日々の恐怖 8月1日 Sからの電話(2)
Sの言う通り目を向けると、確かに2冊の本が本棚の近くに落ちている。
Kは更に混乱した。
“ 進学後は会っていないSが、何故自分の部屋の中を知っているのか?”
そう不思議に思っていると、Sは言った。
「 その落ちてる本って、○○の最新刊と、グレーの装丁のハードカバーじゃないか?」
確かに、Sの言うとおりだった。
本棚の方に行かなくても一目でわかった。
そして、続けて、
「 やっぱりそうか、とにかく今すぐそこから出てくれ!」
と言った。
気味が悪くなったKは、コンビニに行った時の恰好のまま、電気も消さず外に出た。
近所にはコンビニ以外開いてる店がないことと、アパートから離れたいこともあり、Kは歩きながらSと電話を続けた。
「 なあS、お前、俺の部屋に来たことなんてないよな?」
「 ああ、お前の家の場所も知らない。
でもお前の部屋には入った、訳わからんと思うけど・・・・。」
そう言うとSは、さっき自分の身に起きたことを話し始めた。
Sがいつものように寝ると、突然深夜の住宅街に立っているのに気付いた。
まったく見たこともない街で、Sは驚きながらも、これは夢だと自覚できたそうだ。
すると、眼の前の建物からKが出てきたのが見えた。
SはKを久しぶりに見たことに嬉しくなり、
「 よお~!」
と声をかけたが見向きもしない。
そしてSは、近くのコンビニへ入るKを見て、
“ 夢だからなァ・・・。”
と妙に納得した。
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