(さきに「問、真言宗の極楽浄土なりと願ふべきはいずれぞや。答、法界宮これ真言宗徒の極楽浄土と心得べし。」とあったものの続きです。)
問。その法界宮はいずれの処、いずれの方角にありや。
答。法界宮は遍在なく、はかるべからずとあれば、方処方角は指しがたし。中央大日如来の仏土なれば、一中にして然も十方仏土を統摂せる法界宮なりと心得べし。真実の功徳荘厳するところの妙住の境、心王(心の働きそのもの)の都とする所なるゆえに宮とはいうなり。
この宮は是れ古佛成菩提の処、所謂魔醯首羅天宮(まけいしゅらてんぐう・色界の頂上第四禪天に位して仏法を守護する大自在天のこと)なり。この大智度論の意は第四禅天那含の住所以往に十住の菩薩の住所あり。また大自在天となずくと云々。しかもこの宗の意は如来有応の処、この宮に非ずと云ふことなし。独り三界の表にのみ有るにあらずと云々。しかれば塵塵刹刹もとより金剛法界宮なり。またそれ今日我等一念一心も如来有応のところならずといふことなければ、我等が一心も即ち金剛法界宮なりと心得べし。自性法身大日如来の境涯は、十地の菩薩、等覚の如来もあい窺ひたまふこと難しとなり。(即身成仏義に「身秘密とは、法仏の三密は、等覚も見難く、十地も何ぞ窺わん。故に身秘密と名づく。」)
然るに末世今日の凡夫、真言門に入りて修行する秘密の風習因縁によりて現に大日如来の海会を拝したてまつり、直に大日の国土に登詣安住することを得んこと、まことに其れありがたきことに非ざるべきや。願わしきことに非ざるべきや。
真言の仏土を浅略門には西方安養浄土、上界兜卒天ともならふなり。しかれども東西南北等の一方に限れる仏土は深秘至極の義に非ず。東西南北等の浄土は大日如来の一智の功徳より得たまへる浄土なり。佛智の広狭に随って国土もまた大小高下、福楽荘厳その品あるべきこと疑ふべからず。
(真言の仏土は十方世界に広がり限定することはできない。)
もとより小乗大乗顕蜜の浅深高下、経説明白なること諸宗何人かこれをおおいかくさんや。
真言宗帰依の男女、この教に逢へることを悦び、大日無上覚皇の仏土に安住せんことを願ふべし。
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