宮殿の窓から島東側の風景が見える。圧倒的な作品群の集まる宮殿内から目を転じて。ちょっと息をつく時間だ。
大評議会の間に入った。ここは宮殿内最大の広間。柱が一本もない吊り天井の部屋だ。
ここの最大の見ものはティントレットが手掛けた「天国」。25m×7mという世界最大の油絵と言われるこの作品は、迫力十分。キリストから戴冠されるマリアの姿もさることながら、
雪崩のように波打つ民衆の姿がすさまじい。
ところで、実はこの部屋には日本人の痕跡も残っている。1585年6月26日、日本から訪れた天正遣欧少年使節団がこの宮殿に入り、元首たちから歓待を受けた。さらにティントレットが、伊東マンショら4人の使節の肖像画をこの部屋で描いたと言われる。
残念ながらその絵は残っていないが、当代の第一人者によって日本人少年達の姿が描かれたという事実は、我々の気持ちを高揚させるのに十分な話だ。
ドゥカーレ宮殿と聖マルコの円柱が描かれた絵もあった。
天井はヴェロネーゼらの絵画で埋め尽くされる。
中でも「ヴェネツィアの大勝利」と題されたヴェロネーゼの最後の作品は、華やかで迫力に満ちている。
その絵の中心にいる女性はヴェネツィアの女神だ。
部屋全体を見渡してもその豪華さがわかるし、当時のヴェネツィアの富と繁栄がうかがわれる。また、見学する人たちの大きさと比べると、正面の「天国」の絵の巨大さが実感できる。
この部屋からも外の風景が眺められる。マッジョーレ教会のすっきりとした姿が美しい。
宮殿中庭も見下ろせる。俯瞰すると直線と曲線の巧妙な組み合わせに気付く。
巨人の階段の巨人たちがちょっと小さ目で優しく見えた。