬか)をもいう。)を得べし。三は宿水を得ざれ。四は當に更に汲むべし。五は手巾を用ひて應に浣淨すべし。

沙彌歯を洗ふに五事あり。一は塔に向ふことを得ず。二は和上に向ふことを得ず。三は阿闍梨に向ふことを得ず。四は當に屏處においてすべし。五は當に自ら取水すべし。他人の事を成じた水を取るべからず。

暮に戸に入るに五事あり。一は當に床を掃除すべし。二は當に衣被を理たたむべし。三は當に甌を内にすべし。四は當に燃燈すべし。五は教へて臥して應に去出せしめば當に背向して戸を牽き閉ずべし。

沙彌師に従ひて受經するに五事あり。一は衣服を整ふ。二は當に叉手して作禮すべし。三は

前却することを得ず。四は兩足を當に齊へるべし。五は當に小さく身を僂むべし。

沙彌師に三衣を授するに五事あり。一は當に手を洗ふべし。二は當に安多衛(五条袈裟)を與ふべし。三は當に憂多羅僧(七条袈裟)を與ふべし。四は當に僧伽梨(大衣)を與ふべし。五は當に手巾(手と顔を拭う布であったり腰紐の事であったりする)を與ふべし。

沙彌の洗鉢に五事あり。一は當に牛糞灰を得べし。二は當に澡豆を得べし。三は地を去ること七寸せよ。四は聲あることを得ず。三たび水を易へ水を捐んと欲せば地を灑すことを得ず。五は當に燥ならしむべし。

沙彌地を掃くに五事あり。一は師に背すことを得ず。二は逆掃することを得ず。三は當に淨ならしむべし。四は跡あることを得ず。五は當に即時に棄却すべし。

沙彌師に隨ひて檀越家に至るに五事あり。一者は當に鉢を持すべし。二は當に手巾を持すべし。三は當に戸を搏すべし。四は檀越家に到らば淨水を索して洗鉢すべし。五は師坐さば手巾・鉢を捉りて師に授け乃ち應に還りて自ら坐すべし。

沙彌浴室に入るに五事あり。一は師より先に入ることを得ず。二は坐の前に坐すことを得ず。三は師未だ水を獲ざれば動くことを得ず。四はもし背を揩んと欲せば先ず當に之を擬すべし。五は浴し已らば當に先に著衣を取るべし。

沙彌の禮節威儀又た朝晡の問訊禮敬に十三事あり。一は當に早く起きて澡漱すべし。二は當に衣服を整頓すべし。三は起居を問訊す。四は師若し内に在さば進んと欲するの法は當に先ず所著の物及び足に所著の物を頭上に脱すべし。五は跡を躡(追)ふことを得ず。六は當に外に住し立ちて三彈指呼して乃ち前に進入すべし。七は當に頭面を著地し稽首して禮を為すべし。八は若し命令あらば三讓して乃ち坐すべし。九は坐さば必ず端嚴なるべし。十は問あらば即ち對應し聲分明なるべし。十一は云ふこと無くんば即ち默すべし。十二は事畢らば宜しく退くべし、稽首は初の如し。十三は出戸せんと欲する時、當に身を廻して還り向て去るべし。

沙彌又た師の澡罐を持するに十五事あり。一は澡瓶(水差)を淨洗す。二は當に常處にあらしむ。三は當に淨水をして器に滿たさしむ。四は宿水なることを得ず。五は豫あらかじめ楊枝を具す。六は楊枝を治するは當に如法ならしむべし。七は澡瓶は膝を去ること一尺ならしむ。八は澡瓶を執るは當に左手にて持上げ、右手で下を捧ふべし。九は水を瀉すること調適にして當に其の多少を得べし。十は聲あらしむることを得ず。十一は手巾は必ず常處にあらしむ。十二は巾を持するは左に其手巾を執りて右以って師に授く。十三は不淨水棄つるは當に常處あるべし。十四は淨地に澆濽(ぎょうさん・かける)する勿れ。十五は巾を用ひ已らば當に常處に復すべし。

 

又灑掃し床を拂拭するに八事あり。一は常に尊に向へ。二は背ならず。三は地を灑ほさんには當に手を輕じて水の多少を裁るべし。四は糞箕を用ひば當に以って自ら向ふべし。五は糞を棄るは當に常處あるべし。六は床席を掃拭せよ。七は衣被枕を襞たたむべし。八は床を掃拭するに聲あらしむべからず。

又、師に食を持するに十四事あり。一は當に淨巾を具すべし。二は進めんと欲する所の食を皆な當に兩手に捧げて下すべし。三は當に直進すべし。四は跪いて以って師に授くべし。五は道中人と言笑することを得ず。六は食を進めるに聲あるべからず。七は凡そ進める所の飮食は當に其寒温適なるべし。八は匙は當に淨潔ならしむべし。九は若し益する所あらば必ず調均ならしむべし。十は住するは必ず常處あるべし。十一は宜しく端嚴なれ。十二は食し畢らば器を斂め務めて徐徐ならしむべし。十三は次所に随って擧せよ。十四者は掃灑澡器は一(もっぱ)ら常法の如くせよ。

又法衣及び履を取るに十事あり。一は當に左で其上を執り右で其下を執れ。二は當に跪きて以って師に授けよ。三は當に袈裟を襞むに口を以って之を銜することを得ず。四は振って聲あらしむべからず。五は還りて復た其れ常處ならしむべし。六は巾を以て上を覆へ。七は履を取りて當に先に之を抖擻すべし。八は大聲あらしむことを得ず。九は地に著し當に端正ならしむ。十は還らば當に復た其の常處に復せ。

 

若し應器(応量器)及び澡瓶(水差し)を取るに八事あり。一は先ず摩拭して淨ならしむべし。二は當に其下を兩手にて捧げよ。三は跪して師鉢を取れ。四は洗ふには當に皂莢豆(さいかち豆)末を用ふべし。五は畢らば手中において澡せしむべし。六は急事あらば當に行きて宜しく日中に著せしむべし。七は若しは火に向へて其を燥せしむべし。八は畢らば其の常處に復せしむべし。

若し錫杖を取るに七事あり。一は當に掃拭して淨ならしむべし。二は不って地に拄つるを得ず。三は指擬する所有るころを得ず。四は聲あらしむこと無かれ。五は當に兩手で之を捧へ。六は當に跪して以って師に授けよ。七は畢りて還らば常處に復せよ。

又師に侍して沐浴剃頭し朝に當に法衣を著するに十二事あり。一は務て當に恭敬して所宜を執りて作すべし。二は時の寒温に随ふべし。三は浴室を拂除すべし。四は淨湯水を具すべし。五は當に先に皂莢澡豆及び麻油を具すべし。六は豫め淨手巾を取るべし。七は寒きには爐火を具すべし。八は當に外に端住して人をして入らしむなかれ。九は若髮を去らば必ず常處に有らしむべし。十は若し法衣を曝さば當に乾燥を待つべし。十一は急事に行は當に付するところあるべし。去を忘れしむることを得ず。十二は事を執るに必ず宜しく其の常處に復せ。

又香を持し花を賦すに七事あり。一は當に香爐を淨拭す。二は當に宿花を捨去す。三

は當に火の多少を裁す。四は香花を賦すに上座より始む。五は香を賦す時、手は相離ること五寸。六は香爐を執りて以って自ら薫ずることなかれ。七は畢竟らば當に常處に著すべし。又燃燈に八事あり。一は故炷を去るべし。二は燈爐を梳洗して淨ならしむ。三は當に油を盛るに調適すべし。四は淨炷を求めよ。五は盡んことを欲して數しばしば往きて之を益さしめざるべし。六は朝當に早起して視護すべし。七は油未だ盡ざれば當に餘炷を扶出して聚め倚處に著け別に然(もやし)て盡さしむべし。八は畢竟らば徐に本處に還著すべし。

若し行きて花を採り及び楊枝を取るに九事あり。一は主有らば其の主に問へ。二は無主ならば當に山澤樹神に呪願せよ。三は花及び楊枝を取るに其の根株を抜くことを得ず。四は道路において當に直に往還すべし。五は慢惰語戲することを得ず。六は設(もし)人の爲に犯す所、愼みて人と交通すること莫れ。七は低頭して内に自ら剋責して恨心あらしむること勿れ。

八は若し賦花せんと欲せば當に上座より始めよ。九は當に萎花を去れ。

凡そ施行する所自ら用ひることを得ず。十八事あり。一は出入行來當に先に師に白ふべし。二は若し宿行せんと欲せば當に先に師に曰ふべし。三は若し新法衣を作せば當に先に師に白ふべし。四は若し新法衣を著せんとせば當に先に師に白って促て受くべし。五は若し法衣裳を浣はんと欲せば當に先に師に白ふべし。六は若し剃頭せんと欲せば先に當に師に白ふべし。七は若し疾病服藥せば當に先に師に白ふべし。八は若し衆僧の事を作すときは當に先ず師に白って去るべし。九には若し私に紙筆之輩を具すこと有らんと欲せば當に先ず師に白ふべし。十には若し經唄を諷起せば當に先ず師に白ふべし。十一には若し人物を以て惠施せば先ず師に白ひて已に受取べし。十二には己の物を人に惠施せんときは當に先ず師に白ひて師聽して然る後に與ふべし。十三には人己より假借せんとき、一一當に先ず師に白して師聽し然る後に與ふべし。十四には己が人より假借せんと欲するとき皆當に師に白ふべし。師聽さば去ることを得。十五には白せんと欲せば之儀先に衣服を整へ稽首して禮を為すべし。十六には若し其を聽す、或は聽さずば、皆、當に恭敬稽首作禮すべし。十七には所欲を陳べて知らしむべし。十八には恨意有りて辟報を應ずる所あることを得ず。

又師に從ひて行けば先後に還るに十六事あり。一には當に衣服を整へよ。二には言ふ所の趣を識りて常に應答を報ぜよ。隨ひて錫杖手巾之輩を持すべし。三には師の後を尋ねよ。

四には其の影を躡むなかれ。五には錫杖其の前に戲ることなかれ。六には道中人と語ることを得ず。七には師に過あるににくむことを得ず。八には師若し遣還して所取あらば當に其の來道を尋ぬべし。九には即ち當に其の教の如く行け。十には愼んで淹留することなかれ。十一には師若し住して檀越の為に經を説かば即ち當に稽首して節度を承受すべし。十二には暮るれば當に早く還るべし。十三には愼んで留宿することなかれ。十四には還到し請禮し事を問んには先ず衣服を整ふべし。十五には當に五體投地稽首作禮すべし。十六には師を禮するに自ら常法の如くすべし。

若し獨行して死を送り疾を問ふに九事あり。一には當に主人に門いたって當に進退之儀相みるに異座あらば當に坐すべし。設へ異座なくも宜しく雜坐することを得ず。二には當に其座席を視るべし。宜しく犯すことなく忌み端坐すべし。三には人若し経を問ふを欲せば當に宜しく時を知るべし。四には愼んで非時之説を為すことなかれ。五には主人食を設けば非

時法會之食といえども其の儀軌を失せしむるなかれ。六には宜しく還ること日に及ぶべし。

七には夜行を犯すことなかれ。八には若し暮逼り疾風雨臨まば時に宜(よろし)きを制すべし。九には還り畢らば舊のごとくせよ。

若し道路において師と相ひ逢ふに六事あり。一には當に先ず衣服を整ふべし。二には當に革屣を脱ぐべし。三には師に禮すに當に足下に稽首すべし。四には身は師の後を尋ぬべし。五には師若し自ら別し去らば當に稽首して節度を承受すべし。六には師と相隨はざると雖も所行の禮節は必ず常の如くなるべし。

若し衆僧食を飯する時には十六事あり。一には揵稚の聲を聞かば即ち當に衣服を整ふべし。二には當に務めて手を脱し塔下に往住すべし。三には住するに必ず端嚴なるべし。四には若し師の後に従って到らば便ち位に住し愼んで言笑して及ぶ所あること勿れ。五には若し上人説經呪願せば皆な當に恭敬して愼んで失儀することなかれ。六には食せんと欲するの初に當に先ず上下を瞻望すべし。七には食するには衆人の前に食し止ることなく、衆の後なることなし。八には食の好惡をいふことなし。九には大飡小飡なることを得ず。十には愼みて大咽することなかれ。十一には大ひに鉢中に撓刮(削り取る)することを得ず。

十二には案上を叩くことを得ず。十三には益することを求ることを得ず。十四には食を以て私に與あたへる所あり、若しくは摘みて狗にあたへることを得ず。十五には來りて食を益すること有らば不用なりと言ふことを得ず。十六には訖ひて已に飽かば當に手を以って之を讓却すべし。

又衆僧經を説くに十三事あり。若し法會に經を説くに温室及び清涼室若しくは浴室あり。一には當に衣服を整理すべし。二には當に平視直進すべし。三には道中に人と語笑することを得ることなし。四には次を以って所尊を禮すべし。五には却りて入りて席に偶坐すべし。六

には上座經を説かば坐に及び便ち坐すべし。七には坐せば必ず端嚴なるべし。八には愼んで亂語なることなかれ。九には大欬唾(痰吐)することなかれ。十には淨地に唾することなかれ、禮律に違す。十一には若し次で説経に應ぜば即ち當に説け。十二には衆人の為に差されて高座に上らば、當に先ず擧措する所を審らかにし愼みて儀を失すること莫れ。

十三には若し坐中に義を失することあらば當に惡を遏め善を揚げよ。愼みて苟も且つ之の過を現ずること無かれ。

 

又衆僧經を説くに十三事あり。若し番次の直日、朝晡行する禮に一には揵稚聲を聞かば豫め香火を具すべし。二には香を付さば舊の如くせよ。三には所宜の次でを整すべし。四には床席を淨拂せよ。五には掃灑如法。六には若し法會に所領する器を出さば分明に檀越に付授して諸所宜しく用ふべし。七には事畢り領受畢らば初めの如くならしむべし。八には門鑰相付し早あしたに關かんぬきし晩ばんに開ひらき一以って常と爲すべし。九には若し異賓あらば、當に師邊におり所須を聽して當に付すべし。十には若し賓宿する有らば皆當に衣服を整へ其の常位に住すべし。十一には問ふこと有らば對應して聲分明なるべし。十二には住せば必ず端嚴にして失儀あらしむこと無かるべし。十三には若し暫く出ることを欲せば輒すなわち人をして自ら代らしむべし。處をして空じて重ねて呼ばしむる事無かれ。

又直日、後に領知する所に十事あり。若し直日と為らば宜く所修を執るべし。其れ衆事の功夫あり。一には起塔。二には講堂朕僧の諸事。三には若し佛像を作さば常に早起して事を憂識すべし。四には當に所宜を選びて斧鋸を用錯し必ず常處ならしむべし。五には若し畫く所の朱彩膠墨、豫め所得を具そなへ、時に臨んで欠有らしむること無かれ。六には畢らば宜しく選録の復た常處に有るべし、預かじめ本元少七者   八には所領受する所を数へ、分明

に付授して差趺あらしむること無かれ。九にはもし市に求むる所あらば、皆な摩摩帝に問へ。十には出し用ふる全餘宣しく陳列して本末あらしむべし。

 

又若し分衞を獨行するに十六事あり。一には務めて人と倶にせよ。二には若し人倶ともにする無くんば當に行ずべき所の處を知るべし。三には應器は常に左脇に在るべし。四には應器を帶するの宜に出る時は當に以って外に向ふべし。五には食を以て來還するは當に以って内を向くべし。六には人の門戸に到っては宜しく擧措を審つまびらかにすべし。七には家に男子無くば愼んで入門するなかれ。八には若し坐せんと欲せば當に先ず座席を瞻視すべし。九には設し座に刀兵あらば應に坐すべからず。十には設し寶物あらば應に坐すべからず。十一には若設し婦女衣被嚴具之輩あらば應に坐すべからず。都て此の者無からば然して及坐あるべし。十二には主人食を設く。十三には食する所の者、便ち當に呪願すべし。十四には食の好醜を問ふことを得ず。十五には食より先に経を説かず。十六には經を説かんと欲すると雖も當に説くべき時の所、宜よからざる説時とを知るべし。

又市に求る所に九事あり。一には當に低頭し直往直還すべし。二には若し異物を覩ば愼んで察視する無かれ。三には貴賤を諍ふことなかれ。四には女肆(店)に坐することなかれ。五には若し人の爲に犯れば方便して之を避くべし。從ひて直を求ること勿れ。六には賣買せんに若し成諦に於いて直あたひを送なおし、來り取り言じて反覆に及び到ることなかれ。七には已に某甲に許す物を、復更に賤なりと雖も、彼を捨て此れを取りて主をして恨あらしむることなかれ。八には若し四輩の人、賣買の直あたひを賤することを見、己をして任ぜざらしめば如もし當に言ふべし、法爾することを得ずと。九には愼んで保任(保証)すること無れ。愆負(過失)を致さん。

又比丘尼寺中に到るに九事あり。若し師、比丘尼寺中に到らしめば、一には當に倶にすべし。二には遶塔作禮しひとえに常法の如くすべし。三には若し異座あらば異座無くなりおわるまで坐することを得ず。四には疾病の人問經を欲せば當に所宜の説を説け。五には

非時之説を為すことを得ず。六には人之非を反することを得ず。七には若し坐して珍異衣服巾履を以て施惠さるればひとえに受くるを得ず。八には若し還って其の好醜を説くことを得ざれ。九には餘人と但だ用て某を供養せよと言ふことを得ず。

又講經誦法に八事あり。一には必ず所見の不同、或は左右各の所習有るを詳審せしめよ。二には愼んで專ら知りて此は是、彼は非と據言すること無かれ。三には同學變諍せば務て和解せしめ破することなからしめよ。四には衆事役勞せば愼みて自を伐ちて己の功を顯すること無かれ。五には大沙門の説戒は愼みて之を矚すこと無かれ。六には己が過犯あることを知らば衆人に於いて即ち當に言じ悔ひて與共に和解すべし。七には師若し問ふてもし卿に過ありと説くと言はば、即ち當に事の如く之を道おこなふべし。八には隱蔽して以って愆負(過失)を成すこと無かれ。

論語に十事あり。常に晝夜三時に誦經行道す。一には衣服を整ふ。二には若し經行せば必ず常處にあらしむ。三には當に中におれ。四には講堂の中。五には或は塔の下。六には

亦た飯堂の中。七には革屣を躡くを得ず。八には木履を得ず。九には杖を持つことを得ず。十には愼んで臥して誦經する無かれ。

又誦經行に十事あり。房室中の常法に、一には寢息各異にして相渉入せざれ。二には受經句讀せよ。三には經義を論ぜよ。四には疾病を問訊せよ。五には或は爲めに便ち往くべし。六には不急之事を説くことを得ず。七には人之非を示すことを得ず。八には轉じて相評論することを得ず。九には借せんには取と輿とを必ず分明にすべし。十には期約を違へ以って道信を失ふこと無かれ。

沙彌十戒法并威儀一卷

 

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