日々の恐怖 8月5日 むかえにきましたァ!
数年前の夏の話です。
その夜は友人との飲み会で、かなり帰りが遅くなった。
終電も逃し、このまま朝まで飲み明かすか~って話だったんだけど、私は次の日用事があったので帰ることにした。
私の自宅は新宿からそう遠くなく、タクシーに乗ればすぐに着くけど、まあ歩けない距離じゃないし酔い覚ましがてら歩いて帰るかってことで、暗い夜道を一人で歩いた。
賑やかな繁華街を離れ、住宅街に入る。
“ 夜風が気持ちいいなァ~。”
なんて考えながら歩いていると、突然、暗がりから小学校低学年くらいの全身黒ずくめの男の子が現れて、
「 むかえにきましたァ!」
って私に言った。
私が、
“ え・・・?”
って戸惑っていると、男の子は私の顔をじーっと見つめた後、
「 あっ、ごめんなさい!
間違えました!!」
って走って行っちゃった。
“ なんなの、あれ・・・・?”
時刻は午前2時を回ったぐらいです。
こんな夜中に小さな男の子が一人で外をうろついているなんて、どう考えてもおかしい。
不審に思いながらも、その日は無事に帰宅した。
まだ起きていた弟に今あったことを話すと、
「 死神だったんじゃねーの?
連れてかれなくて、良かったなァ~!」
と笑われた。
私も、
「 そ~だねぇ~。」
なんて笑いながら、さして気にも留めていなかった。
数日後、近所で不幸があった。
亡くなったのは私と同じ年頃の女の子だった。
原因不明の突然死だったらしい。
そしてその子の家は、あの日の夜、男の子が走って行った方向だった。
単なる偶然かもしれないけど、
“ もしあの夜、私が間違われたままだったら・・・・。”
と思うと背筋が寒くなった。
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