大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 8月20日 生霊

2014-08-20 18:49:32 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 8月20日 生霊


 10年付き合って同棲していた彼が浮気をして、女の所から帰って来なくなった時の話です。
自宅に戻っていないのは明白なのに、彼は、

「 夜勤で働いていて、お前が家を出た後に帰って寝て、帰ってくる前に家を出ているんだ。」

と言い張っていました。
 当時は帰宅していないのは分かっていましたが、浮気かどうかは確信がなかったので、単に私に飽きて別れたいだけなのか、他に好きな人が出来たのか、随分と悩みました。
夜は殆ど眠れず、食欲も、何かをする気力も無くなって、会社に行く以外は横になって天井を眺めるだけの日々を、2ヶ月も過ごしました。
 そんな状態でも仕事だけはしていたのは、彼の嘘を決定的にするのが怖かったからです。
本当に彼が言うように、私が居ない間に帰ってきているのかもしれない、思い過ごしなのかもしれないと。
それと同時に、嫌いなら嫌いになった、好きな人が出来たならそれでも良いから、ハッキリして欲しいと願うようになりました。
 気持ちは徐々に変化して、

“ 私がこんなにも苦しんでいるのに彼は楽しく遊んでいる。
悔しい。
憎い。”

そんな事を考えるようになりました。
すると、不思議と女の存在がハッキリと感じられ、彼女の顔までは分からないけれど髪型や体型、彼と二人でシングルの布団で寄り添って寝ている姿までも、頭に浮かぶようになったのです。

 そうなってから数日、半泣きの彼から電話がありました。

“ 嘘をついていた。
女の所に寝泊まりをしていた。
家には帰っていない。
悪かった、許して欲しい。”

そんな内容でした。
 何故急に本当の事を言うのか、最後まで嘘を付き通して女の存在を隠したまま別れる事もできたのに、と問い詰めました。
すると、毎日、昼といわず夜といわず、私が現れるると言うのです。

“ 昼は視界の隅にいて、振り返ると居ない。
眠っていると、いつの間にかすぐ側にいて金縛りになり、耳元で、

「 嘘つき、嘘つき、嘘つき。」

と呟き続けるのだそうです。
 嘘がバレている、もう隠し通せないと思った。
好きな女性が出来たけれど、長く付き合ったお前とこんな別れ方をして良いものか悩み、別れを言いだせなかった。
 でも、もうお前の元には戻れない。
お前が怖い。
そうしてしまったのは自分の責任だけれど、怖い。
許して欲しい。”

そう言って彼は泣きました。
 彼の罪悪感が私の影を見せたのではないか、よりによって私の生き霊のせいにするなんて、私を悪者にしたいのかと憤りを覚えたのですが、ふと私が見ていた彼女の特徴を口にしてみました。

“ 明るい茶髪のショートカット、身長155cmくらいでポッチャリ体型。
鎖骨のあたりにホクロが二つ並んでいて、左腕に火傷の跡がある。”

その通りだと、号泣してゴメンナサイと言い続ける彼の震える声を聞いて、私も別れを決意しました。












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