ドルソドーロ地区で最も有名な建物は、やはりS・M・サルーテ教会だ。この教会の建立は1687年。その半世紀前にヴェネツィアを襲ったペストの猛威は、人口の3分の1が死亡するという大惨事となった。元老院はこのペストから街を救ってほしいと聖母マリアに願いをかけて、ようやく収まった後に感謝のしるしとしてこの聖堂建設となった。
従って名前も「santa maria della salute」(聖母への感謝)の教会という名前になっている。
主祭壇に掲げられているのは、もちろん聖母像。ビザンチン様式の絵画だ。
その上部には3体の彫像が並ぶ。中央に聖母がおり、右側には老婆として表現された「ペスト」が逃げ出そうとする姿。左側は聖母に寄り添うヴェネツィアの寓意像だ。
下壇もまた見逃せない。華やかな絵画が展開されている。
他にもキリストの神殿奉献図など様々な絵画、彫像があるが、以前紹介しているのでこの辺に留めることにしよう。
あと1つだけ。床面の模様、デザインもすばらしい。
そんな堂内を、まるで放心したようにじっと見つめている少女がいた。
この教会からアカデミア美術館側に少し戻った場所にチーニ館という建物がある。裕福な実業家ヴィットリオ・チーニによって収集された宗教美術コレクションを展示する館だ。
中央にドッロ・ドッシの作品「アッレゴーネ」。女性の喧嘩?
象牙の彫刻。小さいが細工を凝らした作品だ。
聖母子像。背後の男性像が何やら不気味だ。
中世の聖母子像。解説がなかったので詳細は分からないが、それぞれに素朴さを備えた秀作だ。
個人的にはここの螺旋階段がとても気に入った。
日暮れ時、運河を渡るゴンドラがシルエットとなって、時が止まったような気分に包まれた。