日々の恐怖 1月23日 何かあってもうちは知らないから(4)
路地は舗装されていない土が剥き出しの道で、昼間でも通る者はほとんどいない。
夜中であたりが静かだとはいえ、地面が土なのだから下駄の音もそんなに聞こえるわけでもなさそうなのに、やけに響き、
” うるさいなぁ・・・・。”
と窓を開けてみると誰もいない。
窓を開ける直前まで、そのカラコロという音は路地から聞こえていたのだが。
「 僕は電車通勤だったら、その時刻まではあんまりいなかったんですけど・・・・。
でも、何回か聞きましたよ。
はじめはね、僕たちが遅くまで部屋の明かりを付けて作業してるから、近所の人が何か文句を言いたくて来てるのかと思ってたんです。
でも、窓を開けても、いつも誰もいないし。
で、いつだったか僕が帰った後に、作業してたヤツの一人がいきなり窓を開けて、
『 うるさいッ!』
って怒鳴ったことがあったらしくて。
そしたら・・・・。」
窓を開けた時にはやはり路地には誰もいなかったが、しばらくすると、自分たちがいる二階の部屋の窓の真下の、一階の壁が
” ドンドンドンドン!”
ともの凄い勢いで叩かれたという。
その音に部屋にいた者たちは顔を見合わせて、
「 怒ったぞ・・・・。」
「 あ、あんなこと言うから・・・・。」
などと言っていたが、もう後の祭である。
そう言っている間にも、元々ボロ屋の倉庫の壁が砕けそうな勢いで壁を叩く音は続いている。
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