晴れた日の午後、キオッジャへの小旅行を思い立った。キオッジャは、ヴェネツィア本島の東に長く延びるリド島からラグーナを渡って南にある町だ。
この小旅行の目的は、ラグーナの海上で眺める雄大な夕景。従って午後からの出発が程よい時間帯となる。
ただ、行き方は少々面倒。まずヴァポレットで本島からリド島に渡る。その船着き場から少し先のエリザベッタ広場で11番バスに乗って島の南端まで進む。
終点のマラモッコにはフェリーが待機しているのでこれにバスごと乗船。フェリーはペレストリーナ島に着く。ここで船を乗り換えてキオッジャへ、という行程になる。
行きのラグーナは、午後の日差しを浴びてまさにキラキラと輝いている。
キオッジャの港が見えてきた。
キオッジャに到着。キオッジャもかつては独立した都市だった。ただ、1380年に隣接する大国ヴェネツィアの攻撃を受けて敗戦し、以来ヴェネツィアに従属する町になってしまった。
ただ、近年は観光事業なども発展してきているという。船から降りた場所はヴィーゴ広場。そこから街並みが広がっている。
サッカーグッズを売る店もあった。この地区にもサッカーチームがあるようだ。
少し横道にそれると、広い道路なのに堂々と道を横断して洗濯物が翻っていた。何とものどか。左上に見える青い飾りのようなものは、その家に赤ちゃんが誕生したというお祝いの飾りだという。
運河に面した街並みが、綺麗に水面に映っている。ヴェネツィア本島でもこうした風景をよく見かけるが、ここまでぶれもせずきれいに映り込むのはなかなか珍しい。
サン・ドメニコ教会。1200年創設という歴史を持つ。
中に迫力たっぷりのキリスト像があった。祭礼時はこの像が街を行進するそうだ。
さあ、散歩しているうちに夕方が迫ってきた。帰りのフェリーニ乗ることにしよう。
夕陽を映した海は、黄金色に輝く。この海面のうねり!
ムール貝を養殖している場所だろうか。その施設のシルエットが効果的な陰影を創り出す。
遠くに見える島影はどこだろうか。まるで宇宙のさなかに放り出されたかのような浮遊感に浸っている。
太陽は絵のように丸く温かく、西の空に浮かんでいる。
そして次第に水平線の彼方に向かって遠ざかってゆく。
間もなく昼という時間は終わりを告げ、夜の領域へと移り行こうとしている。
移動時間は約1時間。騒然としたヴェネツィア本島空間からほんの少し離れただけで、「静寂」に包まれた全くの別世界に浸ることの出来る貴重な場所が、そこにあった。