大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 8月2日 Sからの電話(3)

2015-08-02 18:50:52 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 8月2日 Sからの電話(3)



 Kが見えなくなると、Sは急に、Kは今どんな暮らしをしているのか気になった。

“ 今出てきた建物に住んでるんだよな。”

とSはそのアパートに入ってみた。
 一度も来たことのない場所なのに、SにはKの住む部屋がなんとなくわかった。
3階の、通路の奥から3つ目の部屋。
Sは鍵が掛かっているはずのドアを開けた。
 玄関に入ると、右に洗濯機、少し進んで左に風呂場。
その奥には電気がついたままの部屋。
部屋の中心には炬燵、左の壁際にベッド、そして右の壁際には本棚。
何となくKらしい雰囲気の部屋だとSは思ったという。
 Kはそれを聞きぞっとした。
部屋のある階や場所、内装までまったく同じだったからだ。
 Sは本棚を見て、本を貸し借りしていたことが懐かしくなり、本を手に取ってみた。

“ この漫画、最新刊出てたんだな。
このグレーの本は小説かな?”

と、本をもう1冊取った時、急にSは強い気配を感じ、そちらを見た瞬間、本を落としてしまった。
 本棚の脇の白い壁から、女の顔が突き出していた。
長い髪を真ん中で分けた、額を出した整った顔立ちだったが、無表情で肌の色が壁紙とまったく同じ白だった。
Sには一瞬仮面に見えたという。
 Sは突然無性に恐ろしくなり後悔した。

“ これは夢じゃない、ここに自分が来てはいけなかった。”

と感じた。
 壁の顔がゆっくりとSを見た。
そして、口がわずかに動いた。
 Sは咄嗟に、女の口を両手で塞いだ。
自分でもよく分からないが、何か言わせたらマズイと直感で行動したという。
 ただ、強く押さえているのに、両手に伝わる感触が壁の物か人の物かよく分からない。
女の眼も、表情一つ変えずただSを見ているだけだった。
 Sは必死で女の口を押さえながら、何がどうなっているのか考えた。

“ こいつの口を塞いでいれば、そのうち夢から醒めるのか。
そもそも、これは本当に夢なのか。
Kの部屋に、何故こんなものがいるのか。
自分はこいつに引き寄せられたのではないか。
そして、もしこいつの言葉を聞いたらどうなるのか。
 この女は、さっき何を言おうとしたのか。
自分は何をどうする気なのか。
このままここから出られなければ、自分は布団の上で死ぬのではないか。
ひょっとして、Kももうこいつに殺されているのではないか。”









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