大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 8月15日 サイババ

2015-08-15 19:38:24 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 8月15日 サイババ


 たまにお金が落ちてきた。
小さい頃は姉と二人部屋だったけど、よく部屋に小銭が落ちていた。
それは、1円から10円くらい。

「 なんであんた達の部屋はよくお金が落ちてんの!大事にしなさい!」

とよく母ちゃんに怒られた。
 中学の時、個室でふんばってて気が付いたらトイレットペーパーの上に1円があった。
同じく中学、合宿中にシャワー浴びてたら、チャリーンと音がして10円が落ちてきた。
 その10円を拾って部活仲間に、

「 落ちてきた!」

と話したら、

「 バカか、おまえ。」

と言われた。
そのとき、またチャリーンと10円が降って来た。
周りには誰もいなかった。
怖かったから、この20円は公衆電話で使った。
 高校から一人部屋になったが、たまに思い出したようにお金が落ちてくるようになった。
バイト中、そのことをチーフに話してみたら、チーフが、

「 そんなの作り話じゃん!」

と笑った。
その瞬間、完璧なタイミングでチャリーンと棚の向こうに100円が落ちてきた。
無言でチーフと顔を見合わせたのを覚えている。
 以降、バイト先でも忘れたころに金が落ちてくるようになった。
休憩中、飲み終わったコップの中に1円が入っていることもあった。
この時もチーフが一緒だった。
 俺が、

「 自作自演じゃないですよ!」

と言うと、チーフは、

「 わかってるよ!」

と怒った。
怖かったらしい
 この頃は自分の部屋にいる時も、数か月に一回ぐらいの割合でお金が降ってきていた。
小銭は、たまにボロッボロのもあったたけど、昔のお金とかではなかった。
でもある日、制服をクリーニングに出したら、

「 ポケットに入ってましたよ。」

と百円札が返って来たことがあった。
 もちろん俺は入れてないし、百円札もこの時はじめて見た。
これは親戚の子が欲しがったからあげた。
 大学に受かり、引っ越すことになった。
部屋を片付け、勉強机も捨てようとして、机の上に敷かれていた世界地図をどかして驚いた。
下には、数枚のお札があった。
全部、旧札。
これには、驚いた。
 家族は誰もこんな話を信じないので、

「 銀行行ったら換えてくれるぞ!」

とまったく気にしてなかった。
 そのお金は両親に預けて、俺は東京へ一人暮らしとなった。
それから、お金が落ちてくることはなくなった。
 チーフは、俺が前世で金貸しをしていて、貸した人が今になって返しに来ているのではないかと推理していた。
チーフは俺と出会って以降、不思議な話に、いつの間にか詳しくなっていた。
俺が人生でもっとも影響を与えたのは、間違いなくチーフだと思う。
 何年も経ったが、もうお金は降ってこない。
しかし、貯まった分がドサッとくることを期待している。










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日々の恐怖 8月13日 訪問者

2015-08-13 18:29:40 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 8月13日 訪問者



 俺の家は結構デカイ店をやってて、当時も従業員が10人くらいいた。
夏のある日、俺が店の前で遊んでたら、おっさんが話しかけてきた。

「 この家の子?」

俺が頷くと、おっさんは、

「 私はこういう者です。」

と言って名刺をくれた。
そして、

「 この家の人にはとてもお世話になった。
お礼を言っておいてください。」

と頼んできた。
 70代くらいで、すごく背が高くて紳士的なおっさんだった。
おっさんは、婆ちゃんが店をやってたときに働いていた人のようだった。
 婆ちゃんに話すと、すごくびっくりしていた。

「 今更お礼に来るなんて変だ。」

とか不思議がっていた。
 問題はその後だった。
家に、遺品だと言うおっさんの小さいアタッシュケースが届いた。
 同封されていたおっさんの知り合いと言う人の手紙には、一週間くらい前に交通事故があっておっさんはその事故で亡くなっていたようだ。
俺がおっさんから名刺をもらったのは、どう言う訳か、その事故の翌日だった。
 おっさんには家族も身内もいなくて、何故か遺品が家に届いた。
親父は人様の遺品なんてもらっても困るし気味が悪いと受け取りを断ろうとしたが、婆ちゃんが譲らなくて、結局受け取っていた。
 そして婆ちゃんは俺に、

「 おっさんに会ったことは誰にも言うな。」

と言った。
そのときは、俺が世迷言を言って世間から白い眼で見られることが無いように気を配ったんだと思っていた。

 それで、その後、4年ほどして、その婆ちゃんもこの世を去りました。
婆ちゃんの遺品整理してたら、出てきたよ、あのアタッシュケースが。
 中には俺がもらった例の名刺と、年賀状と、見なれぬ手紙が輪ゴムで一まとめになってはいっていた。
手紙の内容は、おっさんから婆ちゃんへのラブレターだった。
親父や親戚に見つからないよう、俺がこっそり処分しておきました。
もうすぐ婆ちゃんの十三回忌です。








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日々の恐怖 8月11日 遭遇

2015-08-12 11:01:43 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 8月11日 遭遇


 会社の同僚に三十代のAさんと言うね~ちゃんがいる。
丸っこいオタク風で、短気でかなり変だ。
 正直苦手だけれど、仕事で一緒に外回りすることになって、他の同僚から耳打ちされた。
Aさんが言ってることを信じるなという話だった。
 同僚は、

「 死体とよく遭遇するとかで、何か気持ち悪い女だし、だから独身なんだよ。」

とか、散々に言う。
一緒に外回りすることになって、生真面目で短気なのは間違いない。
 先週、朝の出社時に信号待ちのAさんと遭遇した。
Aさんはいつも通る新道じゃなくて、違う旧道に行こうとしていた。

「 おはようございます。」

と声をかけたら、軽く返事を返されたけれど、なんか上の空っぽい。

“ 大丈夫かな・・・。”

と思った。
 信号が変わって、Aさんがフラフラ自転車を漕ぎ出す。
気になってAさんの後をつけた。
どうせ会社は同じだし、旧道も新道も同じ場所に繋がってる。
 信号の向こう側へ、わざわざ往来の激しい道路を横断して、一方向へと向かう。
気になって、Aさんに追い付いて声にかける事にした。

「 Aさん、新道に向かいましょうよ、今日、車多いし。」
「 でも、こっちに行きたい気分なの・・。」
「 遅刻しちゃいますよ。」

 実際車がよく出て来る道で、その日に限ってやたらと車が来る。
それで、遅刻しそうなのも本当だったので、急いで新道にAさんを引っ張って行った。
Aさんは何回も振り返っていた。
 でもマジで怖くなったのは、会社に着いてからだった。
パトカーとか急にバンバン走り始めて、後で何事かと同僚に聞いてみた。
 同僚から、

「 旧道で交通事故があって死人が出たんだよ。」

と言われた。
 そこは、Aさんが通ろうとした区間だった。
俺が止めなきゃ、Aさんは確実に死体に遭遇していた。

“ 死体に遭遇しやすいって、本当かも知れないなァ・・・。”

と、ちょっと思い始めて、数日後のことだ。
 外回りの昼休み中にAさんが、自動販売機を探していたんだけど、自動販売機を目の前にしていたのに、突然あらぬ方に歩き出した。

「 あれ、どうしたんですか?」

と声を掛けたがAさんはどんどん歩いていく。
それで、慌てて追い掛けて、アパートの二階へと上がって行くAさんの後ろを追った。
 Aさんは、ある部屋の前に立ち止まった。
不思議に思ってAさんに話し掛けた。

「 Aさん、どうしました?
仕事中ですよ。」

と言ったけれど、その部屋をじっと見てた。
 それで、

「 いい加減にしてください。」

と怒るとAさんは、

「 ごめんね。」

と謝ってきた。
 Aさんは、

「 知り合いの家が、この辺りだと思って探したの・・・。」

とか言う。
 困ったなと思いつつも外回り続けたんだけれど、次の日、そのアパートで孤独死の遺体が発見された。
多分Aさんが見てたアパートの部屋だろうと思う。

“ Aさんは何かに導かれて死体と遭遇してるんじゃないかな?”

と、ちょっと思っている。
また月曜日に仕事で一緒に外回りするので、すげぇ怖い。









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日々の恐怖 8月10日 俺が俺であること

2015-08-10 19:42:57 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 8月10日 俺が俺であること



 体重が減った。
土方だった頃、工程の関係で数ヶ月山に篭りきりになるハメになった。
 同僚から、

「 片眉剃って行け!」

だの、

「 イノシシの肉よろしく!」

だの言いたい放題言われながら現場へ行った。
 その後は、

「 あれ、これって出張じゃね?社長出張手当付けて!」
「 死ねよバカ!」

みたいな揉め事はあったものの工事は終了した。
 山を降りて久しぶりの下界だぜヒャッハーみたいなノリで出社したら社内全員、

「 誰テメエ?」

新手の職場イジメかと思っていたら、曰く激ヤセしててわからなかったとの事だった。
 元が筋肉質で100kg近かったし、脂肪はそんなになかったんでからかうなよ、と思いつつ会社の姿見で見たら、見知らぬイケメンが(当社比-2500%減)いた。
 慌てて休憩所の体重計に乗ったら50kg近いところまで落ちてる。
約半年でガチムチマッチョがヒョロガリになった。

“ 体に倦怠感もないし、力仕事に手こずった覚えもないんで、完全に気づかなかった・・・。”

って、あるかそんな無茶な状況。
 山籠りの最中ズボンがダブついた記憶もないし、上着が邪魔になるほど痩せてる状況に気づかない程ぼけてたとはさすがに思いたくない。
 事実、その後協力業者に挨拶回りに行って、一緒に山にいた人からも、

「 山にいたときと違う、別人じゃないか?」

と言われる始末だった。
 つまり、ここにいる俺は下山の際に誰かと入れ替わったか、もしくは帰宅してから出社までの約8時間の間に体に無理なく40kg体重を減らしたスーパーダイエッターと言う事になる。
 あるいは、元々ガチムチマッチョな俺はいなくて、関係者全員がその謎の筋肉ゴリラを俺だと思い込んでるケースだが、どの道どれもありえない。
会社でもさすがに気味悪がられて、翌日休んで警察と市役所と歯医者を巡ることにした。
 警察で状況を話すが、当然病院に相談しろとやんわりとお断りだった。
市役所で戸籍謄本確認するも、覚えのない身内なんている筈もない。
歯医者に行ったのは山に行く前治療してたからで、よくテレビドラマなんかである歯型が一致して、というヤツに期待したからだった。
 DNA鑑定は当時の俺は親子判断用だと思い込んでたし、元のマッチョな俺にDNAを取られるような覚えもなかったからスルーした。
歯科医に行くと受付であっさりと俺だと認められた。

“ あれ?
この姿でここに来るのは、はじめてだと思ったけど?”

そんでごく普通に診療、ところが新しく出てきた疑問が発覚した。
 医師が、

「 あれ、なんでここに犬歯?」

と言った。
 ヤンチャ時代に折って無くした(カルテと記憶は一致)筈の犬歯が生えてると言われた。
でも、支払いの保険の記録や詰め物の型をとった時の記録は完全に一致するという事態だった。
 結論を言うとこの問題、実はそれから10年近く経った今も解決してない。
仕事関係の人間は疎遠な人まで全員“ガチムチマッチョの俺”で記憶されていたし、仕事に関係のない知人は“ヒョロガリの俺”で知ってるが、そのディテールが細かいところで皆違う。
身内すらもガチムチ俺派とヒョロガリ俺派で記憶が分かれてた時点で諦めた。
 転職したのを幸いに、俺は俺であるとして生きている。
免許証や公的書類の写真はすべて今の顔だ。
 改めて自分でもとりとめないと思ってしまうんだが、これで全部すっきりするようなオチも実は霊がどうのこうのなんて話もない。
自分にとっては、自分があやふやで怖いと言うことです。









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日々の恐怖 8月9日 狐か狸

2015-08-09 18:24:27 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 8月9日 狐か狸


 数年前の冬、確か木曜日の午後6時半頃のことだった。
帰宅途中に所用があり、普段は通らない県道を走っていた。自動車通勤。
前には黒っぽいbB、その前には軽自動車が走っていた。
 bBが軽を煽るように走っていた。
センターラインは白の破線なんだかから、そんなに煽るくらいなら直線のとこで抜けばいいのに、危ねえなと思いながら、少し距離を取って走っていた。
 その県道は山の麓というか、山腹の下側を走るような感じで、途中で頂上を迎え、その後はひたすら下り。
下りになったので、軽もスピードが出るだろうと思いながら走っていた。
 下りの左コーナーを立ち上がって短い直線になったところで、前を走るbBが急ブレーキ、そのまま停車。自分も停車。
煽られ続けた軽がブチ切れて喧嘩が始まるのか?と思い、追い越して先に行こうとしたら、bBから人が出てきた。
 あー喧嘩だこれ。構ってらんねーから追い越そうと思った矢先、対向車が来た。
対向車は自分の車とすれ違うとすぐ、待避所のようなスペースに車を止めた。
何だ何だ?加勢に現れたのか?とか思いつつ、bBと軽をゆっくり追い越す。
 違った。事故だった。bBの前がぐっしゃり、軽の後ろべっこり。
軽の運転手も出てきていたが、ドア開けっ放し。邪魔。
さっきの対向車は、事故を見て心配して車を停めたらしい。
 自分がこのまま通り過ぎるのは気が引けたので、事故車2台の前に停車して車を降りた。
まあ両方の運転手が出てきてるから、重傷ではないはず。一声かけたらすぐに離れようと思っていた。
 対向車の人が軽の運転手(年齢不詳の女性)に声をかけたところだった。
自分も「大丈夫ですかー?」と声をかけながら近づく。
女性は、「あー、skぅtrgy!!」みたいな、何ていうか、はっきりと声は出しているのに何を言っているのか判らないことを言いながら、道路の真ん中に出てきた。
 対向車の人が「危ないですよ!!」と腕を引っ張ってbBと軽の間に戻そうとする。
すると女性は、「あーひゃひゃ。ちょっとぉおそれってセクハラよーあっひゃひゃひゃ!!」と笑ってる。
 女性は茶髪で服装は若い感じだが、声がババくさい。それでいて鼻にかけた媚びを売るような声で、正直きしょい。
言ってることもきしょい。最初は頭打っておかしくなってんのかなと思った。
「そうだセクハラだ!!」と声がした。見るとbBの運転手(男性)。何だこいつら?と思った。
 bBのエンジンが唸りを上げる。あーラジエター割れて液漏れしてんだなと思った。
とりあえずbBのおっさんに、「エンジン切った方がいいですよ。」と声をかけた。
bBのおっさん、「うん。エンジン切ったほうがいい。」と言いつつ、ニコニコしながら棒立ち。何だこいつ?
 「いやbB、液漏れしてるみたいだし、危ないからエンジン切って下さい。」と再度言うと、「うん。エンジン切って下さい。」って。
なんかムッとしたので、「自分はあなたの車に触る気はありません。自分で切って下さい。」と言うと、おっさんはショボーンとしながらエンジンを切りに行った。
 その間、対向車の人と軽の女性が話をしていた。全部は聞いていなかったが、最初のところで対向車の人が、「頭打ってませんか?」と聞いていた。
事故後なら普通に聞く事だろうけど、なんか笑いそうになった。
 おっさんがエンジンを切りに背を向けてから、自分は対向車の人と軽の女性の方に向き直る。
なんか軽の女性、対向車の人と腕を組んで寄り添ってる。明らかに何かおかしい。
あ、対向車の人は男性。
 で、対向車の人が、「警察と、念のため救急車も呼んだ方が・・・。」みたいなことを言ってた。
すると軽の女性、「呼んで~?」とおねだり。妙にムカつく。
 心優しい対向車の人が、多分スマホだと思うんだけど、それを取り出した。
そのときbBのおっさんが近づいてきて、「その電話で呼んで下さい。」って。
電話って言うか?と違和感を感じたが、それよりおめーが連絡しろよと思った。
 対向車の人が通報を終えるまではこの場にいてやろうと思った。
その間、下りコーナーを立ち上がってちょいなので、多重事故にならんよう処理しとこうと思った。
bBのおっさんに、「三角板ありますか?」と聞くと、「三角板・・・。」と言ったままきょとんとしてる。
「じゃあ発煙筒焚いて下さい。」と言うと、「発煙筒・・・。」でまたきょとん。
「いいや、助手席側のドア開けて下さい。」というと、おとなしく開けに行った。
おっさんの後に続いて助手席の足下を覗くと、発煙筒が無い。やっぱダメじゃんこいつ。
 軽の女性に発煙筒を出すよう言うと、判らないから見て、という。あんたがドアを開けろと行うと、ようやく対向車の人から離れた。助手席を見せてもらうと、発煙筒あった。
それを焚いてコーナーの向こうまで行って道端に置く。
 戻ってきてしばらく待つと、ようやく通報終了。
「両方に連絡しました?」って聞いたら、「あ、警察の方で連絡してくれるってことなんで。」と対向車の人。
「ああそうですか。じゃ、自分はこれで。」と対向車の人に会釈して車に戻ろうとしたら、bBのおっさんが「証拠だからいて下さい。」と。それを言うなら証人だろうが。
 しかもおめーが不利になる証人だぞ自分は、と思いつつ、「お二人とも重傷では無いようなので、これで失礼します。」と言って車へ。
そこに対向車の人が、「ちょっちょっとすいません!!」って小走りに駆け寄ってくる。軽の女性が続く。
「1人じゃ心細いんで、一緒にいてもらえませんか?」と言って、横に来てまた腕にまとわりつく女性を横目でちらっと見る対向車の人。哀れなり。
 少しの押し問答の後、結局自分も待つことになった。
15分程で警察が来て、すぐ後に救急車到着。
警察官の1人が、対向車の人と話しながら、道路の反対側へ歩いていく。
 もう1人の警察官が自分に話しかけてきた。
怪我はないか、この車があなたのか、ってことを聞かれた。
自分は通りすがりの吟遊詩人で、事故の当事者ではない旨を伝えた。
 警察官、怪訝な顔。
自分の車まで2人で行って、警察官が車の周りを一周。ぶつけたあとが無いことを確認。
「だから、自分は目撃者だって。」と言うと、「ではあちら(対向車の人)の単独事故ですか?2台による追突事故との連絡だったんですけど。」と警察官。
 「は?」と振り返ると、事故を起こした2台が無い。変な2人もいない。
「え?何何?」と慌てていると、どうやら道路の反対側で対向車の人も同じ感じ。
 それからが大変だった。
警察官と救急隊員とうちら2人で大揉め。いたずら電話と思ったらしい。
 救急隊の方は、隊長が自分を知っていたので、この人はそんなことをする人ではないと言ってくれていたが、言いつつも納得いかない顔はしていた。
 救急車はわりと早くに帰ったけど、警察官には免許証を提示したり、対向車の人と知り合いではないかと会社まで調べられた。
「このクソ寒い中、いたずらのためにわざわざ外で待ってっかよ!!」みたいにこっちもいい加減うんざりで喧嘩腰。
 結局厳重注意ってことになった。自分は最後まで悪態ついた。「もう事故見てもほっとくかんな!!」って。
警察官はパトカーの中に入って何やらやってた。自分は対向車の人と、狐か狸にでも化かされたんですかねー?それにしてもむかつくわーって話をして、それじゃと会釈をして別れた。
 車のドアを開けようとしたとき、

「あーっひゃひゃひゃ!!」

あの女の声だったと思う。笑い声が空から聞こえた。
 びっくりして空を見上げたけど、真っ暗。振り返って対向車の人を見たら、対向車の人もこっちを振り返って見てた。
 自分は空を指さして、ん?って感じで小首を傾げたけど、対向車の人は無視してそのまま車に乗り込んだ。
暗くて自分がよく見えなかったのか、もう関わりたくなかったのか。

あの道でいつか狐か狸を見かけたら、轢いてやろうかと思う。









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しづめばこ 8月8日 P389

2015-08-08 18:06:25 | C,しづめばこ


しづめばこ 8月8日 P389  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
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日々の恐怖 8月6日 バス停の男

2015-08-06 20:01:31 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 8月6日 バス停の男



 Tさんが学生時代に体験した話を聞きました。
雪の積もった夜中にコンビニから帰る途中、Tさんは普段から使うバス停がある道を通った。
 バスの待合所の方を見ると、窓越しに中年の男が座っているのが見えた。
椅子に座りながら前屈みになって、靴紐でも縛るような動きをしている。
こんな夜中にバスは来ないのに、歩き疲れて休憩しているのかとTさんは思った。
 Tさんが待合所の正面まで歩くと、いつのまにか窓から見えていた男がいなくなっていた。
置いてあるのは椅子だけで扉も付いてない待合所なので、隠れるような場所も無い。
 Tさんは何かの見間違いだろうとそのまま通り過ぎたが、気になって振り返ってみた。
もう一方の窓越しに、さっきいなかったはずの男がTさんを凝視していた。
驚いているような、怒っているような強張った顔で両手と顔を窓に張りつけていたという。
 怖くなったTさんは逃げようとすぐ横の角を曲がった。
すると、雪の中に誰か倒れている。
まさかと思って雪を払って抱き起こすと、さっきの待合所の男と顔も服も同じだった。
どうなっているのかとTさんは混乱したが、とにかく倒れている男を介抱した。
 待合所からもう一人この男が来たりしないかと心配だったが、すぐに男はTさんの呼びかけに応じた。
酒に酔って歩いて帰る途中で倒れて立てなかったらしく、Tさんは命の恩人だと感謝された。
こっちの男の方は、さっきの待合所のことを何も知らないようだった。
 この男の足元がまだおぼつかないのと、自分も一人で帰るのが怖かったこともあり、
Tさんは男にさっきのことを教えないまま、近所だという男の家まで送ってやることにした。
送る間ずっと後ろからもう一人の男が付いて来ないか心配だったが、何事もなくすぐ近くの男の家に到着し、男は大げさなほどTさんに礼を言って家に入った。
 Tさんは男を家まで送って安心した後、さっきの待合所の出来事が急に嘘臭く思えてきた。
今の男は普通に歩いて話をしていたから、自分が見たのも勘違いじゃないだろうか。
 そこでTさんは、もう一度バス停まで戻って待合所の様子を見ることにした。
さっき男を助けた角を曲がって待合所の方を見ると、またあの男がいた。
最初見た時と同じように、前屈みで靴紐を縛るような動きをしている。
 さっき家まで送った男がそこにいることで、Tさんはあれが何かおかしなものだとやっと思った。
またあの男に見られないよう、元来た道を引き返して家に逃げ帰ったという。
 何故Tさんには待合所の窓越しにしか男の姿が見えなかったのか。
Tさんが待合所で見たのが男だとしたら、歩いて帰る途中だったのに、自分の体を置いて待合所に座っていたのは何故なのか。
待合所にいた男の方は、何故Tさんを見て異様な表情をしていたのか。
 Tさんは待合所でそれを見た時も、男を送るまでもずっと怖かったが、あの二人は結局のところ別物だったのか同一人物だったのか、むしろ待合所の方の男を置いたまま、倒れていた男を家に送って良かったのか、それが今になって妙に気になると話していました。
一応、Tさんがそれからその街にいた一年間は、その男の家に変化はなかったと言うことです。










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日々の恐怖 8月5日 むかえにきましたァ!

2015-08-05 19:15:01 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 8月5日 むかえにきましたァ!


 数年前の夏の話です。
その夜は友人との飲み会で、かなり帰りが遅くなった。
終電も逃し、このまま朝まで飲み明かすか~って話だったんだけど、私は次の日用事があったので帰ることにした。
 私の自宅は新宿からそう遠くなく、タクシーに乗ればすぐに着くけど、まあ歩けない距離じゃないし酔い覚ましがてら歩いて帰るかってことで、暗い夜道を一人で歩いた。
 賑やかな繁華街を離れ、住宅街に入る。

“ 夜風が気持ちいいなァ~。”

なんて考えながら歩いていると、突然、暗がりから小学校低学年くらいの全身黒ずくめの男の子が現れて、

「 むかえにきましたァ!」

って私に言った。
 私が、

“ え・・・?”

って戸惑っていると、男の子は私の顔をじーっと見つめた後、

「 あっ、ごめんなさい!
間違えました!!」

って走って行っちゃった。

“ なんなの、あれ・・・・?”

 時刻は午前2時を回ったぐらいです。
こんな夜中に小さな男の子が一人で外をうろついているなんて、どう考えてもおかしい。
不審に思いながらも、その日は無事に帰宅した。
 まだ起きていた弟に今あったことを話すと、

「 死神だったんじゃねーの?
連れてかれなくて、良かったなァ~!」

と笑われた。
 私も、

「 そ~だねぇ~。」

なんて笑いながら、さして気にも留めていなかった。
 数日後、近所で不幸があった。
亡くなったのは私と同じ年頃の女の子だった。
原因不明の突然死だったらしい。
そしてその子の家は、あの日の夜、男の子が走って行った方向だった。
 単なる偶然かもしれないけど、

“ もしあの夜、私が間違われたままだったら・・・・。”

と思うと背筋が寒くなった。









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日々の恐怖 8月4日 Sからの電話(4)

2015-08-04 18:36:16 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 8月4日 Sからの電話(4)


そう思った時、口を押さえられたままの女の表情が変化した。
 女は微かに眉を顰めてSを軽く睨んだ。

“ 何だ!?”

と思った瞬間、急に誰かに襟首を掴まれたように、Sは体が引き倒された。
 押さえつけていた両手が女の顔から離れ、勢いよく仰向けに倒れて行く。
女の口が何か動いていたが、Sには何を言っているのか聞こえなかった。
床に頭を思い切り打つと思ったその瞬間に、Sは自分の布団の上で我に返った。

 しばらくの間、自分がどうなったのかもSにはわからなかったが、もし今のがただの夢じゃなかったら、と思うとKが心配になり、電話したのだという。
そして、本棚の前で自分が落とした本が確かにあることをKから聞いて、夢じゃないと確信し、今すぐ部屋から出るように促したのだそうだ。
 Sの話を最後まで聞いたKは、困惑することしかできなかった。

“ 外に出た時、Sが自分のすぐ近くにいたのだろうか?
そして自分の部屋で奇妙な目に遭い消えた後、入れ違いに自分が戻ったということなのか?
今まで何事もなく平穏に暮らしてきたあの部屋に、本当にそんなものがいるのだろうか?”

KはSに礼を言い、朝になってから部屋に戻ると約束して電話を切った。
 外が明るくなり、車や人の通りが増えた頃に、Kは意を決して部屋に戻った。
中はカーテンを閉めたままで真っ暗だった。
 玄関、廊下の電気を点けたまま、本棚の方に注意しながら、部屋の電気のスイッチを点けた所で、Kは気づいた。
Sに急き立てられ慌てて部屋を出たKは、電気を消さなかったはずなのだ。

 結局、契約の関係もあり、2ヶ月後にKはそのアパートから引っ越した。
2か月の間、Kは本棚の上に神社で買って来たお守りを置いていた。
Kにはその間何事も起きなかったという。
 Sには無事を知らせるつもりで何度か電話を掛けたが、相当その時の体験が堪えたらしく、すぐに向こうから切ってしまうようになったため、再び疎遠になってしまった。
引っ越してからは、Sからの電話もなく、Kも何事もなく新居で平穏な生活を送ったという。
 これが、KとSの二人が体験した奇妙な出来事の一部始終です。
私は、大学を卒業した直後のKからこの話を聞き、その後Sに電話で確認し、二人の話した内容をまとめてみました。
二人とも現在は何事もなく、Sは時間が経過したこともあり、気軽にこのことを人に話せるようになったことや、Kはあれから何度も連絡をくれたのに申し訳ないことをしたと言っていました。
 Kの部屋には本当に何かがいたのか。
Sは本当にKの部屋に夢の中で行ったのか。
何かいたとしたら、何故Sは助かったのか。
何故疎遠だったSが引き寄せられたのか。
それは、今となっては何も分かりません。
ただ、そのアパートは学生に人気で、あの時の部屋も、きっと何も知らない誰かが住んでいるはずだとKは言います。









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しづめばこ 8月3日 P388

2015-08-03 20:49:31 | C,しづめばこ


しづめばこ 8月3日 P388  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
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日々の恐怖 8月2日 Sからの電話(3)

2015-08-02 18:50:52 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 8月2日 Sからの電話(3)



 Kが見えなくなると、Sは急に、Kは今どんな暮らしをしているのか気になった。

“ 今出てきた建物に住んでるんだよな。”

とSはそのアパートに入ってみた。
 一度も来たことのない場所なのに、SにはKの住む部屋がなんとなくわかった。
3階の、通路の奥から3つ目の部屋。
Sは鍵が掛かっているはずのドアを開けた。
 玄関に入ると、右に洗濯機、少し進んで左に風呂場。
その奥には電気がついたままの部屋。
部屋の中心には炬燵、左の壁際にベッド、そして右の壁際には本棚。
何となくKらしい雰囲気の部屋だとSは思ったという。
 Kはそれを聞きぞっとした。
部屋のある階や場所、内装までまったく同じだったからだ。
 Sは本棚を見て、本を貸し借りしていたことが懐かしくなり、本を手に取ってみた。

“ この漫画、最新刊出てたんだな。
このグレーの本は小説かな?”

と、本をもう1冊取った時、急にSは強い気配を感じ、そちらを見た瞬間、本を落としてしまった。
 本棚の脇の白い壁から、女の顔が突き出していた。
長い髪を真ん中で分けた、額を出した整った顔立ちだったが、無表情で肌の色が壁紙とまったく同じ白だった。
Sには一瞬仮面に見えたという。
 Sは突然無性に恐ろしくなり後悔した。

“ これは夢じゃない、ここに自分が来てはいけなかった。”

と感じた。
 壁の顔がゆっくりとSを見た。
そして、口がわずかに動いた。
 Sは咄嗟に、女の口を両手で塞いだ。
自分でもよく分からないが、何か言わせたらマズイと直感で行動したという。
 ただ、強く押さえているのに、両手に伝わる感触が壁の物か人の物かよく分からない。
女の眼も、表情一つ変えずただSを見ているだけだった。
 Sは必死で女の口を押さえながら、何がどうなっているのか考えた。

“ こいつの口を塞いでいれば、そのうち夢から醒めるのか。
そもそも、これは本当に夢なのか。
Kの部屋に、何故こんなものがいるのか。
自分はこいつに引き寄せられたのではないか。
そして、もしこいつの言葉を聞いたらどうなるのか。
 この女は、さっき何を言おうとしたのか。
自分は何をどうする気なのか。
このままここから出られなければ、自分は布団の上で死ぬのではないか。
ひょっとして、Kももうこいつに殺されているのではないか。”









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日々の恐怖 8月1日 Sからの電話(2)

2015-08-01 19:47:39 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 8月1日 Sからの電話(2)



Sの言う通り目を向けると、確かに2冊の本が本棚の近くに落ちている。
 Kは更に混乱した。

“ 進学後は会っていないSが、何故自分の部屋の中を知っているのか?”

そう不思議に思っていると、Sは言った。

「 その落ちてる本って、○○の最新刊と、グレーの装丁のハードカバーじゃないか?」

確かに、Sの言うとおりだった。
本棚の方に行かなくても一目でわかった。
 そして、続けて、

「 やっぱりそうか、とにかく今すぐそこから出てくれ!」

と言った。
 気味が悪くなったKは、コンビニに行った時の恰好のまま、電気も消さず外に出た。
近所にはコンビニ以外開いてる店がないことと、アパートから離れたいこともあり、Kは歩きながらSと電話を続けた。

「 なあS、お前、俺の部屋に来たことなんてないよな?」
「 ああ、お前の家の場所も知らない。
でもお前の部屋には入った、訳わからんと思うけど・・・・。」

そう言うとSは、さっき自分の身に起きたことを話し始めた。


 Sがいつものように寝ると、突然深夜の住宅街に立っているのに気付いた。
まったく見たこともない街で、Sは驚きながらも、これは夢だと自覚できたそうだ。
 すると、眼の前の建物からKが出てきたのが見えた。
SはKを久しぶりに見たことに嬉しくなり、

「 よお~!」

と声をかけたが見向きもしない。
 そしてSは、近くのコンビニへ入るKを見て、

“ 夢だからなァ・・・。”

と妙に納得した。









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