大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 8月6日 バス停の男

2015-08-06 20:01:31 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 8月6日 バス停の男



 Tさんが学生時代に体験した話を聞きました。
雪の積もった夜中にコンビニから帰る途中、Tさんは普段から使うバス停がある道を通った。
 バスの待合所の方を見ると、窓越しに中年の男が座っているのが見えた。
椅子に座りながら前屈みになって、靴紐でも縛るような動きをしている。
こんな夜中にバスは来ないのに、歩き疲れて休憩しているのかとTさんは思った。
 Tさんが待合所の正面まで歩くと、いつのまにか窓から見えていた男がいなくなっていた。
置いてあるのは椅子だけで扉も付いてない待合所なので、隠れるような場所も無い。
 Tさんは何かの見間違いだろうとそのまま通り過ぎたが、気になって振り返ってみた。
もう一方の窓越しに、さっきいなかったはずの男がTさんを凝視していた。
驚いているような、怒っているような強張った顔で両手と顔を窓に張りつけていたという。
 怖くなったTさんは逃げようとすぐ横の角を曲がった。
すると、雪の中に誰か倒れている。
まさかと思って雪を払って抱き起こすと、さっきの待合所の男と顔も服も同じだった。
どうなっているのかとTさんは混乱したが、とにかく倒れている男を介抱した。
 待合所からもう一人この男が来たりしないかと心配だったが、すぐに男はTさんの呼びかけに応じた。
酒に酔って歩いて帰る途中で倒れて立てなかったらしく、Tさんは命の恩人だと感謝された。
こっちの男の方は、さっきの待合所のことを何も知らないようだった。
 この男の足元がまだおぼつかないのと、自分も一人で帰るのが怖かったこともあり、
Tさんは男にさっきのことを教えないまま、近所だという男の家まで送ってやることにした。
送る間ずっと後ろからもう一人の男が付いて来ないか心配だったが、何事もなくすぐ近くの男の家に到着し、男は大げさなほどTさんに礼を言って家に入った。
 Tさんは男を家まで送って安心した後、さっきの待合所の出来事が急に嘘臭く思えてきた。
今の男は普通に歩いて話をしていたから、自分が見たのも勘違いじゃないだろうか。
 そこでTさんは、もう一度バス停まで戻って待合所の様子を見ることにした。
さっき男を助けた角を曲がって待合所の方を見ると、またあの男がいた。
最初見た時と同じように、前屈みで靴紐を縛るような動きをしている。
 さっき家まで送った男がそこにいることで、Tさんはあれが何かおかしなものだとやっと思った。
またあの男に見られないよう、元来た道を引き返して家に逃げ帰ったという。
 何故Tさんには待合所の窓越しにしか男の姿が見えなかったのか。
Tさんが待合所で見たのが男だとしたら、歩いて帰る途中だったのに、自分の体を置いて待合所に座っていたのは何故なのか。
待合所にいた男の方は、何故Tさんを見て異様な表情をしていたのか。
 Tさんは待合所でそれを見た時も、男を送るまでもずっと怖かったが、あの二人は結局のところ別物だったのか同一人物だったのか、むしろ待合所の方の男を置いたまま、倒れていた男を家に送って良かったのか、それが今になって妙に気になると話していました。
一応、Tさんがそれからその街にいた一年間は、その男の家に変化はなかったと言うことです。










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