新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

フランス・メッス⑥ モーゼとダビデが登場するシャガール第2のステンドグラス

2020-12-12 | フランス・メッス

次にシャガールの第2のステンドグラスへ移ろう。大聖堂の一番奥まった場所に移動する。

 「モーゼの十戒(出エジプト記)」だ。エジプトからカナンへの旅の途中で、モーゼは神から10の戒めを受け取る。それは①私以外に神はいない②父母を敬え③盗んではならない・・・など10の戒律だった。その十戒を受け取るモーゼの姿が描かれる。

 「次はハープを弾くダビデ」。羊飼いのダビデは時のイスラエル王サウルに仕える。彼のハープを聴くと不調続きだった王の心が休まったという。ダビデは成長後イスラエル2代目の王になって行く。

 緑の衣服をまとったダビデ。ダビデはミケランジェロの彫刻でも有名だが、あの勇壮なダビデ像とは全く違った姿が描かれている。

 「紅海を渡るモーゼ」。モーゼがエジプトからの移動中、紅海を前にしてファラオの軍が追ってきた。危機の中モーゼが祈ると、海が二つに割れてユダヤの民は無事に海を渡りきり、一方エジプト軍は海に飲み込まれてしまった。

 ちょっと抽象的な画面で、どこが海なのかわかりにくい感じ。

 ただ、右下にモーゼの祈る姿がある。海が割れる前の状況なのかも。

これらはいずれもシャガールが70歳を超えてから制作を開始したもの。老齢とは思えぬ鮮やかな色彩を駆使して華麗なステンドグラスに仕上げている。

 

 

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フランス・メッス⑤ シャガールのステンドグラス。鮮やかな色彩の饗宴が見る者を悠久の物語に誘う。

2020-12-08 | フランス・メッス

 この大聖堂の大きな特徴は、全面に張り巡らされたステンドグラス。その総面積は6500㎡。13世紀から現代に至るまでの様々なステンドグラスを目にすることが出来る。有名なシャルトル(2500㎡)の2・6倍もの広さを持ち、その壮大さで「神のランプ」とも称されている。

 中でもシャガールの手掛けたステンドグラスは傑作だ。その詳細を見て行こう。

 大聖堂の一番奥北側、宝物庫ドアの上にその1つがある。ここには創世記の物語が描かれる。

 左端は「イサクの犠牲」。アブラハムの家族の元に、ある日神のお告げが届く。その内容は「息子のイサクを殺して神への貢物とせよ」というもの。厚い信仰心を持つアブラハムは、そのお告げ通りイサクを殺そうとする。 その瞬間、神の使いが現れて、「あなたの信仰心はよくわかった」とその行為をやめさせたという創成期の物語だ。

 心を鬼にして立ち上がった刃物を持つアブラハムと、無心に眠るイサク。子を犠牲にするほどの覚悟と、神への真の信仰との葛藤が、暗いブルーに包まれた画面を支配する。

この濃いブルーが。強烈な印象を植え付けて行く。

 次の場面は「ヤコブとエホバの天使の闘い」。ヤコブは先ほどのイサクの次男だ。そのヤコブが川を渡ろうとした時何者かにつかまる。格闘の中でヘロヘロになりながら闘い続けるヤコブ。名を聞かれて「ヤコブ」と名乗ったところ、相手は「これからイスラエル(神に勝つ者)と呼ばれるだろう」と告げる。

 この「何者か」は天使として描かれるが、この天使は妙になまめかしい。

 次は「ヤコブの夢」。ある日ヤコブは不思議な夢を見る。天に通じる梯子を神の使い達が上下してる。そして枕元に立った神は「決してヤコブを見捨てない。子孫たちは増え続けるだろう」と宣託を授ける。 

 梯子を上り下りする神の使い達も、何か優しさのイメージだし、赤が支配する画面は鮮烈だ。

 画面下部に横たわるヤコブは、もうすっかり成人してひげを蓄えている。

 一番右端、4枚目は「モーゼと燃える木」。ヤコブの子孫レビの両親の間に生まれたのがモーゼ。彼はエジプトで迫害を受けるユダヤ人を連れてカナンの地へ旅立つ英雄。モーゼの十戒も有名だ。

 聖書をテーマにしたシャガール独特の鮮やかな色彩の饗宴。一枚ごとに交互に現れる赤と青の絶妙なコントラストによって、暗い聖堂の中でくっきりと浮かび上がる悠久の物語は、現場に立ったものに至福の時間を与えてくれる。

 

 

 

 

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フランス・メッス④ 広い大聖堂の内部をゆったりと鑑賞する。まずは概観から。

2020-12-05 | フランス・メッス

 大聖堂の中に入った。とても広い空間だ。身廊の高さは42mもある。

 一番先に目についたのはこの黄金の衣装をまとった像。

 その中央に立つ女神像は、伏し目がちで穏やかな表情を湛えている。

身廊の柱には装飾柱が付けられて、細い柱が何本も並ぶように見せている。こうした、軽やかさを演出する工夫は、ゴシック様式の聖堂によくみられる。

 中ほどにはこんな像も。木製で聖母を表しているのだろうか。

 大きなバラ窓。やはりスケールの大きさを感じさせる。

 こんな像もあった。キリスト誕生の場面を表しているのだろうか。そうなら、珍しい形のシーンだ。

 そんな堂内のあれこれを撮影している女性を見かけた。私も同じような格好で写真を撮っていたので、お互い顔を見合わせて挨拶を交わした。イギリスからの旅行者だという。

 さて、次にはこの大聖堂訪問の第一目的であるシャガールのステンドグラスを見に行こう。

 

 

 

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フランス・メッス③ ゴシックの大聖堂中央扉口には、聖母子像がドンと位置する

2020-12-01 | フランス・メッス

 雨模様の中、大聖堂に着いた。すぐ近くにある案内所でパンフレットをもらって大聖堂へ。

この大聖堂の名称はサンテティエンヌ大聖堂。キリスト教で最初の殉教者となった聖ステファノの名前を冠したものだ。1220年から1521年にかけて、以前あった2つの教会を1つにして造られたゴシック様式の建築。聖堂の前が狭いため、全体を撮ることがとても難しい。

 雨が降り出して靄までかかり、写真撮影には最悪のコンディションになってしまった。

 それでも正面入り口から鑑賞を始めた。

 入口付近には聖人像がずらりと並ぶ。

聖書、十字架、羊・・・。それぞれに手に持ち、思い思いのポーズで佇んでいる。

 ここにも目隠しをした(された?)像がある。ランス、ストラスブールの大聖堂でもこのような像を見かけた。

 正面向きではなく、脇に隠れたような配置になっている。この像はキリスト教という新しい宗教に敗れた旧教会の寓意像、という位置付けになっているということを聞いた。気のせいか哀愁を感じる。

 一方、キリスト教のメインである聖マリアの母子像は扉口の中央にドンと位置している。

 そしてタンパンには最後の審判が描き出される。

 

 

 

 

 

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フランス・メッス② ジャン・コクトーのステンドグラスは、見る者の感覚を快適に刺激してくる

2020-11-28 | フランス・メッス

メッスで最初に入った教会はサン・マキシマン教会。建物は特別変わっているわけでもなく、うっかり見逃しそうなたたずまいだが、中に貴重な作品が収まっている。

 それが、ジャン・コクトーが制作したステンドグラスだ。全体が青を基調としたスッキリとした色調。ただ、よく見ると教会ではあまり見慣れないアフリカの仮面や迷路、植物、さらに平和を象徴する鳩などが巧みに配置されている。

 このステンドグラスは、じっと見ていると人の顔が浮かび上がってくる。

 吹っ切れたような明るいトーンが、見る者の感覚を快適に刺激してくる。

 おなじ青でも微妙に変化が付けられている。この右側の顔はまるで般若の面のように見える瞬間がある。

 こちらは赤も使った鮮やかさが際立つ色彩。

 その右側下部に、ジャン・コクトーと自らのサインが刻んであった。

 教会のステンドグラスといえば、聖書の物語などが展開されるのが一般的だが、コクトーはそうした常識を覆して、独自の世界を作り上げているのが興味深かった。

 

 

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